前夜祭は静かに盛り上がり、夜も更けていった。
マーちゃんとナタヌ。
スーちゃんとラダリィ。
リンちゃんとスレッドリー。
なぜか3組に分かれてのマンツーマン飲み会に?
それぞれのテーブルにチビエヴァちゃんが数人ずつ配置されていて、料理やお酒の給仕を行っている。
わたしとエヴァちゃんだけ取り残されて――。
「お酒が飲めないと、こうも疎外感があるものなのね……」
≪私はチビエヴァを通して楽しんでいるので疎外感はありませんが≫
ズルーい。
わたしもこの雰囲気を一緒に楽しみたいなー。
≪それなら孤独を逆に利用して、『ハイディング』を使って近づき、みんなのスカートでもめくって楽しんだら良いじゃないですか≫
それは飲み会の楽しみ方としてどうなの?
まあ、とりあえず採用するけど。
いやいや、わたし『ハイディング』のスキル使えないし。
≪それでは私の開発したこちらの「透明ポーション」をどうぞ≫
透明ポーション?
なにそれ、体が見えなくなるの?
≪実際に体を透明にしたいならそうしますが、このポーションの効果は少し違います。認識疎外と似たような効果です≫
ふーん、お得意の認識疎外ね。
≪ポーション使用者の姿を目では捉えているはずなのに、眼球を通して脳に到達した際に、その姿だけがすっかり消えて認識できない状態になります。見えているのに見えていない。そんな効果です≫
見えているのに見えていない!
つまりスカートをめくり放題!
≪派手にめくるのはダメですよ。姿が見えていないだけで、スカートがめくられていることには気づきますから≫
それじゃあダメじゃない?
スカートをめくられていることにも気づかれたくないんですけど?
≪そこは飲み会の席ですから、そもそも意識レベルが低下気味です。さらにチビエヴァたちが注意を引き、アシストしますから成功率は高いでしょう≫
たしかに!
それならいけるのでは!
それで、透明ポーションの効果時間は?
≪1分です≫
短くない⁉
≪できたばかりの試作品なので。今後改良して効果時間を調整していく予定です≫
まあ、まずは効果がちゃんと出るのか確認しないとだね。
いきなりスカートをめくるのはリスクがありそう。
よし、1度試してみるから、透明ポーション1個ちょうだい!
≪ではこちらをどうぞ≫
ずいぶん量が多いね……。
コップ1杯分くらいの液体……。これ全部飲んで1分?
≪はい、そうです。でも、イチゴ味にしてあります≫
飲みやすさには配慮されている、のね。
よし、飲みます!
あ、おいしい♡
どう⁉ 透明になった⁉
≪完璧です。誰も肉眼ではアリシアのことを認識することはできないでしょう≫
やったね。
自分じゃ実感がないしぜんぜんわからないけど。
まあ、とりあえずまずは……スレッドリーのところにしておこう。
スカート関係ないし、実験台だ。
≪残り45秒≫
1分って短い!
急いでリンちゃんとスレッドリーの飲み会会場へ!
「女というのはいつだってやさしくされたいものなんだぉ。わかるかぉ?」
「はい。おっしゃる通りです。常にアリシアを観察し、アリシアが望んで良そうなことを先回りするようにします」
「それだけだと飽きてしまうんだぉ。たまにいじわるをするのも刺激になって良いんだぉ」
「はい。おっしゃる通りです。あえてそっけない態度を取り、アリシアの注意を引くようにします」
何この話の流れ?
女性の扱い方のマナー講座か何か……?
そっけない態度を取られるのは普通に嫌ですけど? 常にベタベタに甘やかしてほしいですけど?
「おーい、スレッドリー。聞こえるー?」
「ん、アリシアの声が聞こえ……どこだ? いないな。気のせいか。アリシアのことが好きすぎて、幻聴が聞こえてきたのかもしれない……。だがこんな幻聴ならずっと聞いていたいな。アリシア、好きだ。一生俺のそばにいてくれないか」
急にプロポーズ……。
見えていないはずなのに不意打ちはやめてよ……。
≪残り10秒。すぐに帰還せよ≫
おっと、ヤバい!
戻ります!
≪透明化終了です。いかがでしたか?≫
うーん。透明にはなっていたっぽいね。
でも声は聞こえているっぽい。
≪効果は正常のようで良かったです。眼球から入る視覚情報の操作ですから、それ以外は変化なしです。声は聞こえますし、接触すれば感触はあります。ニオイも体温も感じられるので気をつけてください≫
なるほど……。
声を出さないように、触らないように気をつけないといけないのね。
スカートめくりの難易度高い……。
でも負けない!
次はナタヌで試してみようかな!
ネクストポーション、カモーン!