「ロキの遺体を探してるのかな?」
『――――っ!!?』
いる筈の無い第三者の声に俺達は瞬時に反応して武器を構えた。
コツ、コツと歩く音がする方向を睨むも、苦笑混じりの声がまた響く。
「心配しなくても、ボクは敵じゃないよ」
透き通るような、それでいて何処かあどけなさの残る声を聞きながら一瞬だけニーザに視線を向ける。
俺はこの声に心当たりは無い。
それはニーザも同じ様で、前方を睨みながら首を横に振っていた。
コツ、コツ、と階段を上る音が近付いてくる。
俺達が階段に注視していると、声の主は暫くして階段を上り終えてその姿を現した。
「なっ…………」
「……………嘘」
俺とニーザは手にした武器を下ろし、目を見開いて動揺を露わにした。
目の前にいるのは着ている物も、髪の色も、何もかも白い少女だった。
違うのは耳に付けた
恐らくは彼女がアリスが言っていた少女、シギュンだろう。
しかし、俺達が動揺した理由はそこではない。
何故なら、ここにいる人物が
「お………前……」
「ウソ……、なんで………」
俺は有り得ない出来事に動揺を隠せないでいるし、ニーザに至ってはボロボロと大粒の涙をその赤い瞳から流していた。
そんな俺達を見て、
「
「………どういう、事だ。なんでお前が此処に…………」
そこでシギュンはその顔を真剣な物に変えて口を開いた。
「君達の言う鎧の魔族が本格的に動き出した。彼の目指す先は天蓋の大樹の最上層……。そこに戯神ロキの遺体が封印されている。今から普通に向かっても間に合わない。だから、
彼女はそう言うと両腕を前方に広げ、俺とニーザを囲む様に転移魔法陣を起動させた。
全員という事は、恐らくフェンリル達も………。
転移陣が本格的に起動を始めるが、転移までは僅かだが時間がある。
俺はシギュンを見た。
「……ちゃんと説明してくれるんだろうな?」
「心配しなくても、龍脈で身体を回復させてから君達のところに行くよ。ファルゼア城でいいんだよね?」
やはり無理をして転移魔法を使っているらしい。真っ青な顔でそう答えるシギュンを見て「そうだ」と返す。
「無理はするなよ。後で……、必ずだ!」
「分かってる。ボクも話さなきゃいけない事があるし、やらなきゃならない事が沢山ある。それまでは死ねないさ。だから……また後で」
無理に笑う少女の言葉と共に視界が白く染まり、俺とニーザは転移魔法で飛ばされた。
―――――――――――――――――――――
第2章「超大型神器・遺跡図書館トート」・完