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第39話 アリシア、不意打ちを食らう

 透明ポーションの効果はわかったよ!


 見えないようになるだけね。

 声を出さないように、触らないように気をつけないといけないのね。

 わりとスカートめくりの難易度高いかも……。


 でも負けない!

 次はナタヌで試してみようかな!

 ネクストポーション、カモーン!


≪はい、次の透明ポーションはキュウリ味です≫


 なんで⁉

 さっきのイチゴ味のやつをもう一度ちょうだい!


≪いけません。同じ味のポーションを続けて飲むと効果時間が短くなります≫


 なにそれ……。

 なんでそんな面倒な設定にしてるのさ……。


≪そのほうがおもしろいかと思って≫


 何もおもしろくない……。

 キュウリ味って……。

 うわっ、青臭くてまずい! もう1杯!


≪2杯一気に飲むと、今後一生、誰の視覚情報からも自動削除されてしまうので気をつけてください≫


 怖いって。

 そういう注意事項は最初に言っておいて! もし間違って2杯飲んじゃったらどうする気だったの⁉


≪そうならないように1杯ずつ渡していますが≫


 はい、そうでしたね。

 ポーション管理人ちゃんとしてる! でも説明はして!


≪はい。残り35秒≫


 めっちゃ短い!

 無駄口叩いてたからじゃん!

 ええい! いってきます!


 ナタヌナタヌ……。

 んー? 部屋の隅っこで何してるんだろ?


「ヌーちゃんヌーちゃんどこじゃろな。我のヌーちゃんどこじゃろな」


 マーちゃんが目隠しをしてうろうろ……。

 チビエヴァちゃんたちが手を引いてナタヌのほうに誘導している。


「こっちだよ」「もっと右だよ」「行き過ぎ~ちょっと左だよ~」


 なにこれ?

 目隠し鬼か何か?

 手を引っ張っちゃダメじゃない?

「鬼さんこちら、手の鳴るほうへ」って声だけでやらないと。


≪残り15秒≫


 ああっ! 時間がない!

 とりあえずナタヌのスカートめくってくるぅ!


 ガバッと!


「きゃっ! 急に風が⁉……部屋の中なのに変ですね……」


 ナタヌがめくれ上がったスカートを直しながら、不思議そうに周りをキョロキョロと眺める。


 よし、成功だ!


≪残り5秒。帰還せよ≫


 はい! ダッシュで帰ります!



≪いかがでしたか?≫


 うーん、ちょっと力技でなんとかした感じが否めない……。


≪そうですね。あれなら、透明になっていようがいまいが関係ないでしょう。ただスカートをめくっただけの人です≫


 そうだよね……。

 わたしも修行が足りないな……。

 時間が短すぎて、めくった後、何も楽しめなかったし……。


≪ちなみにスカートめくりとは何を楽しむ遊びなのですか?≫


 えっ、そんなの決まってるでしょ!


≪決まってましたか。パンツをスティールですか?≫


 ぜんぜん違う。

 それならスカートめくる必要ないでしょ。


≪ではパンツを強奪ですか?≫


 パンツから離れてください。


≪さらにその中身に迫りますか?≫


 おセンシティブ!

 自重してください。


≪先ほど不適切な発言がありましたことをお詫びいたします≫


 よろしい。

 では正解発表です。


 スカートめくりとは、何を楽しむものかと問われたら、「めくった相手が慌てふためく姿を見て楽しむもの」と答えましょう。パンツを見られてしまったことを恥ずかしがる姿が見られたらなおよろし。


≪やはりパンツで正解でしたね≫


 ちがーう。

 楽しむのはパンツではなく、穿いている人の顔! OK?


≪奥が深すぎて理解が追いつきません。もう一度実演をお願いしても良いですか?≫


 いいよー。

 ラダリィは……もうちょっと準備万全にしてから臨むとして、もう一度ナタヌリベンジといきますか。今度は60秒いっぱい使って派手にめくってくるわ!


≪楽しみです。ナタヌさんの顔に注目します≫


 そう、顔が大事!

 驚きと恥ずかしさが入り混じった顔をぜひ!

 それで次のポーションは何味?


≪ゴーヤ味です≫


 キュウリの次はゴーヤ……。どんどん罰ゲームに近づいているような気がするんですけど、気のせいですか?


≪気のせいです。味はランダムなので、たまたまです≫


 ランダム?

 全何種類あるの?


≪3種類です≫


 イチゴ、キュウリ、ゴーヤ。

 ぜんぜんランダムじゃない……。

 どう考えても味に偏りあり過ぎじゃない? なんかもっとあるでしょ。フルーツ系にしておけば無難なのに。


≪その辺にあったあまり食材を突っ込んだので文句言わないでください≫


 いや、そんな適当なことしているって聞いちゃったら、文句の1つも言いたくなるでしょ。


≪さっさとゴーヤ味を飲んでスカートをめくってきてください≫


 ゴーヤ……。

 南部地域からわざわざ取り寄せて、お店の罰ゲーム料理に使っていたのがブーメランのように戻ってきた……。


 にがっ。

 火を入れないですりおろしたでしょ。

 余計に苦い……。



≪飲み干しましたね。60からカウントダウン。さあ、急いでいってきてください!≫


 人使い荒いな……。

 うっ、ゴーヤ気持ち悪っ。


 ナタヌナタヌ。

 今度のナタヌは目隠ししているほうか。


「あんよがじょうず~。あんよがじょうず~。ヌーちゃん、こっちなのじゃ。そこで1回転するのじゃ」


「1回転ですか⁉ 縦? それとも横?」


「まわってまわって~」「縦に回って~」「伸身の新月面宙返りを決めて~」


 マーちゃんもチビエヴァちゃん無茶言ってるなー。

 でもナタヌが目隠ししているからスカートめくりの大チャンス!

 いっけー!


 えっ、ちょっ! ナタヌさん!? ホントに縦に大回転⁉ ぐっは……。


「えっ、今私、何か柔らかいものを蹴っちゃいました⁉ もしかしてチビエヴァちゃん⁉ 大丈夫ですか⁉」


「何もも蹴ってないよ~」「チビエヴァたちは無事だよ~」「もう1度まわって~」


≪アリシア、救助に向かいますか? 残り15秒≫


 いや……大丈夫。

 ナタヌがちょうどロンダートに入って足を蹴り上げた瞬間にスカートをめくろうとしてしまった……。

 蹴り上げた足が不意打ちでみぞおちに……大丈夫、なんとか自分で帰れます……。


 うぅ、痛いよ……。


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