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26 自白

「恩人でも裏切られるのですか?まあ、あの信号を出したキミですから、驚きはしませんよ」

こんな時、ウィルフリードはよくも挑発的の発言を……

「てめぇぇぇ――!!!」

ケンの体から狂った怒鳴りが爆発した。

「呪ってやる!!人の皮を被った悪魔め!醜い、汚い泥の塊!てめぇの国、てめぇの一族、てめぇの全ての仲間を呪ってやる!!」

「やれやれ、相当憎まれたようですね」

ひどい罵声を浴びながら、ウィルフリードは気楽に笑った。

「それは当然よ」

思わず口を挟んだ。

「彼を陥れることに関して、貴女も手伝ってくれたでしょ?一緒に呪われてますよ」

「構わない。あんたの本質が暴かれれば十分だ」

私なら、もうとっくに呪われている。

「姫様を人質にしたところで逃げられると思ってるの?あたしたち海賊を舐めんじゃないよ!」

カンナは鼻で笑って、杖でケンの顔を指した。

「ふん、いずれこうなると知っていた。てめぇらは信用出来ない奴だからな!だから……」

ケンに目から、更に凶悪な光が飛ばされた。

「賭けもの姫様の命ではない、彼女が持っている青石だ!」

「?!」

「俺の言う通りにしないと、姫様を連れて海に飛び込む、青石と共に!どうだ、欲しいだろう、青石を!」

ケンの激しい声で、部屋の空気さえも震えたような気がした。

「青、石……」

その単語を繰り返したら、ロードの目から光が消えた。操られたように硬直な動きで足を踏み出し、ケンと姫様に手を伸ばした。

「欲しい、青石が、欲しい……もう一度、俺の元に……」

「やはり貴様か……!」

カンナの拳を握りつぶす。

「ロードに何をした?!!」

やはり、ロードに呪いをかけたのはケンなの?

「俺の元……」

「目を覚ませ!!クソ野郎!」

カンナは平手でロードの顔を打った。

「……カンナ、姉さん?俺、どうした?」

目の焦点が戻ったけど、ロードはまだぼんやりしている。

カンナはケンに向かって、ケンに負けないくらいの激怒な声で叫んだ。

「ロードは青石なんかに狂い始めたのは、貴様から青石の話を聞いてからだ!」

緋色の女海賊の怒り姿は燃える炎に見える。

「俺は、青石に狂っている?」

「まだ分からないのか! あんな価値のないボロ客船を襲う理由はどこにある?!前もそうだった。護衛艦に敵わないと知っていても、無理矢理に稀な宝石を乗せた商船に手を出した。どれだけ損失したのか分かってるのか?!お前の船長としての能力を疑う野郎はごろごろでてくるんだ!」

「俺、俺は……違う、そんなはずが……」

カンナの怒鳴りに反応して、ロードの体は軽く左右に揺れる。

彼は片手を上げて、自分の掌を見つめる。

「そうだ……なぜだ?なぜ青石が欲しいんだ?俺たちは、海賊だ……神力だの奇跡だの信じるもんか。青石なんか、どれだけの力のあっても俺たちと関係ないはず……」

「頭の冴えたお前はどこに行った?!船のことを誰よりも考えているお前はどこに行った?!青石なんかのために、まだどんなことをやらかすつもり?!公爵家の姫様を殺し、帝国に喧嘩を売るのか?!」

「違う、俺は、俺は、青石なんか……」

ロードの顔は青白になり、額に汗が滲み出た。

「違う」

ピンと揺れが止まり、ロードは今ままでのない重い声を出した。

「青石は、必ず手に入れる……!」

黒い影!

今、確かに見た。

ロードの背中から黒影が浮かび上がった!

「なるほど、それは呪いの源か……」

藍は呟きながら一歩前に出た。

「無駄だ!」

その時、ケンはまた大声を立てた。

「呪いの種は奴の心に深く植えている」

「呪いの種?!それはなんだ!」

カンナは同じくらいの大声で聞き返した。

「偶然で、俺はある魂に出会った。彼は青石の所有者だった。その石の力でほしいものを全てを得た結果、死んでいてもその石を手放すことができなかった。彼の執念は呪いにも近い存在となり、世を彷徨っていた。俺は故郷の秘術で彼を『種』の中に封じた。万が一の時に備えるためにな」

「貴様、ロードに……」

「そうだ、初めからてめぇらを信用していねぇ。残虐な海賊を相手に、俺は切り札が必要だ。だから、その種を燃やし、灰をロードの食事に盛った。狙い通り、彼はあの執念の宿主となり、青石への欲望が燃え上がった。青石を手に入らない限り、その狂い執念は彼に永遠に付き纏う!」

「貴様……!!」

「動くな!」

ケンは姫様の頸を引き絞める。

「お嬢様!」

「だ、大丈夫……殺しては、だめ……なら、きっと……みんを……」

苦しみを耐えて、姫様はかろうじて幾つの単語を吐いたけど、何を伝えたいのか全く分からない。

藍に答えを求めようとしたが、さっきまで飛び出そうとした藍は、なぜか自然な立姿に戻った。

「これはさすがやりすぎますね」

ウィルフリードは緊張感なさそうに嘆いた。

「あんたに文句を言う立場があるの?」

白目で彼を睨んだ。

「彼のこれからの人生のために、少しお仕置きをしたかっただけです。でも心配はいりません。もうすぐあれが来ます」

「あれ」は? 

まさか、先の信号のこと……

「怨念よ、砕け!!」

ケンは叫びながら、姫様を抱えて船長室を飛び出した。

「逃がすもんか!」

カンナはその後を追った。

ロードは黒影に包まれたまま、意識を失ったように佇んでいる。

今は彼に構う時間がない。

私もカンナの後を追って甲板に向かった。


「奴隷をすべて解放しろ!船をくれ!水と食糧、航海図もな!」

ケンは姫様を人質にして、垣立にくっついている。

海風は姫様のドレスと金色の髪を伸ばし、松明の光はケンの狂った顔を照らす。

周りにいる海賊たちはその突然な出来事に呆気に取られた。

「勝手に動くな!」

カンナは命令を下した。

「彼の言う通りにしてやれ。船、水と食料の用意を、そして、奴隷たちをここに連れてこい」

「姉貴、これは一体……」

「船長の命令だ。さっさとやれ!」

前に出た中年海賊に、カンナは目配せをした。

「お前ら、ぼうっとするな、ついて来い!」

心得た中年海賊は雑魚たちを率いて船室に降りた。

カンナも分かっている。

これ以上ケンを刺激してはいけない。

でも、海賊は大人しくケンの条件を呑むとは思わない。

このまま対峙し続けたら、姫様が危ない。

チャンスを作らなければ……

心臓の鼓動を抑え、長い息を吐いてから、ケンに一歩を踏み出した。

「姫様は青石を持っていることを、本当に確信できるの?」

「?!」

「私の名はフィルナ・モンド。聞いたことはある?稀世なお宝を狙い、『三日月』という名の盗賊がいる。その盗賊は、今夜、あの客船に乗っていたのよ」

「盗賊、てめぇが……?!」

思った通り、ケンは私を「三日月」に連想した。

ケンだけではなく、ウィルフリードとカンナも意外そうな表情になった。

藍は、いないの? 

どこかに隠れて、姫様を救うチャンスを狙っているのでしょうか。

だったら、いいけど……

「『三日月』は秘宝青石を見逃すようなことをすると思う?サン・サイド島からずっと追ってきたのよ。目を付けたものは、絶対手に入れる主義だから」

「てめぇは、青石を狙う……?」

まだ少し疑っている様子だ。

普通なら、私のような女子を盗賊に連想する人はいないでしょう。ウィルフリード以外に。

「忘れたの?私は、あの人とグルーだったのよ」

ウィルフリードに指さした。

「奴はきれいな皮を被っている極悪非道な悪党の中の悪党だったら、私は有名な盗賊でもおかしくないでしょう」

「そこまで悪口を言われるのは初めてですね」

若干の雑音を無視した。

「青石はもうとくに手に入れたのよ」

「何だと?!」

ケンは目を大きく張った。

右手をあげ、人差し指につけたサファイアの指輪を見せた。

「そう、これは青石よ」

「!!」


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