「終わったな。」
「ああ。放っておいてもロクな事にならないと踏んでトドメを刺したが、問題は無いだろう?」
「別に構わないよ。だって…………」
俺はそこで一度言葉を切ってから、細切れにされたマグジールの死体だった物に近付き、埋もれかけたそれを手にして持ち上げる。
「あいつ、本体じゃなかったからな。」
俺が手にした物……、それは遠隔操作で人形を操る為の核だ。
奴が最後に変な余裕を見せたのもコレが理由だった。
フレスもそれが分かっていたから生け捕りにする事なく息の根を止めたのだ。
たとえ殺さずに捕まえたとしても、逃げられるのは分かりきっているのだから。
手にした核に何か仕込まれてないか観察し、安全である事が分かってからそれを懐に仕舞う。
帰ってからフェンリル達にも見せた方がいいだろう。
「謎は増えたが、収穫にもなったな。」
その言葉に俺は頷く。
「そうだな。確かなのは、奴は強化魔族の件に絡んでいて、私達にもしっかり関係のある話でもあるという事だ。」
強化魔族に死んだはずのマグジールの出現。
そして、奴が言っていた『器』…………。
これらが何処でどう繋がるかは現時点では何も分からないが、それでもれっきとした収穫だ。
向こうからわざわざヒントを持ってきてくれたと、プラスに考えるべきだろう。
「取り敢えず、帰ろうぜフレス。回収した武器をアリスに渡して、今日あった事をアイツ等にも伝えないと、な?」
その言葉にフレスは頷いたあと、彼は純白の鷲へと姿を変えて、俺達はスノーヴェール雪山を後にするのだった。
◆◆◆
翌日の夜。帰りは何事もなくファルゼア城へと辿り着く事が出来た。
最近の活動拠点となってる来賓室へと向かうと、既にフェンリル達はソファーで寛いでいて茶菓子を摘んでいた。
「帰ったか。予定通り3日の旅じゃったの。」
「お帰り、2人共。色々話はあるでしょうけど、今は休みましょう?」
「お帰りなさい。アルシアさん、フレスさん。大変だったと聞きましたが、大丈夫だったんですか?」
アリスが心配そうに聞いてくるので、問題ないと返して、彼女の側に立つ。
「ただいま、みんな。さて、アリス。早速だがスノーヴェール雪山でアリスに合う武器を持ってきた。俺はただ回収しただけだから、礼ならフレスに言ってくれ。」
そう言うと、アリスは今度は慌てたように首をブンブンと横に振った。
「アルシアさん達には素敵な杖もいただきましたし、銃まで用意してくださいました。もう、何てお礼を言ってよいのやら……。」
アリスが俺達に深々と頭を下げるのを止めた後、俺は収納魔法からフレスに渡された銃を一挺取り出して、アリスに渡した。
「ありがとうございます。………ところでアルシアさん、フレスさん。」
アリスは渡されたそれを見て、最初は嬉しそうにしていたが、段々と引き攣った笑顔に変えて不安そうに俺達の名を呼ぶ。
フレスはいつも通りだが、予想通りの反応に俺は苦笑する。
見ると、フェンリルもニーザも同様だ。
「………何だ、アリス。」
「この銃、とても神々しいんですが……なんて言うか、その…………アルシアさんにいただいた、
「ああ、そうだ。今すぐ用意出来て君にピッタリな物がそれしか無いんだ。」
アリスは手渡された、金色の装飾の入った純白の銃を見ながらカタカタ震えて恐る恐る聞いてくる。
俺が何かを言う前にフレスが出てきて、説明を始めた。
「受け取ってくれ、リアドール君。
「はわっ!?」
アリスは限界だったのか、その名を聞いてぴしりと固まった。ニーザとフェンリルも、アリスの反応がおかしくて笑いだしてしまった。
しかし、俺は今笑う訳にもいかないので、堪えながら伝え聞いている話の範囲を説明する。
「七元徳……、俺の持つ大罪の魔装具の対……又はそれに類する関係にある天聖具と呼ばれている物の一つだ。それぞれが神や高位魔族に匹敵すると聞いているよ。その銃の弾丸は使用者の神力によって、自在にその力を変えるらしい。だから大事に使ってやってくれ。」
「………………きゅう。」
俺が昔、聞いたことのある内容をそのまま話すと限界に達したらしい。
アリスは短い鳴き声を上げて気絶してしまった。
「アリス!?しっかりしなさい!」
「アリス、起きよ!たかだかアーティファクトの一つで気を失うでない!?」
気絶したアリスに笑いながらもニーザ達が心配して駆け寄った。
いや、フェンリルよ。俺が言うのもアレだが、アーティファクトなんて一人で2つ3つ持つ様な物ではないぞ、本当に。