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第60話 アリシア、粘着蜘蛛男に恐怖する

「危なかった……」


 あと少しでまさかの混浴温泉なんてハレンチなものがまかり通ってしまうところだった!

 でもなんとかわたしの『創作』スキルを使って回避成功!

 だけど……男風呂の『創作』に思いのほか時間がかかって……200人のエヴァちゃんたち(ウルティムスの人たち)とお風呂に入るチャンスを逃したー! 1番おいしい役をナタヌにお願いしないといけなかった……。悲しみが深い……。つらすぎて吐きそう……。でも明日こそは一緒に入るぞぉぉぉぉぉぉぉ!


 ああもう、わたしにかかる負担が大きすぎるのよ! 早くラダリィとエヴァちゃんこっちに来てよ! わたし1人でノーアさんにツッコミも入れながらラダリィチェック(代理)までするのは、さすがに荷が重いってー!


≪テステス。こちらマイクのテスト中です。アリシア、聞こえますか? こちらエヴァです≫


 お、エヴァちゃん! ひさしぶりー!


≪すぐにでもそちらに向かうことは可能なのですが、ラダリィさんが異空間を介した移動を嫌がっていまして……≫


 移動できるってことは、そっちは諸々片付いたの?


≪はい。一度こちらにウルティマさんがいらっしゃいまして、別動隊の反乱軍のみなさんを説得してくださいました。ほぼ終息したと言えます≫


 ヤンス、いつの間に……。

 まあ落ち着いてきているなら良かったね。じゃあ、この後はそっちにいる人たちが、空間移動でこっちにやってくる感じ? ノーアさんにも話をしておかなきゃ。ホムンクルスの体を用意したりする必要もあるだろうし。


≪それはすでにウルティマさんが交渉済みだとか≫


 なんだ、ヤンスしごできか!

 まあ有能だし、しごできか……。一国の殿だもんね。

 でもさ、それならやっぱり見た目を何とかしてほしい! いつまでもヤンスの顔でてきぱき仕事をこなされるのはちょっと……。あー、でも……グレンダン公爵も別に無能ってわけじゃなかったかも……。いやいや、そんなことない! 才能もないのに木工職人を目指して修行している辺りヤンスは十分ポンコツでしょ! ウルティマさんとは大違い!


≪アリシア、不倫はいけませんよ≫


 誰がするかっ!

 よりにもよってヤンスとなんてありえないでしょ!


≪そうですか。グレンダン公爵閣下への恋愛ポイントを発表いたしましょうか?≫


 そういうのいらない……。

 前よりはちょっと見直した。それだけだから!


≪そうですよね。殿下に対する恋愛ポイントの1億分の1程度ですし≫


 まって。単位がおかしい……。

 わたし、そんなにポイント稼いでいるの……? スレッドリーを見ても、ぜんぜんそんな気持ちにならないんですけど……。ポイント計算狂ってない?


「どうした~! アリシア、呼んだか~⁉」


 うっさい、粘着蜘蛛男!

 天井から糸(粘着テープ)を伝って降りてくるんじゃないよ! ホントに蜘蛛じゃん。


「……呼んでないから仕事に戻って」


「おかしいな。今呼ばれた気がしたんだが……」


 首をひねりながら糸(粘着テープ)をゴムのように引っ張って、その反動で天井へ向かって飛んでいく。器用すぎる……。糸(粘着テープ)を完全に使いこなしている……。


≪殿下もラダリィさんのようなスキル外スキルの読心術を体得し始めているのでしょうか。私には探知ができませんでした≫


 こわっ。

 スレッドリーに心を読まれるとかこわっ!

 なんか読心術をブロックするような魔道具の検討をしないといけないのかも……。


 あ、それで、ラダリィはどうしてるの?

 空間移動は嫌がっているんだっけ?


≪はい。年は取りたくないとのことで駄々をこねています≫


 逆なんだけどなー。

 異空間にいる間は年を取らないから、相対的に周りよりも若くなるはずだよね。

 その辺、うまく伝わらないなんだね。


≪説明はしましたが、どちらも嫌だそうで……≫


 まあそうね。

 ラダリィのその気持ちはわかるよ。うーん、わたしも同じかも。みんなと同じがいいな……。


 エヴァちゃん、ラダリィに無理強いはしないでね。通常通り、馬車で移動したら良いだけだし。『グレンダン』からこっちの城まで半日もかからないでしょう?


≪はい、遅くとも明日までには送り届けます≫


 よろしくねー。

 こっちはこっちでいろいろと大変でさー。


≪把握しています。私も先ほどの温泉パーティーには参加していましたし≫


 いつの間に……。

 なんとか混浴を阻止して、男風呂を『創作』したから事なきを得たけどさ……。ノーアさんは人の心とかわからないわけですよ。もう『賢者の石』になってからひさしいから。


≪おそらくあの方は……人間だった時から性格はあのままだと推察します≫


 あー、それなんかわかるかも……。

 三つ子の魂百までかー。

 100歳? 1000歳? 何歳かわからないけどいくつになっても変わらない朴念仁ってことね。アイコさんも大変だわ。


≪ラダリィさんが呼んでいますので、通信はこれで終わります。また後ほど連絡します。そちらに着いたらたくさん、なでなでしてください≫


 なでなで……。

 急にデレるの何なの? まあ良いけどさ。


「アリシア=グリーン。話は終わりましたか?」


 うぉっ! ちょうど良いところにノーアさんが現れた!

 しかも浴衣姿で。


「ノーアさん……温泉、楽しんでますね……」


「たっぷりの湯につかると、まるで心が洗われるようですね。温泉はとても良い」


 人じゃなくても心の洗濯とかできるんだ……。それはとても貴重な情報をありがとうございます。まあ、楽しかったならそれは良かったです。男風呂は突貫工事なので女風呂の1/1000のサイズですけど。


「アリシア=グリーン。そろそろ次のおもてなしポイントに参りましょう」


 はいー。

 次は何ですか?


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