目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

第84話 アリシア、新たな戦闘スタイルを模索する

「そうです。シャーレ殿の夢の中に侵入したのは、イニーシャ様ご本人の意思によるものだと私は考えています」


 ノーアさんがほっぺたを親指ではじいている。

 イニーシャ様の癖、なんでしたっけ? 左手の親指で左の頬をはじくんですか? ヘンなポーズ……でも女神様がやると美しく見えるのかな? わからない。


『オレもノーアの意見に賛成する。よく考えればイニーシャはそういうヤツだった……』


 スーちゃんも同じようにほっぺたを親指ではじいて見せる。

 んー、あんまり美しくないね。


『誰が美しくないって⁉ オレは女神だぞ! もっと敬え!』


 んー、お義姉ちゃんって、『美しい』っていうより、『かっこいい』ほうだからなー。そのポーズもなんだか勇ましく見えるよ?


≪前世のデータベースを検索。ヒットしました≫


 おお、エヴァちゃん、何が見つかったの?


≪カルト的な人気を誇った「カンフー映画」という映像作品に登場する主人公が取るポーズに酷似しています≫


 カンフーエイガ?


≪記録映像をシンクロします≫


 お、おお……。

 これがカンフーエイガ!

 ちょっと映像が荒いけれど、素手でパンチしたりキックしたりする武術なのね。

 おお、なんかちょっとかっこいい。

 あ、これかー。たしかにこのポーズ、ノーアさんとスーちゃんがやっていたのに似ているね。


≪おそらく、イニーシャ様はカンフーの使い手だと思われます≫


 そうなんだ?

 知恵の女神様なのに武術を?


『ああ、イニーシャはオレよりも力が強い。もし戦いになったら、先頭に立って指揮を執るタイプだな』


 知恵とは何か……。


 でも武術っておもしろいね。

 わたしもこういう戦闘スタイルを取り入れていこうかなー。


『王子よ。死んでしまうとは情けない』


「俺は気づかない間にまた死んだのか……?」


 スーちゃんに声をかけられたスレッドリーが、キョロキョロと辺りを見回している。


「ちょっとスーちゃん! まだわたし、何もしてないですからね⁉」


 戦闘スタイルを取り入れようかなって言っただけで、まだスレッドリーを実験台にしたりしてないもん!

 このあと映像をじっくり研究した後なんだからね!


『どうせすぐ死ぬだろ』


 そういうことを女神様が言っても良いんですか⁉

 信徒を守るのが女神様なのでは⁉


『信徒の信仰を集めるのが女神の存在意義だよ』


 そのためには信徒にやさしくしないといけないのでは?


『やさしくしているさ。いつも瀕死のスレッドリー殿下を復活させているだろう』


 まあ……そっか……。


『オレはいつだってやさしいのさ』


 お義姉ちゃんは面倒見が良いし、やさしい……。

 それは否定できない。


『だろ?』


「そろそろイニーシャ様の話に戻ってもよろしいでしょうか? やさしいスークル様」


『おう、オレはいつだってやさしいぞ』


 なぜだかスーちゃんの機嫌が良さそう……。

 そうだった。

 なんでイニーシャ様がシャーレさんの夢の中にいるのかって話だったよね。

 しかもご自分から侵入されたって?


「つまりイニーシャ様とはそういう方なのです」


 そういうとはどういう……。


「単純に興味を持たれたのでしょう」


『ああ、オレもそうだと思う。そう思うとすべてがしっくりくるんだ』


 また2人の中で話を進めるんだからー。

 いつの間にかシャーレさん(ネコミミ美少女)がすっぽり掛け布団をかぶって隠れちゃっているじゃないのさー。


「シャーレさん、シャーレさん。イニーシャ様が中に入ったと言っても、夢の中の話ですから、隠れなくても大丈夫だと思いますよ」


「そう……でしょうか……」


 お耳がぴょこん♪


「わたしはお会いしたことがないですけれど、イニーシャ様も女神様ですから、誰かに危害を加えたりなんかはしな……たぶんしないと思います!」


 リンちゃんみたいに精神的にダメージを与えてくる女神様もいるから、絶対ないとは言えない……。


『ああ、それはオレが保証するよ。イニーシャはシャーレ殿に危害を加える目的で夢の中に侵入したわけではないよ。安心しなさい』


「そう……ですか……。スークル様がそうおっしゃるのなら……」


 さらに顔が半分ぴょこり♪


「危害を加えるわけじゃないとしたら、何の目的なんですか? ノーアさんとスーちゃんにはある程度予測ができていそうですけど?」


 早いところわたしたちにもわかるように説明してくださいよー。


「スークル様、どうぞ」


 またそこで譲るんかーい。


『ああ、イニーシャが夢の中に侵入した目的は……』


 目的は?


『ただの興味だろう』


 興味?


 どういうこと?


この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?