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第36話 アリシア、女神様を召喚する

「今日はスーちゃんの神殿で1泊!」


『ああ、みんなゆっくりしていくがいいさ。明日は調印式だからな。ここに泊まり、そのままみんなで集まって移動したほうが良いだろうな』


 珍しくスーちゃんがまともなことを言っている!


『失礼な! オレはまともなことしか言わんぞ。女神だからな』


「わたしの知っている女神様たち……みんな変……だし?」


 ミィちゃんもマーちゃんもリンちゃんも、どこか独特な世界観を持っているというか・……。


『そうですね。私以外の女神は皆変わり者ですから』


『我以外は非常識で困っているのじゃ』


『あーしがいっつも常識とマナーを教えてあげてるんだぉ☆』


 おお、全員集合!

 さすが女神様の神殿。通信状態が良い!


 スーちゃん以外のみんなは明日の調印式に出席するのかぉ?


『スークルに一任しています』


『酒が出ないなら行かないのじゃ』


『明日は月に1度のピクシー族にマナーを叩きこむ日だからいけないぉ』


 うーん、残念。

 ひさしぶりにみんなに会いたいなー。


「アーちゃんきたのじゃ」


「あーしが来てあげたぉ☆」


 と、目の前には、お酒の女神様ことマーちゃん、そしてマナーの女神ことリンちゃんの姿が!


「マーちゃん、リンちゃん、こんばんはー! さっすがお早いお越しで♡」


 さては……お酒の匂いに釣られてやってきましたね?


「皆の者、堅苦しいのはやめるのじゃ」


 あれ、みんな跪いちゃってどうしたの?

 あーそうか、女神様が増えたから!


「我はアーちゃんの義母なのじゃ。つまりお前たちにとっても母というわけなのじゃ?」


 なんで疑問形?


「今日は楽しい調印式前夜祭だぉ♪ みんなで飲めや歌えやの無礼講なんだぉ♪」


「無礼講か! それなら良いな!」


 と、スレッドリーがうれしそうに立ちが上がる。

 あーあ。やっちゃった……。どうなってもしーらない、と。


「スレッドリー殿下。まったく……王族ともあろう者がこんな初歩のマナーも理解できないなんて……きついおしおきだぉ……」


「おしおき……? なぜだ⁉ 無礼講では⁉」


 スレッドリーがリンちゃんにがっちりと肩を掴まれて、引き摺られていく。


「アリシアさん……どういうことですか?」


 ナタヌが頭を下げたまま、小さな声でこそこそと尋ねてくる。


「あー、今のはね、初歩的な引っかけなのよ……」


「引っかけ、ですか?」


「うん。さっきさ、リンちゃんが『無礼講なんだぉ』って言ったでしょ?」


「おっしゃられましたね……」


「それでスレッドリーはどういう行動をとったか覚えている?」


「『それならいい』みたいなことをおっしゃって、すぐに立ち上がられた、ような……」


 よく覚えているね。

 そう、スレッドリーは女神様の前で、無礼にも許しなく頭を上げたってこと。


「無礼講は無礼を働いて良いってわけじゃないのよ。マーちゃんが言っていたでしょ。『堅苦しいのはやめるのじゃ』って。つまり、堅苦しい礼儀は抜きでいいよって言っているだけなの」


「なる……ほど?」


「だから正解は、リンちゃんが、『頭を上げて一緒に飲むぉ』って言ったら、『ありがとうございます』って言って頭を上げる!」


「なるほど! 理解しました! マナーって難しいんですね!」


「そうだぉー。リンちゃんはとくに厳しいからね。マナーに殺されたくなかったら、マナーを重んじるんだぉ? ほら、隣のラダリィを見て? 跪いて頭を下げたまま微動だにしないでしょ? これが女神様を前にした時の正しい姿!」


「わかりました! ナタヌ、ラダリィさんを見習ってマナーの鬼になります!」


「その意気だぉ!」


「アーちゃん、そろそろ宴会を始めるのじゃ。我は喉が渇いたのじゃ!」


 マーちゃんはマナーよりもお酒、だもんね。

 頭を下げなくても怒ったりしないし、いっつもやさしい私の義母♡


「はーい、ただいま準備します! ナタヌ、ラダリィ、手伝って!」


『まったく、マーナヒリンはすぐに酒だ。羽目を外し過ぎてオレの神殿を汚すなよ?』


「それは約束しかねるのじゃ。チビエヴァちゃんたちと鬼ごっこをして遊んだら、神殿の1つや2つは壊れても仕方ないの」


『それはやめろ……外でやれ』


「マーちゃんはすっかりチビエヴァが気に入ったのね。エヴァちゃん、出してあげてー」


≪ステルスモード解除。かしこまりました。いでよ、チビエヴァシリーズ、そして願いを叶えたまえ!≫


 エヴァちゃんの手のひらから溢れ出る光。

 その光の中からチビエヴァちゃんが、1、2、3、4、5体!

 まあね、おもにマーちゃんのお願いしか叶えられないけど、やっぱりかわいいね♡


「マーナヒリン様。おひさしぶり~。あそぼあそぼ~」「あそぼ~」「あそぼ~」


 マーちゃんがあっという間にチビエヴァたちに囲まれる。


「チビエヴァちゃんたち、よく来たのじゃ。今夜も一緒に遊ぶのじゃ!」


 エヴァちゃんの召喚の光はまだまだ止まらない。

 さらにチビエヴァちゃんが5体追加。


「スークル様~!」「あそんであそんで~」「あそんで~」


「お、オレか⁉ ど、どうしたら……」


 親戚の子どもに囲まれてあたふたするおばさんみたい。


「誰がおばさんか! ずっとピチピチだ!」


 ピチピチって……。

 まあ、好きに遊んであげてくださいよ♡



 宴会の準備できたから、お酒注ぎますよー。

 って、リンちゃんとスレッドリーが戻ってこないね……。


 もしかしてマナーに殺された?


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