「………それでその後、俺がゴネるにゴネまくって、トチ狂ってアダムの書を自分と同化させて、アダムの書が暴走。炉心にはなるが到底他の制御が出来ない状態になったから、フェンリルが仕方なく付き合ってくれて、大龍脈の修復と、俺がアダムの書と完全に同調して出てくるのに、結局1000年も掛かったっていう………」
などと当時の事を話すと、案の定、今を生きる者達まで白い目を俺に向けていた。
「あの、つまりアルシアさんは………」
「正しく災い起こしで破壊神だったんだね……。まさか、大規模侵攻のあとに、もう一度世界が滅びかけていたとは……」
「…………いやー。」
「褒めておらんわ!!!」
あの時と同じ様に誤魔化そうとして、あの時以上の人数に怒られた。悲しい。
「まあ、俺が1000年も眠りこけていたのは置いとい………むぐ!?」
「置くでない。妾まで汝の長い惰眠に付き合わせられたのだぞ?」
この手のお説教が一番効くと知ってるので、またフェンリルの胸に顔を押し付けられた挙げ句、こめかみをグリグリとされる。
宮廷魔導士の女性どころか、護衛の騎士まで怒りと妬みと殺気の視線を飛ばしてくるので、そろそろ解放してほしい。割と本気で怖い。
加えて、ニーザの全身を串刺しにしでもする様な恐ろしい殺気もある。
こちらに関しては後々、別の意味で怖い目に遭うのが確定したと言ってもいいだろう。
「何か言うことは?」
「俺が悪かったので頼むから止めてください。」
「よろしい。」
ようやく離してくれたので、落ち着く為に息を整える。
文句の一つも言いたいが、こればっかりは俺が悪いので何も言えない。
「一つ聞くんだけど、本当に1000年もかかる作業だったのかい?」
「残念ながらな。アダムの書は炉心にはなりはするものの、強すぎて命令式を単体で受け付けなかったんだよ。俺どころか、その辺に長けたニーザが何をしようとだ。んで、無理矢理俺が同化して命令式無しで使おうって方向に持ち込んだ。」
「………無茶苦茶だね。そんなに強いのかい?アルシアの使うアーティファクトは。」
「俺のじゃなくて、この世に存在する全てのアーティファクトがだ。神器だろうが魔装具だろうが天聖具だろうが、それぞれに優劣はあっても、それでもその一つ一つが強力だ。まず壊れる事はないが万が一、壊れようものなら大陸くらいは軽く消し飛ぶ。平原なんか比じゃない。」
「た、たい―――――――!?」
俺が威力を言っただけで、聞いていたディートリヒが青褪めた。アリスはそんな物を2つも持ってるという事を知って気絶しそうになり、フェンリルに抱き留められた。
「因みにアリス。アーティファクトは神が総出で壊しにでもかからなきゃ到底破壊できないから安心しろ。人間じゃ間違いなく壊せん。」
「そ、そうなんですね………、よかった………。」
それを聞いてアリスがホッと胸を撫で下ろす。
彼女の場合、必要であれば聖杖ですら投げそうだからな。
「取り敢えず、アーティファクトの話は長くなるから、また今度だ。フリード達にもお願いしてるが、俺達も手分けして調査を………、」
そう言いかけた時、部屋の扉が勢いよく開いた。
フリードの護衛の騎士の1人だった。何事かと全員そちらを見ると、彼は青褪めた表情で報告をする。
「陛下!ヴェルンドの村のギルドより連絡です。異常な気配を持った魔族が大量に出現したとの事です!何でも、暴走している様な状態だと!」
「暴走、まさか…………。」
「アルシア、調査は残念ながら後回しじゃ。まずは……、」
「ああ。ヴェルンドまで向かうぞ。」
マグジールの出現に恐らくは暴走魔族の出現………、立て続けに起こる事態にいい知れぬ不安を抱きながらも、俺とフェンリル達はすぐにヴェルンドの村に向かう準備を始めたのだった。
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第3章「大規模侵攻終結後の話」・完