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第54話 アリシア、ナタヌの命を救う?

「アリシア=グリーン。次のもてなしの時間です」


 お腹……じゃなくてピアスがパンパンのエヴァちゃんたち(『ウルティムス』の人たち)を前にして、ノーアさんが宣言する。


「次のもてなしですか……。食事の後……なんでしょう?」


 みんなナゲットクンを食べ過ぎだし、ちょっと食休みを取らせてあげたほうが良いのではないですか? エネルギー変換って言っても、人間と同じ構造なら、消化するまで時間がかかるんですよね?


「あ、アリシアさん……助けてください……」


 ナタヌのか細い声が聞こえてくる。

 ん、どこにいるの? ナタヌの姿が見当たらない?


「ここです……」


 なぜかテーブルとテーブルの間にナタヌが挟まっていた。


「ナタヌ? そんなところで何を……?」


 周りでエヴァちゃんたち(『ウルティムス』の人たち)がオロオロしちゃってるじゃないの。早くどいてあげて?


「通り抜けようとしたら挟まってしまって……どっちにも動けなくなって……」


 服が引っかかっているのかな?

 仕方ないから引っ張ってあげよう。


 そいやー!


「無理無理無理! アリシアさんストップです! 出ちゃいますっ!」


「何が⁉」


「は、吐きそう……」


「なんで⁉」


 手を引っ張っただけでしょ⁉


「ちょっと食べ過ぎてしまって……」


「えっ? 何を?」


「ナゲットクンを……。『ウルティムス』の人たちと一緒に……」


 あーそういうこと?

 接待しながら一緒に食べていたのね?


「配膳の時には楽々通り抜けられていたのに、お皿を片づけようとして机の間を通ったら……」


「なるほどねー。食べ過ぎでお腹が出っ張って引っかかった、と」


「はずかしいです……見ないでください」


 耳まで真っ赤。

 確かにお腹の辺りのローブがぷっくりと……妊婦さんみたいになっているじゃないですか! どれだけ食べたのよ⁉


「『ウルティムス』のみなさんにお願いが……。あとスレッドリーも手伝って」


「おう、どうした?」


 と、スレッドリーが近寄ってくる。

 そしてエヴァちゃんたち(『ウルティムス』の人たち)も反応してくれる。


【なんでしょうか?】


【おいしい食べ物をありがとう】


【お手伝いが必要なら言ってくださいまし】


【ナタヌさんが苦しそうですわ】


【空間転移させますか?】


【おかわりください】


【何をなさっているの?】


【*+~!M"#!#$O`*+???TT%#$``O*@!&%】


 ちょっと声をかけると一斉に反応してくれるのはうれしいんだけど……やっぱりちょっとずれているというか、人間がどういう生き物なのかはまだぜんぜん理解できていないみたい?


「えーとですね、この子、ナタヌがですね、テーブルの間に挟まっちゃって……。ちょっとこのテーブルをみなさんで引っ張って、隙間を開けてほしいんですよ。誰かが座っているとテーブルが動かせないので、みなさん全員一度イスから立ち上がってもらえますか?」


 ナタヌが通ろうとして挟まった隙間は、本来通路用に用意していたものではない。おそらくテーブルが動いたか何かで偶然生まれた隙間なのでかなり狭い。両端のテーブルを少しずつずらさないと、隙間を広くするのは難しいかな。


「つまりこのテーブルを叩き割ればいいんだな?」


 ぜんぜん違う。

 備品は壊さないで。


【お安い御用よ】


【まかせて】


【立ち上がればいいのね】


【空間転移のほうが早いのに】


【おかわりください】


【あなたも早く立ち上がってくださらない?】


【*+$%#!!T&%$#$$A~``@+*?>T#$%&'(U>`"@$%$#%】


 みなさん協力的で、ちょっとずつテーブルが動いていく。

 ナタヌ、もう少しだからね。

 まだ口からナニカを産まないでね。


【動きましたわ】


【まあすばらしい】


【この調子です】


【そちらの方、ペースがずれています】


【タイミングを合わせて】


【まだ体の使い方がうまく行かないのです】


【言い訳はおよしになって】


【条件はみな同じです】


【いつも通り心を1つに】


【ですがみなさんの想いが聞こえてこないのです】


【声に出さないと伝わらないというのは不便ですね】


【人間は不便です】


【でも初めて自分という者を理解しました】


【私は思い出しましたわ】


【元人間の方もいらっしゃるのですね】


【%S$%&I0`;!R%A$4%N~=A!#+I?>=#$】


「と、通れました!」


 ナタヌがテーブルの間から転がり出てくる。

 なんとかお腹を引っ込めて、脱出に成功したらしい。


「おー、良かった。あのままテーブルの一部にならなくて良かったね」


「それはイヤです……。食べ過ぎには注意します……」


 だぶだぶのローブを着ているからって、体形隠しに使っちゃダメだよ?

 あ、ほら、みなさんにちゃんとお礼を言って。


「『ウルティムス』のみなさん、ありがとうございます! おかげさまで命拾いしました! あとついでに殿下も」


「おう、良かったな」


 命拾いって、また大げさな……。

 まあでも、みんなで協力して何かをするのが得意な人たちなんだってことはよくわかった。それがわかったのは収穫だったかな。


「アリシア=グリーン……。私のことを忘れていませんか……?」


「あ、ノーアさん! 何でしたっけ⁉」


 何か話しかけられていたような?


「次のもてなしの話ですよ……」


 あー、そうでしたそうでした。

 『ウルティムス』のみなさんもちょうど腹ごなしに運動できたと思います!


 次は何をしますか⁉


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