目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

第61話 アリシア、大人の楽しみに誘われる

「アリシア=グリーン。そろそろ次のおもてなしポイントに参りましょう」


 はいー。

 なんかわたし、ちょっと楽しくなってきたかもしれないです。


 さてさて、これまでのおもてなしは何ですか?


 食事は提供した。

 なんか嗜好品の取引ができるようにもした。

 温泉を引いてキャッキャウフフしてもらった(想像)


 んー、次は何だろう?


「食事、温泉ときて、次ですよ。わかりませんか?」


「いやぜんぜん……」


 まったく見当もついておりませんが……。


「食事をして温泉に入り、次にする大人の楽しみは1つしかありませんよ」


 んー、そうかな……。

 けっこうありそう……でなさそう……。

 順当に行くとやっぱりあれかな?


「次は宴会ですか? まだ昼間ですけど。……でもそろそろ夕方ですし、それもありか」


「今日の宴会会場はここかの?」


「うわっ、マーちゃん⁉ 急に湧いた!」


 いったいどこから⁉


「アーちゃん、こんにちはなのじゃ」


「こ、こんにちは!」


 マーちゃんこと、水の女神・マーナヒリン様だ。

 ちなみにわたしの義理のママ♡


 だけどマーちゃん、いつもの鮮やかな緑色のマント姿じゃなくて、なんで浴衣姿……?

 もしかして温泉入ったの?


「そうなのじゃ。先に温泉をいただいたのじゃ~」


 やっぱりそうだったんだ!

 よく見れば温泉の効果なのか、いつにも増してマーちゃんの金色の髪ががつやつやでピカピカだー!

 ありがたやー。自然と拝んじゃう。わたしのロリ女神様♡


「温泉は良いものじゃの♡ 温泉の中でいただく日乃本酒は最高なのじゃ」


「あ、うん。……そっか。もう一杯ひっかけてきたのね……」


 温泉よりもそっちがメインですね?

 さすがマーちゃんだよ。

 お酒があるところにマーちゃんあり。マーちゃんあるところにお酒あり。


「マーナヒリン様。ご機嫌麗しゅうございます」


 ノーアさんが片膝をついて挨拶をする。

 ああっ、浴衣姿でそんな足を開いたら、お開けが大変なことになりますから気をつけてください!


「アリシア=グリーン。安心してください。穿いてますよ」


 いや、わざわざ短パンを見せなくていいですから。

 そういうのは間に合っているので……。


「ノーアも相変わらずじゃの。我のアーちゃんじゃ。丁重に扱うのじゃぞ?」


「心得ております。ミィシェリア様にも、スークル様にも同じように仰せつかっておりますゆえ」


『おう、マーナヒリン。きたか。だが宴会はまだ先だぞ』


 スーちゃん。

 やっぱり宴会は決定事項なのね……。しかも、マーちゃんが来るのもわかっていたっぽい。


「まだなのじゃ? では我はもう一度温泉に浸かってくるかの」


「あ、そうなの? いってらっしゃーい」


 温泉に浸かるのがメインなのか、それともそこで飲むお酒がメインなのか……。

 まあどっちも水だし、マーちゃんの領域かな?


「それではアリシア=グリーン。食事、温泉の後の大人の楽しみに参りましょうか」


 ノーアさんがうれしそうに頷いた後、すたすたと歩いていく。


「ちょっと? まだ宴会じゃないんですよね? 大人の楽しみって何ですか⁉」


 ちゃんと説明してからにしてくださいよ!

 ほら! ナタヌもスレッドリーも急いで!

 掃除はもう良いから、次の現場に向かうよ!


 モップを握り締めた魔女っ子と粘着テープ蜘蛛男の腕をつかんでノーアさんの後を追う。


 ホント説明が足りない人……石だなー。

 ノーアさんの中では完結している話なんだろうけど、ちゃんと言葉にしてくれないと、常人には理解できないんですって。



* * *


 ノーアさんに連れてこられたのは、園庭の隣にある空き地だった。

 草がきれいに刈られていて、地面の土がしっかりと慣らされている。


「さて、始めましょうか」


 えっと……ここで何を?


「我が国に伝わる伝統的な大人の遊びです」


 だから何⁉


「アリシア=グリーン。スレッドリー殿下。そこにあるネットを真ん中へ」


「ネット? これですか?」


 ノーアさんが指さした先に畳んであった何か……を広げてみると、巨大なメッシュ状の布だった。


「ネットだ。これを……?」


「両側にあるポールに引っ掛けて、たるみなく張ってください」


 りょーかい。


「スレッドリー、そっち持って」


「お、おう」


 手の粘着テープは取りなさいよ?

 ネットにくっついちゃうから。


「けっこう重たい? そっち大丈夫ー?」


「おう……なんとかな……」


 わたしとスレッドリーは、両側からネットを引っ張り合いながらポールに引っ掛けていく。

 なかなかに力が必要な作業……。ううん? 力が足りないわけじゃないよ? わたしのSTR≪筋力≫は4832あるし、スレッドリーのSTR≪筋力≫に合わせて1/10くらいの力で引っ張ってあげる調整のほうがわりと面倒ってだけー。



「よし、終わりー。ノーアさん、これで良いですか?」


 たるみなくピンと張れたと思います!


「すばらしい。初めてとは思えない出来栄えです」


 そう? そんなにうまく張れてました? ま、まあわたしくらいセンスがあれば、初めてでもこれくらいはできるんですよ?


「ではさっそく楽しみを始めていきましょうか。ルールはご存じですか?」


「だから何の⁉」


「アリシア=グリーンは我が国の伝統的な遊びをご存じない?」


「ご存じないです……なんですか、これ?」


 まったく見当もつかない。

 何らかのスポーツなんだろうなってことくらいしか?


「アリシア、何をやっているんだ? 早くポジションにつけ」


「アリシアさん! 早く早く! アリシアさんは最初セッターですよ」


「セッター……?」


 って何?


≪アリシア、情報を共有します≫


 お、エヴァちゃん助かるー。



 えっと、なになに?

 パストルラン王国の伝統的なボールを使った遊び。


 前世の記憶に一番近いもので言うと……バレーボール?


 バレーボール?


この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?