「アリシア=グリーン。そろそろ次のおもてなしポイントに参りましょう」
はいー。
なんかわたし、ちょっと楽しくなってきたかもしれないです。
さてさて、これまでのおもてなしは何ですか?
食事は提供した。
なんか嗜好品の取引ができるようにもした。
温泉を引いてキャッキャウフフしてもらった(想像)
んー、次は何だろう?
「食事、温泉ときて、次ですよ。わかりませんか?」
「いやぜんぜん……」
まったく見当もついておりませんが……。
「食事をして温泉に入り、次にする大人の楽しみは1つしかありませんよ」
んー、そうかな……。
けっこうありそう……でなさそう……。
順当に行くとやっぱりあれかな?
「次は宴会ですか? まだ昼間ですけど。……でもそろそろ夕方ですし、それもありか」
「今日の宴会会場はここかの?」
「うわっ、マーちゃん⁉ 急に湧いた!」
いったいどこから⁉
「アーちゃん、こんにちはなのじゃ」
「こ、こんにちは!」
マーちゃんこと、水の女神・マーナヒリン様だ。
ちなみにわたしの義理のママ♡
だけどマーちゃん、いつもの鮮やかな緑色のマント姿じゃなくて、なんで浴衣姿……?
もしかして温泉入ったの?
「そうなのじゃ。先に温泉をいただいたのじゃ~」
やっぱりそうだったんだ!
よく見れば温泉の効果なのか、いつにも増してマーちゃんの金色の髪ががつやつやでピカピカだー!
ありがたやー。自然と拝んじゃう。わたしのロリ女神様♡
「温泉は良いものじゃの♡ 温泉の中でいただく日乃本酒は最高なのじゃ」
「あ、うん。……そっか。もう一杯ひっかけてきたのね……」
温泉よりもそっちがメインですね?
さすがマーちゃんだよ。
お酒があるところにマーちゃんあり。マーちゃんあるところにお酒あり。
「マーナヒリン様。ご機嫌麗しゅうございます」
ノーアさんが片膝をついて挨拶をする。
ああっ、浴衣姿でそんな足を開いたら、お開けが大変なことになりますから気をつけてください!
「アリシア=グリーン。安心してください。穿いてますよ」
いや、わざわざ短パンを見せなくていいですから。
そういうのは間に合っているので……。
「ノーアも相変わらずじゃの。我のアーちゃんじゃ。丁重に扱うのじゃぞ?」
「心得ております。ミィシェリア様にも、スークル様にも同じように仰せつかっておりますゆえ」
『おう、マーナヒリン。きたか。だが宴会はまだ先だぞ』
スーちゃん。
やっぱり宴会は決定事項なのね……。しかも、マーちゃんが来るのもわかっていたっぽい。
「まだなのじゃ? では我はもう一度温泉に浸かってくるかの」
「あ、そうなの? いってらっしゃーい」
温泉に浸かるのがメインなのか、それともそこで飲むお酒がメインなのか……。
まあどっちも水だし、マーちゃんの領域かな?
「それではアリシア=グリーン。食事、温泉の後の大人の楽しみに参りましょうか」
ノーアさんがうれしそうに頷いた後、すたすたと歩いていく。
「ちょっと? まだ宴会じゃないんですよね? 大人の楽しみって何ですか⁉」
ちゃんと説明してからにしてくださいよ!
ほら! ナタヌもスレッドリーも急いで!
掃除はもう良いから、次の現場に向かうよ!
モップを握り締めた魔女っ子と粘着テープ蜘蛛男の腕をつかんでノーアさんの後を追う。
ホント説明が足りない人……石だなー。
ノーアさんの中では完結している話なんだろうけど、ちゃんと言葉にしてくれないと、常人には理解できないんですって。
* * *
ノーアさんに連れてこられたのは、園庭の隣にある空き地だった。
草がきれいに刈られていて、地面の土がしっかりと慣らされている。
「さて、始めましょうか」
えっと……ここで何を?
「我が国に伝わる伝統的な大人の遊びです」
だから何⁉
「アリシア=グリーン。スレッドリー殿下。そこにあるネットを真ん中へ」
「ネット? これですか?」
ノーアさんが指さした先に畳んであった何か……を広げてみると、巨大なメッシュ状の布だった。
「ネットだ。これを……?」
「両側にあるポールに引っ掛けて、たるみなく張ってください」
りょーかい。
「スレッドリー、そっち持って」
「お、おう」
手の粘着テープは取りなさいよ?
ネットにくっついちゃうから。
「けっこう重たい? そっち大丈夫ー?」
「おう……なんとかな……」
わたしとスレッドリーは、両側からネットを引っ張り合いながらポールに引っ掛けていく。
なかなかに力が必要な作業……。ううん? 力が足りないわけじゃないよ? わたしのSTR≪筋力≫は4832あるし、スレッドリーのSTR≪筋力≫に合わせて1/10くらいの力で引っ張ってあげる調整のほうがわりと面倒ってだけー。
「よし、終わりー。ノーアさん、これで良いですか?」
たるみなくピンと張れたと思います!
「すばらしい。初めてとは思えない出来栄えです」
そう? そんなにうまく張れてました? ま、まあわたしくらいセンスがあれば、初めてでもこれくらいはできるんですよ?
「ではさっそく楽しみを始めていきましょうか。ルールはご存じですか?」
「だから何の⁉」
「アリシア=グリーンは我が国の伝統的な遊びをご存じない?」
「ご存じないです……なんですか、これ?」
まったく見当もつかない。
何らかのスポーツなんだろうなってことくらいしか?
「アリシア、何をやっているんだ? 早くポジションにつけ」
「アリシアさん! 早く早く! アリシアさんは最初セッターですよ」
「セッター……?」
って何?
≪アリシア、情報を共有します≫
お、エヴァちゃん助かるー。
えっと、なになに?
パストルラン王国の伝統的なボールを使った遊び。
前世の記憶に一番近いもので言うと……バレーボール?
バレーボール?