灼熱に包まれた最上層、そこは無数のツル、枝が壁を覆っていた。
炎は目の前に佇む存在を挟んでその奥の壁を中心に燃え広がっていた。
その奥の壁だけが強く赤熱し、一際強い光と力を発している。
(たぶんだけど、あそこにロキ様のご遺体が…………)
その時だった。左右、正面から何かが飛来し、それが私目掛けて襲い掛かってくる。
「やっぱり、待ち伏せ………!」
「アリス、正面は任せた!!」
「はい!」
そう返事を返し、私は構えた聖杖で正面の攻撃を迎撃し、フェンリルさんとフレスさんが左右からの攻撃を打ち払う。
迎撃された3つのそれは私達の正面にいる敵………、鎧の魔族の左肩に接続された。
右腕に比べて細い3本の腕が威嚇するように広げられ、それを見てフレスさんが呟く。
「アルシア達にやられた損傷を治すついでに強化したようだな。だが、完全に修復が終わったわけでもないらしい」
抜き放った刃を構えながら、フレスさんはその鋭い瞳を鎧の魔族の左肩へ向けた。
フレスさんが言う通り、一見治ったように見えているが、その肩の部分は胴体目掛けて大きなヒビ割れを覗かせていた。
「その様じゃな。それに…………」
言葉を返しながらも、フェンリルさんは私と鎧の魔族を見ながら氷の槍を生み出して構え、鎧の魔族もまた動き出す。
鎧の魔族の左腕、15本の指先全てが私に向けられ、一斉に私目掛けて赤い光線が放たれた。
「やはりか………!」
「惨華………!」
フレスさんは赤い光線が放たれる直前、私の前に立って格子状の斬撃を放ってその全てを斬り落とし、鎧の魔族に駆けていく。
鎧の魔族は迫るフレスさんから距離を取り、全身から爆炎を撒き散らしながら足場を蜂起させた。
天蓋の大樹内部のツタや枝に更に火が燃え移り、遅れて膨大な量の岩の刃の波が私を襲う。
「また………!」
再び狙われている事に気付いて私は後退しながら腰のホルスターから聖銃を抜き、威力特化の一撃を撃ち出して刃の波を破壊。
追い打ちとばかりに第二波が来るも、それはフェンリルさんが凍結領域を発動して沈静化させてくれた。
フレスさんは燃え盛る焔を突き破り、逃げる鎧の魔族を追いながら声を張り上げた。
「フェンリル!リアドール君を守れ!!」
「分かっておる、フレス!前衛は任せたぞ!!」
それに応えるようにフレスさんが縮地で距離を詰め、鎧の魔族がそれを迎え撃つ為に四本の腕に一振りずつ火を噴く岩の剣を握る。
視線を感じ、私はぞくりとする。
フレスさんと対峙する焔を纏う黒い鎧の怪物………、バイザーの下で爛々と輝く赤い眼光がずっと私を捉えていた。