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第25話「ヴェルンドの村」


ファルゼア王国を出た翌日、俺達は無事にヴェルンドの村へと辿り着いた。

初めて来る場所なのだろう、アリスは俺達の隣で興味深そうに目を輝かせていた。


「ヴェルンドの村に来たのは初めてなんですけど、溶岩とかを利用してるのに全然暑くないですね。むしろ、涼しいというか……」

「ヴェルンドの村のモットーと言うべきかな。『素晴らしい物は快適な空間があってこそ生まれる』ってのがあって、工業区とか居住区とかは基本的には彼らが作った魔道具で快適な気温になってるんだ。溶岩なんかの熱エネルギーもしっかり生産、生活に利用してるから、実は1000年前から王都よりも発展してるんだよ。」


見たところ、さすがに大規模侵攻の影響は受けているらしく、当時と比べると……、な部分はあるが、それでも発展している部分の方が大きい。

変わり具合を眺めていると、フェンリルがヴェルンド支部のギルドを見つけて声を上げた。


「ギルドは………あっちじゃな。2人とも、話を聞きに行くぞ。」

「分かった。ニーザ、そろそろ降りろ。」

「やー………」


相変わらず抱えられながら甘えん坊モードのニーザに声をかけるが、やはり退く気は無いらしい。諦めてニーザを抱え直し、先に歩いていくフェンリル達の後を追った。




◆◆◆


「お話は伺っております。アルシア様、フェンリル様、アリス様………それと、ニーズヘッグ様ですね。」


俺にしがみついて離れないニーザを見て困った様な、微笑ましい物を見るような、そんな曖昧な笑顔を浮かべる女性に微妙な顔で「そうだ。」と返すと、受付の女性はそのまま裏へ引っ込み、暫くしてから「中へどうぞ。」と声を掛けられたので、そのまま奥の部屋へと向かう。

席へ座る様に女性に促されたので、全員で座ると、女性はギルドマスターを呼びに部屋を出ていってしまった。


因みに、隣の席に座らせようとニーザを剥がそうとしたのだが無理だったので膝の上にいるままだ。

微妙な気分でニーザを見下ろしているとノックの音が響き渡り、ギルドマスターの男性が入ってきた。


「初めまして。ヴェルンド支部のギルドマスター、オルフェンです。皆様のお話は陛下より聞いております。遠路はるばる、よくお越しくださいました。」


ギルドマスター、オルフェンは俺にしがみついているニーザを見ても動じる事なく礼をした。

フリードから事前に話がいってたようだ。

俺達はそれぞれ、自己紹介をしていく。


「貴重な時間を割いてもらってすまない。早速だが、村に出てきた魔族の事を教えてもらっていいか?それと………まあ、大丈夫だと思うが、被害状況も。」


そう言うと、オルフェンはやはり分かっていたか、と苦笑した。


「えー、まず被害状況ですが、お察しの通りほぼ0と言っていいでしょう。ここにお住みのドワーフの方々は、我々ギルドや王国の兵士達より遥かにお強い。」


困った様に笑うオルフェンに、俺も笑って返した。


「彼らの強さは昔からだよ。実は被害状況に関してはあまり心配してなかったんでね。問題は……、」


俺が言いかけると、オルフェンは先程までの表情を引っ込めて、真剣な面持ちで口を開いた。


「……出てきた魔族の事ですね。そちらに関しては等級とは別に、2種類確認されています。王国から通達のあった、皆様の言う………暴走魔族と、強化魔族の2種類です。」



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