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第78話 アリシア、ラダリィチェックに引っ掛かる

 というわけで、スレッドリーが無事(?)正気を取り戻したところで恋バナ大会はお開きとなりましたとさ。

 わたしとナタヌの番は回ってきませんでしたねー。

 まあ仕方ないよ、もうすぐ0時になっちゃうし、そろそろ寝ましょう。


「みなさんを各部屋にご案内して差し上げてください」


 ノーアさんが、ナタヌのほうを見て指示を出す。

 各部屋ね。

 さっきナタヌがベッドメイクをしていたっていう部屋のことかな。


「みなさんこちらに注目してください! お2人ずつペアになり、1部屋を使っていただくことになります! 部屋割りはこちらです!」


 ナタヌはすでにノーアさんから指示を受けていたようで、用意していた部屋割りの表を正面の壁に貼りだした。


 まあ、何のことはない。

 刻印の番号が若い順に、1と2の人がペア、3と4の人がペア、といった具合に200番まで続いているだけ。


【部屋?】


【部屋って何ですの?】


【睡眠?】


【何をすれば良いのかしら?】


【次の遊びかしら?】


【ご一緒ですわね】


【別の方と変わっていただけませんか?】


【$%$#)'N!>+:)E&~*R!"$#%$U<#">~@'】


 睡眠を何かのアトラクションだと思っていそうね。

 魂は眠らない。

 肉体がないし、疲れないからかな?

 まあ、ホムンクルスだって別に疲れるかって言われたら、たぶん疲れることはないと思うんだけど。一応人間らしい生活を体験してみましょうってことで言えば、睡眠欲は食欲と同じくらい大切な欲求ですからね。


「アリシア=グリーン。仮初の体は特別製です。睡眠を必要とするようにできています」


「あ、そうなんですね。人間っぽくて良いじゃないですか」


 いろいろ考えられているなー。

 さすがノーアさん。


「午前0時から6時までの間、睡眠推奨モードに入ります。だんだんと体の機能低下、最終アラートの後、全機能が停止します」


 めっちゃシステマチックだった。

 ぜんぜん人間っぽくない……。


 夜更かししてゲームして、次の日「眠いよー」なんて言うのが人間っぽい生活ってやつですよ? 実際わたしも夜中に料理の研究とかして、次の日ダルいことがけっこうありますし。


「規則正しい生活こそ、良い人間の証です」


 まあそうなんでしょうけどねー。

 機械的すぎるのも味気ないというか……って、シャーレさんがもう寝てる!

 ああっ、体が猫だから! 人間とはリズムが違う!


「ナタヌ、シャーレさんのお部屋はどこ? もう寝ちゃっているし連れて行ってあげないと」


「え~と、え~と、VIPルーム8ですね。地図で言うとここです」


 ナタヌが壁に貼った部屋割り表と地図を指さして言う。


「OK。ありがとー。同室なのは……ウルティマさん⁉」


 ダメダメ!

 男女が同じ部屋なんて許しませんよ!

 ラダリィチェック(代理)のわたしがNGを出します!


「彼らに性別の概念はありません。問題ありません」


「ノーアさん、それはそうかもしれないですけど、今は仮初とはいえ肉体があるんですよ! 体に合わせて気持ちも変化するでしょうし、男女同衾は絶対NG!」


「そういうものですか。ではここの仕切りはアリシア=グリーンにお任せします」


「わかりましたー。んー、この地図を見ると、VIPルームはまだ空き部屋がいっぱいありますし、1人1部屋にしましょう」


「異論ありません」


「じゃあシャーレさんはVIPルーム32に変更します。ウルティマさんもそれで良いですね?」


 一応、ウルティマさんが王様だし、了解を取っておこう。


「おいらはかまわないでやんす」


 ウルティマさんが即答する。

 何も気にしていなさそう。

 ちょっと2人の間に、ラブロマンス的な期待をしていたんだけど、まだそういう感じでもないのかな。信頼し合っているのは伝わってきていたんだけどなー。もうちょっと様子見しよう♪


「あ、ついでにわたしの部屋もVIPルーム2からVIPルーム33に変更しますね。ナタヌもVIPルーム3からVIPルーム34へ変更で」


「は、はい! 修正します!」


 ナタヌが直接、壁の部屋割り表に変更内容を書き入れていく。


「そうなると俺だけVIPルーム1に取り残されてしまうんだが……」


 淋しそうに呟くスレッドリー。

 そりゃそうでしょ。


「スレッドリーと隣り合わせの部屋なんて嫌だもん。ラダリィもまだ到着していないのに、何かされたら怖いし?」


「何もしないが⁉」


「万が一ムラムラして襲われたら嫌だし?」


『アリシアのことを襲ったら、死ぬのはスレッドリー殿下のほうだと思うが』


 そういうことじゃないのー!

 気持ちの問題なの!

 襲われるかもって怯えながら寝たくないの!


「アリシアさん! わわわ私が同室でお守りしましょうか⁉」


 顔が沸騰して爆発しそうなほど真っ赤になったナタヌがとても魅力的な提案をしてくる。


「良いね♡ そうしよっか♡」


「俺だけ仲間外れ……」


「しっしっ。男は離れて寝てなさい。あ、ウルティマさんをVIPルーム2に変更するのも忘れてた」


 男は端っこに隔離!

 ノーアさんのVIPルーム10は……別にいいかな。人間じゃないし。


『アリシア』


「んー? スーちゃんなーに? あ、スーちゃんも部屋が必要?」


『違う。オレに部屋は不要だ。そんなことよりもだ。ラダリィから伝言だ』


「えっ、ラダリィから? なんだろ?」


『「ラダリィチェックです。ナタヌ様との同衾は不許可です。そちらに到着し次第、私がアリシアと同室となり、監視をいたします」だとさ』


 なんだって……。

 ラダリィチェック(遠隔)が存在していたとは……。


 無念。


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