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第86話 アリシア、ラダリィの闇を覗く

「アリシア=グリーン。それでは確かめに行きましょうか」


 えっと、わたし……ですか?


「もちろんあなたです」


 ノーアさんが笑顔でめっちゃ見てくるぅ。

 絶対めんどうなことになるやつじゃないのさー。


「えー。わたし、イニーシャ様と面識がないですし、スーちゃんが行ったほうが良くないですか?」


 嫌ですよー。

 わたしはここでラダリィのおっぱいでも揉みながら待っていますからー。


「アリシア、今すぐ行ってきてください。そしてしばらく帰ってこないでください」


 ラダリィ、冗談だって。

 いやちょっと待って……わたしの心を読むのはやめて? おっぱいを揉むよりマナー違反では?


『マナーのことが知りたいのかぉ?』


 あ、リンちゃん。マナーは……今は大丈夫です。取り込み中なので。


『悲しいぉ……。マナーについて聴きたい子はいないのかぉ』


 マナーは間に合っているから大丈夫なんですけどー、イニーシャ様を探しに行くのに一緒についてきてくれたりはー。


『イニーシャは苦手だぉ。ほかを当たってくれぉ……』


 女神様同士で苦手とかあるの⁉


『アイツ、いくら言ってもマナーを守らないし、すぐに暴力で解決しようとしてくるんだぉ……』


 知恵の女神様なのに暴力を……。

 それはリンちゃんが苦手そうなタイプかも……。


『リンレーは話がこじれそうだから連れて行くのはやめておけ。連れて行くなら……ミィシェリアだな』


 そうねー。こういう時安全なのはミィちゃんだよねー。

 だいたい誰とでも仲良くできそうだし?


『アリシアとスークルがいるなら私は行きません』


 えー、なんでよー。

 3人で異空間を旅した仲じゃないのさー。

 ミィちゃんだってこの件に無関係ってわけじゃないでしょ?


『だからです。また考えなしの2人に、無理やり千切られて小さくされても困ります』


 あのことを根に持っていたんだ……。

 ホントにごめんってばー。

 わたしだってまさかミィちゃんが千切れてミニィちゃんになるとは思わなかったんだもん。でもあの時は助けに来てくれてうれしかったんだよー。


『今回は最初からノーアもいるのでしょう。私は外で応援していますから3人で行ってきてください』


 つれないなー。

 だってさ、スーちゃん、どうする?


『まあ、3人……ウルティマ殿も入れて4人が妥当だろうな』


【もちろん、おいらもお供するでやんす】


 そうね、たしかにウルティマさんがいないと、ウルティムス側の話ができないかー。


【お待ちになって】


「ん、誰?」


 シャーレさんの寝室の扉を開けて入ってくる人物。


【私もご一緒させていただけないかしら】


 エヴァちゃん……じゃなくてウルティムスの人。

 番号は……No.37。


「サナちゃんだ!」


 反乱分子の中でもリーダー的に振る舞っていた存在。

 ノーアさんのおもてなしプランの間は、ずっとおとなしくしていただけれど、やっぱり思うところはあるのかな。


【サナちゃん……? 私のことですの?】


「識別番号がNo.37だから。37さんななで、さーなーって! かわいいでしょ?」


「サナ。なかなかかわいいネーミングだな」


 お、スレッドリーがしゃべった。

 ずっと黙っているから寝ていたのかと思ったよ。サナちゃんのことが気に入ったのかな?


「アリシアさん! 私とサナさん、どっちがかわいいですか⁉」


 ナタヌのほうがかわいいから大丈夫だよ。

 そんなに睨まないで?


≪つまり私の顔よりもナタヌさんのほうが好きだと? 死のう……≫


 ロボが死のうとするんじゃないの。

 エヴァちゃんはエヴァちゃんで別格だから、ね?


≪私は別格。つまり正妻≫


 そうは言ってないけど……。


「私はアリシアにとって体だけの女だったのですね」


 ラダリィが顔を両手で覆うようにして悲しそうな声を上げた。


「えっと……ラダリィ……どうしたの? 何か悪いものでも食べた……?」


 ホント急にどうしたの?

 病気なら診てあげようか?


「楽しそうだったので少し話に乗ってみただけです……。真顔で返されると……恥ずかしいです」


 ラダリィの顔が赤い。

 ははーん? そういうことなら先に言ってよー♡


「何ですか、その手は……。近寄らないでください」


「ラダリィは体だけじゃないよ♡」


 全部わたしのものにしたい♡

 わしゃわしゃ♡


「アリシアさん! それ以上はダメです! ナタヌチェックでNGです!」


 ナタヌがラダリィをかばうようにしてわたしの前に立って、通せんぼをしてくる。


「ナタヌー。これは大丈夫なやつなんだよー。ラダリィ本人が言っていたんだからね? 淋しくなったらラダリィの胸を揉んで良いって前に言われてるのー」


「それは……言っていません」


 えー、それに近いことを言ったじゃないのさー。

 わたしが望んだらいろいろしてくれるって!


「アリシアさん、ダメです!」


「ナタヌさんもこうおっしゃっていますから、許可なく揉むのは遠慮してください」


「そうだぞ、アリシア。死にたくなかったら……ラダリィに手を出すのはやめるんだ」


 スレッドリーだけテンションが違う……。

 そんなガチトーンで説得されても……。これはジョークの一環で。


「それに……有り金も全部巻き上げられるぞ……」


 そうだった。

 ラダリィって、スレッドリーが弱っている時にちょっと膝枕をしただけで有り金全部巻き上げる人だったわ。


「私は経済を回しているだけです。何もおかしなことはありません」


 経済って……。


「デュークの懐が潤います」


 デュークさんね。

 ラダリィが推しに推しまくっている執事喫茶で働くかっこいい執事さん。

 でもスレッドリーの持っている有り金って言ったら、相当な金額のはずですよね……それを全部巻き上げて貢ぐのはさすがに……。さすがに何か騙されていません?


「真実の愛です。デューク。私のデューク……」


 ずっと旅に付き合わせているせいで、デュークさんのところに通えていないから、ちょっと精神的に不安定になっている可能性も……。そういえばナマモノでBLを想像したりもしてたよね……。早く王宮に帰してあげないとダメかもしれない……。


「アリシア=グリーン。そろそろ話はまとまりましたか?」


 ノーアさん……たぶんまとまらないですし、どんどん登場人物が増えてカオスになっている気がします。


 もうとっととシャーレさんの夢の中に行きましょう!

 わたしも覚悟を決めましたから!


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