『ウルティムス』の人たちにとっては、人生初めての食事。
【これが食事でやんすか!】
【おいしそうな匂いです……】
ウルティマさんが目を輝かせ、シャーレさんが涎を垂らして目の前のお皿を見つめている。
そう、最初の晩餐にわたしが選んだのは、パストルラン王国のみんなも大好きなあれ。
コカトリスの肉をひき肉にして、小麦粉と混ぜて成形して焼いたあの料理!
ナゲットクンだー!
これなら外さない。
いろいろな味付けもあるし、きっとみんな喜んでくれるはず!
それと飲み物は、ナタヌの大好きなガーランドレモンスカッシュをチョイス!
間違いない組み合わせ♪
「はーい、みなさんのテーブルにお料理は行き渡りましたかー?」
5人に1つくらいの間隔で、雑に大皿とドリンクのピッチャーを置いていったからホントに足りているかちょっと不安……。
「ナタヌ、スレッドリー。悪いんだけどちょっと席を回って、料理と飲み物が足りていないテーブルがないかチェックしてくれない?」
「わかりました!」
「おう、まかせろ!」
2人がローラーシューズで滑りながら、各テーブルを目視確認し始めてくれる。
助かる。
「この短時間で200人分の料理を用意するとは、アリシア=グリーンもなかなか良い仕事をしますね」
ノーアさんが感心したように頷く。
「『龍神の館』と繋がっているアイテム収納ボックスがあるんですよ。そこから旅の際には食事を分けてもらうことになっていて……。でも200人前を一気に使うのはちょっと不安ではありますけど」
一応お手紙は入れておきました。
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異国の人たちの接待で大量に使います。
ごめんね。
アリシアより
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一応、お店の会計に打撃を与えないように補填金もセットでね。
ソフィーさんたちには、がんばってコカトリスを討伐しまくってもらわなきゃ。
「アリシア、料理も飲み物も大丈夫だったぞ」
「アリシアさん、ちゃんと全員に行き渡っていました!」
2人の偵察が無事完了。
良かった!
「2人ともありがとー! じゃあ、みなさん、さっそく人生初めての食事をしてみましょうか!」
【アリシアさん……】
【どうすれば……】
【これを口に?】
【口に入れてどうするのかしら】
【でもおいしそうな匂い】
【口に入れてみる?】
【食べられたりしない?】
【&&$#!T#~=B?>"E!#T$%T&&%)A+*@I~{!$】
ああっ、そうですよね! いきなり食べろって言われても食事の仕方がわからないですよね!
たしかにそうだ! 最初はお手本が必要……。
「ナタヌ、スレッドリー! みなさんと一緒にテーブルに着いて、この『ナゲットクン』の食べ方と『レモンスカッシュ』の飲み方のお手本を見せてあげて!」
人間代表として、食事の仕方を教えてあげてほしい!
「食べ方と飲み方、ですか?」
「おう、まかせろ!」
2人が予備のイスを持ってきて輪の中に入る。
「はい、みなさん注目ー! 今からパストルラン王国のナタヌとスレッドリーが、みなさんに食事の仕方を教えます!」
「ナタヌです! よ、よろしくお願いします!」
「これはだな、『ナゲットクン』といって、熱々でジューシーでおいしい料理だ。食べ方はこうだ。片手で1つ摘まんで口に放り込む。俺と同じようにナゲットクンを手で持ってみろ」
スレッドリーの呼びかけに応じて、ウルティマさん、シャーレさん、200人のエヴァちゃんの顔をしたみなさんが、右手でナゲットクンを持ち上げる。
「そうだ。おいしそうだろう? 良い香りだ。これを『香ばしい』というんだ。食欲をそそる。これからこのナゲットクンを口にし、咀嚼する。準備は良いか? よし、口に放り込め!」
全員が同時に、ナゲットクンを口にする。
パクリと勢いよく、小ぶりなナゲットクンが全員の口の中に納まった。
「さあ目を閉じろ。そしてアリシアの顔を思い浮かべるんだ。美しいな。ありがとう、アリシア。今日もアリシアと一緒にいられる喜びに感謝しよう。感謝を終えたらゆっくりと奥歯で噛んで味わう。細かくかみ砕いたら飲み込む。そうしたらまた次のやつを片手で――」
ちょっとちょっと!
純粋な『ウルティムス』の人たちにウソを教えないで!
変な工程が混じってるから!
「アリシアさんに感謝をしながら食べるのが最も重要な部分です! そうするとお食事が何杯もおいしく感じられます!」
ああっ、ナタヌまで!
ってー、『ウルティムス』の人たちが目を閉じて食事してるぅ!
やめてー!
みんなでわたしの顔を思い浮かべないでー!