『りす……………』
遠くから何かが聞こえる。いや、呼んでいるのだろうか?
少しだけ意識が浮上する。
『すっ…………、アリス………ッ』
『起き………、アリスッ!』
「ん………………」
今度はしっかりと聞こえた。
ちょっとだけ幼さの残る男の人の声と聞き慣れた声………フェンリルさんと、たぶんアルシアさんだろうか。
ゆっくりと目を開くと、予想通りアルシアさんとフェンリさんが心配そうに私の顔を覗き込んでいた。
「アル…………シア、さん………?」
「アリス!良かった………」
「此処は……外?私…………わっ」
「これ、無理するでない。此処は外だから、もう安心してよい」
ぼんやりした頭で起きようとしたところでフェンリルさんに肩を押さえられて止められた。
どうやらまた膝枕されているらしい。
首だけ動かして辺りを見渡すと、たしかに外にいた。
あの時、転移するより前に鎧の魔族の技が発動したはず………。
回らない頭でどういう事だろうと考えた時だった。
「ちょっとした力技でね。ボクが転移を速めたんだよ。まあ、本当にギリギリで衝撃までは殺せなかったんだけど」
「え………?」
その声を聞くのは2度目。けれど、どうしてこんなところで?
声のした方を見る為に上半身だけを起こすと、そこにはあの時の白い少女、シギュンがニーザちゃんとフレスさんに支えられながら立っていた。
「久しぶりだね、アリスちゃん」
幾分か青い顔で、彼女はこちらを見て微笑んだ。