「アルシア。君があの日やらかしてくれたお陰で全ての計画が狂った。暴食の魔装具と神殺しの力で大龍脈諸共、ルーリア平原を盛大に焼き払ってくれたお陰でね」
からかう気満々のロキの笑みから逃げる様にそっぽを向くと、ロキは一旦、その笑みを引っ込めてフェンリル達に向き直った。
「あの時、悪神は封印を破り這い出ようとしていたんだ。でも、それはアルシアが平原を吹き飛ばした事で失敗に終わった。笑っちゃう話だよね。自分の復活を阻む者はいない、今度こそ地上に現れてファルゼアを呑み込もうと封印から出てきた矢先、いきなり身体を吹き飛ばされて自分から封印の中に籠もる羽目になったんだから」
「………いて?!!」
「アンタはなにそんな得意げな顔してんのよ……!」
何となく冗談で「良かったじゃんか?」と調子に乗ってみたが、隣にいたニーザに引っ叩かれ、それを見ていたフェンリルとフレスは調子に乗るからだと溜め息を吐き、「相変わらずだな……」と言いたげにロキは苦笑する。
「…………とにかく、悪神の計画は大幅に狂った。それも致命的に。封印跡に叩き落された挙句、異界の魔族の暴食の牙と神殺しなどという、神にとってはこれ以上ないほどの猛毒が撃ち込まれた。しかも器にする予定のボクの身体は所在不明だし、手元に残ったのは殺害したスルトの劣化した神核のみ。オマケにアルシアとフェンリルが眠りにつく時に貼った術式のお陰で彼は君達が大龍脈を完全に修復するまでの間、ずっと身を削りながら待つ事しか出来なくなった」
「それでも、その悪神は生き残ったんだね?」
そうフリードが聞くと、ロキは残念そうに頷きながら答える。
「ギリギリ持ち堪えた。とはいえ、もう自身で動く程の力を殆ど持っていなかった。そこで彼は残った力で強化魔族、暴走魔族を作り出してニーザ達を撹乱しつつ2つの災厄……、尖兵を生み出した。自身の命の一部を核としてアルシアに憎悪を抱くマグジール・ブレントを複製死体として作り出し、スルトの神核をベースに遺体格納も兼ねて鎧の魔族を作り出した」
そこまで話してから「あとは君達が知ってる通りだね」とロキは言い、1人ずつ俺達の顔を見た。
「悪神は最後の力を振り絞って動き出し、ボクの身体を奪い姿を消した。あと数日もすれば彼は地上に現れる。倒すなら、今をおいて他にない。場所は………」
「グレイブヤードだろ。どうする?動くなら今すぐにでも………」
動き出そうとする俺を「いや」と
「明日の朝一番に出よう。やらなきゃいけない事がある。まずはフェンリル、ニーザ、フレスから。という訳で、君達には悪いけど………」
「内密な話、という訳だね。それなら僕達は隣の部屋に移動しようか。」
「ああ。じゃあロキ、終わったら呼んでくれ」
それだけ言い残し、俺達は一度部屋を後にするのだった。