「その後、統治者兼グレイブヤードの管理者としてボクが
そう言って、ロキはその目を驚いているフェンリル達に向ける。
「あとは君達が知ってる通り。ボクは君達に命じて、増えすぎて人間だけでは対処しきれない数の魔族を狩り続けてもらった。そうする事で悪神の力は大きく削られ摩耗していき、順調に行けばそう遠くない未来に悪神は消滅……するはずだった。けれど、ある時封印が弱まってね。再び顕現するのが時間の問題となったんだ」
「ロキ。アンタなら殺せたんじゃないの?」
「何も無ければ。でも、悪神は初めからボクを殺して身体を乗っ取るつもりだったらしくてね。絶対にボクじゃ勝てないようになってたんだ」
「それでも、俺達に言ってくれるなりしてくれれば………」
血溜まりに沈むロキの姿がフラッシュバックし、そう言うも、ロキは静かに頭を振った。
「神界から口止めされてたからね。認識された神はその存在、力を大幅に高める。知覚する者が増えれば増える程、それは悪神の力になってしまう」
「それでお前はマグジール達に殺される事を………」
「ファルゼアで一番強いボクが勝てない以上、たとえ君達でも、素のまま挑んだところで勝てる訳がない。だからボクとスルト、トートはある計画を立てたんだ」
ロキは皆が見守る中、一呼吸置いてから口を開いた。
「まず、トートにはボクの体の隠し場所に関しては答えられないように開示情報制限をかけてもらった。悪神が封印を破っても、すぐに動けないようにね。その後、予定通りボクを殺しに来たマグジール達にボクは殺された」
「その遺体を、予め待機していたスルトが天蓋の大樹に封印した……」
「そう。そこからボクの死をトリガーに大規模侵攻………正式名称、グレイブヤード最終防衛機構が発動。溜まりに溜まった負の念を強制排出、復活するであろう悪神を君達だけでもどうにか倒せる規模まで弱体化を図った…………んだけどね」
そう言いながら、ロキは嫌な笑みを浮かべて俺を見た。
そして、その意味を察したフェンリル達まで微妙な目線を俺に向ける。
俺は何も言えない。何故なら、今も向けられているロキの「本当にお前はやってくれたな………」とでも言いたげな視線の意味が分かるのだから。
「………………」
「アルシア。君がやらかしてくれたお陰で、ボク達………名もなき悪神含めた全ての者の計画が狂ったんだよ」