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第38話 アリシア、透明ポーションを試す1

 前夜祭は静かに盛り上がり、夜も更けていった。


 マーちゃんとナタヌ。

 スーちゃんとラダリィ。

 リンちゃんとスレッドリー。


 なぜか3組に分かれてのマンツーマン飲み会に?

 それぞれのテーブルにチビエヴァちゃんが数人ずつ配置されていて、料理やお酒の給仕を行っている。


 わたしとエヴァちゃんだけ取り残されて――。


「お酒が飲めないと、こうも疎外感があるものなのね……」


≪私はチビエヴァを通して楽しんでいるので疎外感はありませんが≫


 ズルーい。

 わたしもこの雰囲気を一緒に楽しみたいなー。


≪それなら孤独を逆に利用して、『ハイディング』を使って近づき、みんなのスカートでもめくって楽しんだら良いじゃないですか≫


 それは飲み会の楽しみ方としてどうなの?

 まあ、とりあえず採用するけど。

 いやいや、わたし『ハイディング』のスキル使えないし。


≪それでは私の開発したこちらの「透明ポーション」をどうぞ≫


 透明ポーション?

 なにそれ、体が見えなくなるの?


≪実際に体を透明にしたいならそうしますが、このポーションの効果は少し違います。認識疎外と似たような効果です≫


 ふーん、お得意の認識疎外ね。


≪ポーション使用者の姿を目では捉えているはずなのに、眼球を通して脳に到達した際に、その姿だけがすっかり消えて認識できない状態になります。見えているのに見えていない。そんな効果です≫


 見えているのに見えていない!

 つまりスカートをめくり放題!


≪派手にめくるのはダメですよ。姿が見えていないだけで、スカートがめくられていることには気づきますから≫


 それじゃあダメじゃない?

 スカートをめくられていることにも気づかれたくないんですけど?


≪そこは飲み会の席ですから、そもそも意識レベルが低下気味です。さらにチビエヴァたちが注意を引き、アシストしますから成功率は高いでしょう≫


 たしかに!

 それならいけるのでは!


 それで、透明ポーションの効果時間は?


≪1分です≫


 短くない⁉


≪できたばかりの試作品なので。今後改良して効果時間を調整していく予定です≫


 まあ、まずは効果がちゃんと出るのか確認しないとだね。

 いきなりスカートをめくるのはリスクがありそう。

 よし、1度試してみるから、透明ポーション1個ちょうだい!


≪ではこちらをどうぞ≫


 ずいぶん量が多いね……。

 コップ1杯分くらいの液体……。これ全部飲んで1分?


≪はい、そうです。でも、イチゴ味にしてあります≫


 飲みやすさには配慮されている、のね。

 よし、飲みます!

 あ、おいしい♡


 どう⁉ 透明になった⁉


≪完璧です。誰も肉眼ではアリシアのことを認識することはできないでしょう≫


 やったね。

 自分じゃ実感がないしぜんぜんわからないけど。


 まあ、とりあえずまずは……スレッドリーのところにしておこう。

 スカート関係ないし、実験台だ。


≪残り45秒≫


 1分って短い!

 急いでリンちゃんとスレッドリーの飲み会会場へ!



「女というのはいつだってやさしくされたいものなんだぉ。わかるかぉ?」


「はい。おっしゃる通りです。常にアリシアを観察し、アリシアが望んで良そうなことを先回りするようにします」


「それだけだと飽きてしまうんだぉ。たまにいじわるをするのも刺激になって良いんだぉ」


「はい。おっしゃる通りです。あえてそっけない態度を取り、アリシアの注意を引くようにします」


 何この話の流れ?

 女性の扱い方のマナー講座か何か……?

 そっけない態度を取られるのは普通に嫌ですけど? 常にベタベタに甘やかしてほしいですけど?


「おーい、スレッドリー。聞こえるー?」


「ん、アリシアの声が聞こえ……どこだ? いないな。気のせいか。アリシアのことが好きすぎて、幻聴が聞こえてきたのかもしれない……。だがこんな幻聴ならずっと聞いていたいな。アリシア、好きだ。一生俺のそばにいてくれないか」


 急にプロポーズ……。

 見えていないはずなのに不意打ちはやめてよ……。


≪残り10秒。すぐに帰還せよ≫


 おっと、ヤバい!

 戻ります!



≪透明化終了です。いかがでしたか?≫


 うーん。透明にはなっていたっぽいね。

 でも声は聞こえているっぽい。


≪効果は正常のようで良かったです。眼球から入る視覚情報の操作ですから、それ以外は変化なしです。声は聞こえますし、接触すれば感触はあります。ニオイも体温も感じられるので気をつけてください≫


 なるほど……。

 声を出さないように、触らないように気をつけないといけないのね。

 スカートめくりの難易度高い……。


 でも負けない!

 次はナタヌで試してみようかな!

 ネクストポーション、カモーン!


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