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第37話 アリシア、ラダリィの謎に迫る

「スーちゃん! スレッドリーが帰ってこないよー!」


『知らん。裏でリンレーに説教されているんだろう』


「だってもう3時間も経つよ? さすがにそんなに説教されることある?」


 無礼講のマナーを知らなかっただけで?

 厳しくない?


「ちょっと見てきてよー」


 わたしが行ったらマナー違反で殺さ……怒られるかもしれないしー。


『知らん。せっかく楽しい気分なのに、王子の1人や2人、どうでもいいだろう。よしよし、チビエヴァ、こっちにこい』


 1人や2人って……。

 スーちゃんまですっかりチビエヴァちゃんにメロメロになってるし。

 と、もう1つのテーブルのほうから、ナタヌのうれしそうな叫び声が聞こえてくる。


「マーナヒリン様~! 聞いてくださいよ~! その時私はアリシアさんに言ったんですよ~」


「ほう、何をじゃ?」


「ほかの女を見ないでください! 私だけを愛してくださいって!」


「おお~。言ったんじゃな。ちゃんと言えてえらいのじゃ」


「うひひひひ♡ 私えらいですか~?」


「えらいのじゃ。ほれ、もっと日乃本酒を飲むのじゃ。我が注いでやろう」


「マーナヒリン様大好き~♡」


「そうかそうか。もっと近くに寄るのじゃ」


 ずいぶん飲んで出来上がってるなー。

 って、あれ? もしかしてこれは……浮気現場では?


 じー。


「マーナヒリン様ぁ~♡」


 じー。


「わたしともあそんであそんで~」「もっとあそんで~」「ぼくともあそんで~」


「私とも遊んでください~♡」


 ナタヌさん……マーちゃんの首に抱きついたりして……チビエヴァに交じって何をしているのかなー?


 じー。

 ぜんぜん気づかれない……悲しい。



「ちょっと聞いてください!」


 ん、今度はあっちのテーブルでラダリィがスーちゃんに絡んでいる?


『なんだ。困ったことがあるなら言え』


「アリシアのことです!」


 わたし⁉


「スークル様は義妹に甘すぎませんか⁉」


『そ、そうか……?』


「甘すぎます! もう、毎日やりたい放題好き放題で困っているんです!」


 ラダリィがテーブルをバンと叩く。

 おっと、お酒が波打って……こぼれなかった。セーフ。

 でもわたし、そんなにラダリィに迷惑かけていたっけ……?


「毎日毎日夜中に私のベッドにもぐりこんできて、私の寝息を確認してから胸を揉みしだいていくんですよ!」


『そんなことをしているのか。困ったやつだな』


 口笛ぴゅーぴゅー。

 な、なんのことかなー?

 ラダリィさん、寝ぼけて変な夢でも見ていたんじゃないですかー?


「触り方がいやらしくて……とにかく困るんです!」


 ラダリィさんの弱点部位を積極的に攻めるようにしていますから……まあね?


≪意識レベルを低下させているので、触られている時の記憶はないはずなのですが……おかしいですね≫


 だよね?

 おかしいなー。


『寝ている時の夢ではないのか?』


「そんなことありえません。私はいついかなる時も半径50cm以内に他人が近寄ってきた場合に、無意識の状態でも反射的に認識できるように訓練を受けているんです」


 なん、だって……?

 それ、どんな訓練なのよ⁉


『ほう? ラダリィは軍所属だったか。最近ではそのような特殊訓練を受けているのだな』


「いいえ? 王宮で働く者はみな当然取得している技能ですが」


 王宮ではそんな技能が必須なの⁉

 スキルではなくて⁉


「王族の方々をお守りする仕事に就いているのですから、『ハイディング』程度のスキルを見抜けるのは当然のことです」


 そうなの⁉

 ラダリィはメイドなのにそんな能力いつ必要になるのよ⁉


≪しかしこれで謎は解けましたね≫


 謎?

 なんだっけ?


≪ラダリィさんの謎のスキル外スキルですよ。なぜかいつも近寄ると気づかれたり、思考を読まれたりするあれです≫


 あー、あれね。

 って、思考を読まれるのもそうなの⁉


≪おそらくは……。王宮での特殊訓練によって何かを身につけられているのでしょう≫


 マジかー。

 夜な夜なラダリィのおっぱいを揉むのはやめたほうが良い?


≪記憶が残っている以上、やめておいたほうが無難です。しかしのちほど、強めの薬剤で記憶消去を試みておきます≫


 うん、とりあえず後遺症が残らないように注意してお願いね。


≪Yes, My Lady.≫


 ラダリィは普通のメイドさんじゃなかった……。

 でもなんとかして、そのスキル外スキルを突破して揉みたいっ!

 認識疎外の魔道具を改造・強化してなんとかならないものかな。



「はい。リンレー様。俺はダメな王子です。マナーも守れず、人間の屑です。二度と無礼な真似はしません。毎日リンレー様の神殿で祈りを捧げます。リンレー様の信徒になり、生涯マナーを学ばせていただきます」


「わかればいいんだぉ。王子は真面目なほうが国民から好かれるぉ。そのためにはあーしのもとでマナーの習得に励むと良いぉ」


 ん、スレッドリーとリンちゃんが帰ってきた?

 スレッドリー生きてる……?


「はい。ありがとうございます。リンレー様のおっしゃられることがすべて正しいです。俺が間違っていました。リンレー様、どうか屑な俺に正しいマナーを教えてください」


 死んだ魚のような目……あれって洗脳されているんじゃ……。

 スレッドリーがあんなにまともな言葉を吐くなんて……。


 さすがマナー講師様。


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