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第80話 アリシア、エヴァメソッドを学ぶ

「くそぉ……。ラダリィにめちゃくちゃ殴られた……」


 ラダリィがすっごい暴力的になっちゃったよ……。

 わたしのVIT≪体力≫を貫いてダメージを与えてくるゲンコツって何……。ラダリィは、ステータス的に言うと、そんなに高いSTR≪筋力≫じゃないのに。


≪アリシア、どうやらアリシアにも知らないことがあるのですね≫


 あ、裏切りロボ!

 朝食の配膳も手伝わないでどこ行ってたのさ⁉

 ラダリィにあることないこと言ったでしょ!


≪あることしか言っていませんが≫


 絶対誇張して伝えたでしょう⁉

 さっきからラダリィにボッコボコに殴られてるんですけど⁉

 頭ばっかりめちゃくちゃ殴ってくるんですけど⁉

 しかもすっごく痛い……。


≪私とラダリィさんは2人だけで過ごしましたし、すっかり仲良しになりましたから≫


 何その顔。

 それでわたしがうらやましがるとでも思ってるの?

 ラダリィはね、わたしのことが好きなの! ロボなんてお呼びじゃないの!


≪私はラダリィさんと一緒に温泉に入ったり、同じベッドで寝たり、食事もお互いに「あ~ん」をして食べたりしました≫


 なんだって⁉

「あーん」も⁉ わたし、そんなことしてもらったことない!


≪どうやら私の勝ちのようですね。ラダリィさんと「あ~ん」をするのは私だけの特権です。悔しいですか?≫


 ……ぜんぜん?

 わたしにはナタヌもいるし?

「あーん」くらい毎日しているし?


≪アリシアはわかっていませんね……≫


 何をさ?

 今、ため息吐かれるようなシーンあった?


≪すでに攻略済みのナタヌさんと「あーん」したからと言って、それがなんだというんです?≫


 ……ダメなの?


≪当たり前でしょう。攻略済みなのですから、もうそれはすなわち、いつだって好き勝手できるということなんですよ?≫


 好き勝手できる……ゴクリ。


≪それに引き換えラダリィさんはどうですか?≫


 ……まだ攻略できていない?


≪そうです! 大して好感度も高くない。そんな相手に「あ~ん」をさせる。この特別感がわかりますか?≫


 と、特別だぁ!

 すごい!

 うらやましい!


≪そうでしょうそうでしょう。2人きりという特殊イベントを経て、攻略完了とまではいかないですが、その一歩手前までこぎつけましたからね。もはやラダリィさんの体は手に入れたも同然です≫


 ず、ずるい……。

 わたしも攻略済みにしてモミモミしたい。……できれば殴られずに。


≪仕方ありませんね。アリシアは私の創造主ですから、特別にエヴァメソッドをほんの少しだけ伝授してあげましょう≫


 エヴァメソッド!

 伝授して!


≪では先払いでいただくものをいただきましょうか≫


 先払いなのー?

 まあいいけど。


 はい、濃縮魔力!


≪ああ……蕩ける……これでまた強くなれます≫


 恍惚の表情とはこのことだ。と言わんばかりに熱っぽい視線を送ってくる。

 いや……わたしにそんな視線を向けられても困るんだけど……。まあね、濃縮された魔力がおいしいのはわかるよ? エヴァちゃん好みの味付けになっているし。魔力の味付けって何だって言われても、煮詰めるとおいしくなるよ、としか言えないんだけど、この感覚を共有できるのは一定量以上の魔力を持っている人だけかもしれないね。


≪十分に堪能しました。それでは満を持してエヴァメソッドを公開しましょうか≫


 よっ、待ってました!

 これでわたしもラダリィのおっぱい揉み放題(殴られずに)だね!


≪まず初めに注意しておくことがあります。ラダリィさんには正攻法で行っても返り討ちにあうだけ、ということです≫


 たしかに……。

 さっきも真面目に「おっぱい揉ませてください!」って言ったら、無言で殴ってきたし。5[アリシア]コインも払うって言ったのになー。ちゃんと頼んでるのにひどい人だよ!


≪ではどうすればラダリィさんのガードを下げられるか≫


 そう、それが知りたい!


≪ヒントはスレッドリー殿下です≫


 スレッドリー?

 あー、わかった!

 あれでも王子だし、人質に取ってラダリィを脅迫しよう!


≪違います。そんなことをしたら、国家反逆罪でたちまち賞金首の仲間入りですよ≫


 うーん、エイミーンさんみたいに隠れながら生きるのはなかなかつらいと思うの。人質はやめておこうかな。


≪賢明です。やるなら行方不明をお勧めします≫


 行方不明?


≪見つからなければ、疑われても白を切ることができますから≫


 なるほどね。

 覚えておこう!


≪アリシアが1つ賢くなったところで本題です≫


 いちいち引っ掛かる言い方だなー。

 スレッドリーがヒント何だっけ?


≪そうです。殿下……のように情けない姿を見せると、ラダリィさんはやさしくしてくれます≫


 な、なるほど……。

 それはなんかわかるかもしれない。

 ちょっと落ち込んでたりすると、頭を撫でてくれたりする……。


≪そして第2のヒントはお風呂場です≫


 お風呂場?


≪シチュエーションですよ≫


 詳しく!


≪お風呂場とは何をするところですか?≫


 それは……お風呂に入る?


≪正解です! お風呂に入るために、まずアリシアはどうしますか?≫ 


 んー、頭から洗う?


≪もっとその前です。脱衣所で……?≫


 服を脱ぐ!


≪そう、服を脱ぎます!≫


 ……それで?


≪わかりませんか? 裸の付き合いですよ。2人とも服を脱いでいるのです≫


 そう、だね?

 でもラダリィは、バスタオルでがっちりガードしているから、なかなか揉ませてくれないよ?


≪そこでさっきのスレッドリー殿下のことを思い出してください≫


 スレッドリー……情けない姿……。


≪そうです! お風呂に入りながら、落ち込んだ様子を見せるとどうなりますか?≫


 ラダリィが慰めてくれる……?


≪はい、体を寄せて、慰めてくださる……裸で。体を寄せ合って。あとはわかりますね?≫


 どさくさに紛れて揉む!


≪大正解です!≫


 エヴァメソッドおそるべし……。

 これはいける気がするよ!


≪そうでしょう。私が実践して成功した体験をまとめたものですから間違いありません≫


 おおー! すぐ試そう!

 ラダリィはどこかなー♪


「何をすぐ試すのでしょうか?」


「あ、ラダリィだ! 良いところに♪」


≪アリシア、待ってくださ――≫


「一緒にお風呂に入ろう♪ 痛い……何で殴るの……」


 無表情で殴られた……。

 お風呂に入ろうって言っただけなのに……。


≪だから待ってと……。おそらく会話を聞かれていましたよ≫


 なん、だって?

 だってこれってナイショ通信なんじゃ?


「何がナイショ通信なのですか?」


 えっ、どういうこと……。

 えっ? えっ?


≪すみません、私は少し用水路の様子を見てこなければいけないのでこれで失礼します≫


 用水路⁉

 台風は来てないから!

 ちょっと! エヴァちゃん⁉ 1人しないで!


「アリシア……」


 エヴァちゃんカムバーク!


「アリシア、ゆっくりお話をしましょうか」


「……はい」


 笑顔なのに……怖い……。


 助けて!


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