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第51話 アリシア、200人前の料理を用意する

「さあ、アリシア。パストルラン王国のホストとして、まず最初にやるべきことをやりましょう」


 ノーアさんが両手を広げて『ウルティムス』の人たちのほうに向かって歩き出す。


「最初にやるべきことって?」


「人間の楽しみの1つ。食事の用意です」


 食事!

 人間の3大欲求の1つだ!


【食事でやんすか! 非常に興味があるでやんす!】


【私も食事というのをしてみたいです!】


 ウルティマさんもシャーレさんも目を輝かせている。

 そっかー。2人とも食事をしたことがないんだ……。なんかすっごい不思議。食事の楽しみを知らないっていうのもそうだけど、そもそも食べずにどうやってエネルギーを手に入れているんだろう?


『それは直接尋ねてみたらどうだ?』


 それもそうね。

 進化した人類がどうやって生きているのかってことにはすっごく興味があります!


「あのー、『ウルティムス』のみなさん。差し支えなければで良いんですけどー、教えてほしいことがー」


【なんでやんすか?】


【なんでしょうか⁉】


【なにかしら?】


【なになに~?】


【何でも訊いて!】


【私に答えられることならなんでも!】


【%73#K$"!=`@I>K>$E&!】


 一斉に!

 さすが集合体の人たち。

 みんな一気に集まってきちゃった……。

 あと最後の人の言葉はちょっとよくわからない……。


「えーっとですねー。みなさんは普段食事をしないんですよね?」


【しないでやんすね】


【食事をしたことがないです!】


【この「口」という器官から他の生物を取り込むことでエネルギーに変換する、という知識があります】


【他の生物を取り込むというのはどんな感覚なのかしら】


【怖いですわ】


【融合して1つの存在になるのでしょうね】


【私たちと変わりませんね】


【同じなら安心です】


【&!!"#*A!~%NS$$I$=+!N】


「いや……たぶんちょっとイメージと違っているかなと……」


 わたしの質問の前に、『ウルティムス』の人たちの疑問を解消していく。

 食事は他の生物との融合ではないこと。

 摂取した食べ物を体の中にある消化器官で分解して栄養素を取り出す行為であること。

 その栄養素を人間の体の成長や活動するためのエネルギーとして利用すること。

 定期的に食事をしないと生命活動を維持できないこと。


 いろいろ人間の仕組みについて説明をしてみた。


「アリシアさんすごいです! 私、ぜんぜん知りませんでした!」


「俺も知らないことばかりだったな」


 と、ナタヌとスレッドリー。

 あのね、キミたち人間何年やってるのよ……?


【効率がとても悪そうですわ】


【外部からエネルギーを手に入れないと生命として存在できない?】


【争って勝って倒した相手を食べないと生きていけない……】


【野蛮です】


【争いは好みません】


【食事が怖い】


【私たちも消化器で分解されてしまうのでしょうか】


【食べないでください】


【2&T$>?A4$B%&''%$#E""`*T~)'&%A"!#$#I】


「ちょっと不安を煽っちゃったかな……。食事はそんなに恐ろしいものではないですよ。エネルギーのためだけじゃなくて、目で見て楽しんで、鼻で香りを楽しんで、口で味わって楽しむ。食事は娯楽の1つでもあるんですよ」


 貴族様たちにとっては、かなり優先順位の高い娯楽の1つですし。

 あの人たち、ほかにすることがないのかってくらい、食事に時間をかけますからね。そのおかげでお店が繁盛するんだけど。


「じゃあこれからその食事を用意しますから、みなさんはテーブルに着いておとなしくしていてくださいね。200人分となると配膳するだけでもそれなりに時間がかかりますから……」


 わたしの言葉に従って、『ウルティムス』の人たち……主に見た目がエヴァちゃんのみなさんが、再び指定された席に戻っていく。

 表情を見るに、食事の楽しみよりも不安が勝っている。そんな感じかもしれない。

 唯一、ウルティマさんとシャーレさんだけがうっきうきの笑顔でホスト席に座っている。


 んー、どうしようかな。

 さすがに今から料理を作っていたら、待たせ過ぎちゃうだろうし。初回はありものでいこうかな。


 でも200人前か……。

 そんなに使って、お店の料理の在庫大丈夫かな……。


 逆に考えよう。

 それだけ使ってもお店のほうに影響を出さない料理……。


 となるとやっぱりこれしかないか。


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