「アリシア=グリーン……。私のことを忘れていませんか……?」
「あ、ノーアさん! 何でしたっけ⁉」
何か話しかけられていたような?
すみません、忘れてました!
「次のもてなしの話ですよ……」
あー、そうでしたそうでした!
そんな淋しそうな顔しないでくださいよー!
『ウルティムス』のみなさんもちょうど腹ごなしに運動できたと思うので良いんじゃないでしょうか!
次は何をしますか⁉
「食事の後に何をするか。それはもちろん……」
もちろんなんですか?
そんな含み笑いをしながら見られても、こっちは何も浮かんでいないですけど?
「ナタヌさん、お答えをどうぞ」
急にナタヌに振った⁉
ナタヌなら、ナゲットクンの食べ過ぎでお腹パンパンになって、そこでぐったり横になってますけど?
「食事の後は……もちろん……アリシアさんです」
まだだいぶ苦しそうですけど。
って、わたし? 何?
「正解です」
正解なの⁉
どういうこと⁉
わたしで何をしようと⁉
「正解したナタヌさんには、1[アリシア]をプレゼントします」
「やった~♡ アリシアさん! 私、1[アリシア]さんをゲットしました!」
「う、うん……。良かった、ね?」
なんのこっちゃわからないけど……ナタヌがちょっと元気になった、ね?
「この城の中で唯一使える通貨のようなものだと思ってください」
通貨?
「みなさんもよく聴いてください」
お互いに直接言葉を交わしてのコミュニケーションを楽しんでいるエヴァちゃんたち(『ウルティムス』の人たち)が一斉にノーアさんのほうを向く。
規律正しいというかなんというか。
この人たちはやっぱり集合体なんだなーって。
「この先、嗜好品としての食べ物がほしかったり、その他娯楽を希望をする場合は、この[アリシア]コインを貯めて使用してください」
なんかすっごい光っている金貨だぁ!
それ、どこから取り出したんですか⁉
うわ、わたしの横顔が彫ってあるぅ。なんかそこはかとなく高貴な……ちょっと美化しすぎじゃないですか?
おっと、まったく『構造把握』できない素材……。ただの金ではなさそう……。
「ほしいですほしいですほしいです!」
「俺もほしい……」
ナタヌ、スレッドリー、あなたたちが食いつくのはおかしいからね。
これは『ウルティムス』の人たち向けにノーアさんが考えたおもてなしの1つなんだよ? たぶんだけど。
「まずはナタヌさんに1[アリシア]コインをお渡しします」
「ありがとうございます! うわ~い、ピカピカだ~! アリシアさんの匂いがする♡」
「それは気のせいだから……」
わたしが創ったわけじゃないし。ニオイはしないでしょ。
【1[アリシア]コイン?】
【なんですの?】
【コインというものの知識はあるだろう】
【貨幣ですよ】
【貨幣?】
【取引の際に利用される対価のことですわ】
【この国では貨幣を支払わないと何も手に入らないのだったわね】
【物質の授受には貨幣が必要だ】
【K$%#_?>A!~@*N
「よくご存じですね。そうです。これはこの城の中でのみ価値を持つ貨幣です。何か物がほしい。何かサービスを受けたい。そういった時には、必ずこの[アリシア]というコインをお出しください」
さっきはナゲットクンをめちゃくちゃ振る舞いましたけど、この後は無制限にもてなしをするわけではないということですか。つまり、人間というものを理解してもらうには、人間が営む国の在り方も知ってもらう、そういうことですね?
「理解が早くて助かります。さすがアリシア=グリーンですね」
なんか褒められた。へへ♡
ま、まあ、良いことばかりを並べて接待したとして、人間に対して過度に好印象を抱いて国に帰ったとして、実際国同士の交流が本格化した後で、「こんなはずじゃなかった」って思われても困る、というのはわかります。
「[アリシア]コイン、および取引に関するルールは5つです」
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1. 取引には必ず[アリシア]コインを利用する。
2. その取引に対しての価値は、私(ノーア)が決定する。
3. 午前0時(24時間に一度)に、この城に存在する全員に対して、5[アリシア]コインを配布する。
4. [アリシア]コインは労働による対価、または、私(ノーア)の判断で追加配布を行うことがある。
5. [アリシア]コインは午前0時を過ぎると、前日に所持していた分は消滅する。
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なんかわりと細かいルールが提示された⁉
これ、思い付きじゃなくて事前に考えてきたやつですね? そうでしょ?