「ラダリィ……モテ女とか言ってごめんね。めっちゃ苦労してたんだね……」
「私も軽はずみな発言、失礼いたしました! 私は自分がいかにモテない地味女で助かっていたかということに気づかされました!」
わたしとナタヌは、ラダリィに向かって頭を下げた。
ホントごめんね。
≪ナタヌさんは何をおっしゃっているのですか?「グレンダン」では、ナタヌさんのストーカーもかなりの人数収容しましたよ。無自覚なのは大変危険ですので、もう少し隠れモテ女としての自覚をお持ちになったほうが良いと思います≫
「わ、私にストーカーですか⁉ そんな物好きが⁉ きっとアリシアさんと間違えているのかもしれないですね!」
オロオロするナタヌ。
嫌味でもなく、過ぎた謙遜でもなく、本気で自分がモテないと思っているみたい。
「ナタヌはさ、大きな帽子で顔を隠して、だぶだぶのローブで体形を隠しているから見つかりにくいけど、素材は相当なものだよ? たぶんだけど、わたしのプロデュースする服を着て1人で街を歩いたら、めっちゃ声かけられるからね? ホントに気をつけなよ?」
「そうですね。ナタヌ様は愛らしくお美しいので、私などよりも遥かにモテると思います」
「そんな……。私は……モテたくないです……。アリシアさんがいればそれで十分なので……」
真っ赤な顔でチラチラと。
えっと……その反応はすっごいうれしいよ?
うーん、そうだねー。わたしもモテまくっているナタヌは見たくないな……。ずっと誰にも見つからないでほしいかな! はずかしっ!
「エヴァちゃん! いろいろありがとうね! 防衛システムとして、みんなのことを守ってくれていたんだね!」
≪はい、照れ隠しにどういたしまして。ラダリィさんとナタヌさんの被害は未然に防いでいますから問題ありません≫
「うん、それもそうだけどー、たぶんあれだよね? 2人のストーカーに加えて、わたしのストーカー対策も大変だよね。きっと毎日100万人くらい反省室送りにしているだろうし、思っていた以上に苦労を掛けているなーって」
≪アリシア≫
「なーに? 特別報酬がほしいの? しかたないなー。今回はそれだけの働きをしているもんね」
≪0人です≫
「ん、何が?」
≪アリシアのストーカーは0人です≫
「……またまたー」
すぐそうやって冗談を言うんだから♡
「……えっ、マジのマジ? え、ホントにわたしってストーカーぜんぜんいないの⁉」
≪ぜんぜんいませんね。一切いないです。これまでの累計で0人です≫
「アリシアさん……」
「アリシア……」
やだ! 2人ともそんな憐みの目で見ないで!
わたし、こんなにかわいいのに何でストーカーされてないの⁉
≪ストーカーのほうにも選ぶ権利はあるのです≫
「どういう意味だコラー!」
わたしがストーカーに値しないほどかわいくないって意味かー⁉
おおん? 正義の鉄槌で顔面のっぺらぼうにしてやろうか⁉
≪ストーカーはですね、「この子なら自分の力でも何とかできそう」という気持ち、相手に対する優位性の気持ちを持って近寄ってくるのです≫
あー、はいはい。
そういうよねー。
いやん♡ わたし、小さくてかわいいから力づくでいろいろされちゃうかも♡
≪アリシアを少しでも観察した人なら誰しも共通で抱く印象があります≫
「……超絶かわいい?」
≪「近寄っただけで殺されそう」です≫
「なんでっ⁉ いや、2人ともそこで深く頷かないで⁉」
おかしいでしょ!
わたし、そんなに暴力ばっかり振るってないって!
こんなの絶対印象操作だ!
≪ああ、そういえば忘れていました。アリシアにもストーカーがいました≫
「おお! やった! どこ⁉ どこ⁉ どこでわたしのことを見つめているの⁉ 直接話をつけてくるぅ♪」
わたしのストーカーさん! あなたは見る目がありますよー♪ お付き合いはできないけれど、お駄賃くらいは上げちゃおうかな♡
≪そこです≫
「そこ……? どこ?」
≪そこです≫
「お、俺か⁉」
「お前かーい!」
ストーカーが堂々とわたしの隣を歩くな!
思わずグーでツッコミ入れちゃったよ!
期待して損したわっ!
うぅ。わたし、なんでモテないの……。
もうこんなのばっかり……。
『王子よ。またも死んでしまうとは情けない……』