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第11話 ある日、森の中、ゴブリンに、出会った

 昨日と同じ森へと到着した。


 ステータスを装備したせいか、それほど疲れることもなく、昨日の半分くらいの時間で着くことが出来た。

 どんどん暗くなっていってたから、時間がかかったように感じていたけど、昨日の帰り道もこんな感じだった気がする。


「ねえ、タマちゃん。この森ってスライム以外の魔物っていないの?」


「いえいえ、奥に行ったら、強い魔物とかいっぱいいますよ。私は行ったことないですけど…」


 まあ、タマちゃんが行ったことあったら、レベル3どころじゃないだろうしね。


「そっか、スライム以外の魔物とも戦ってみたかったんだけど」


 昨日スライムを倒した時に貰えた経験値はたったの5。

 これだと、タマちゃんと同じレベル3になるのに、あと21匹のスライムを倒さないといけない。

 焦ってレベリングして大怪我するとかは避けたいけど、ある程度のレベルにしておかないと、何かあった時にそれこそ対処出来ないからね。


 それに、他の魔物からもステータスがドロップするか確認しておきたいし。


「それだったら、この辺でもゴブリンとかの弱い魔物でしたら出てきますよ」


「ゴブリン?それって、俺たちでも倒せる?」


「大丈夫です。私は故郷の森に出るゴブリンを倒しまくってレベルを3にしたんですから」


 襲い来る異形のゴブリン。

 それを矢で打ち抜いて、次々と倒していく猫娘。

 断末魔の叫びを上げながら血の海の中で死にゆくゴブリン。

 それを見ながら高らかな勝利の雄叫びを上げる猫娘。

 異世界ファンタジーっぽいけど、何か嫌な想像をしてしまった……。


「私、ゴブリンを射抜くの得意なんですよ」


 そんな、「私、お祭りの射的得意なんですよ」みたいに言われても…。


 そんな話をしていると、背後の茂みから突然何かが飛び出してきて、振り向いた俺と目があった。


「ギギ?」


 そいつは、人間の子供くらいの背丈で、全身が緑色。

 大きな目と口、耳も長く横に伸びている。


 坊主頭の中心に縦に生えたモヒカンのような髪型で、腰蓑こしみののようなもの一つしか着けていないほぼ全裸のようなそいつは、驚いて硬直したままの俺の顔をじっと見たまま不思議そうな顔をしている。


 多分、こいつがゴブリンだ。

 見事なフラグが立ったな。


 そいつは俺の頭を見たかと思うと――


「ギギ!」


 親指をぐっと立てて笑った――ような気がした。


 仲間じゃねーよ!!

 これは寝ぐせだわ!!


「タイセイさん危ない!!」


「え?」


 タマちゃんの叫びと同時に、何かが高速で腋の下を(少しかすって)通り抜けた。


「ギャ!!」


 そして、悲鳴を上げたゴブリンの額を、タマちゃんが放ったと思われる矢が貫いていた。


「タイセイさん!大丈夫ですか!?」


「ありがとう……」


「ゴブリンでも油断したら大怪我しちゃいますから気を付けないと」


 そうだね。今度から背後にも気をつけるよ。

 ゴブリンよりよっぽど大怪我しそうだからね。



『ゴブリンを倒しました。

 経験値7を手に入れました』


 え?俺は何もしてないけど…。

 もしかして、タマちゃんとパーティーという扱いなのか?


『職業【ゴブリン】のステータスがドロップしました。

 職業【ゴブリン】のステータスをステータスインベントリへ保存します』


 俺、スライムもゴブリンも職業じゃなくて、種族だと思うんだよね……。

 それか、どっかから給料貰ってるんか?


「タマちゃん、ちょっと待っててもらっていい?」


「はい。良いですけど?」


 せっかくだから、今のうちに確認しておこう。


「ゴブリンのステータスオープン」


 これで良いと思うんだけど。


 あ、タマちゃん、もう少し離れていてくれる方が、君の精神衛生上よろしいかと思いますよ。


『職業【ゴブリン】のステータスを表示しますか?YES/NO』


「YES」


名前 NO NAME

職業  ゴブリン

レベル  3

HP    50/ 50

MP   10/ 10

STR   10    DEF   4

INT   8    DEX  11

AGI   7    LUK   3


【固有スキル】

無し

【スキル】

命中率上昇(極小)



 思った通り、こうすれば獲得したステータスを見ることが出来るな。

 昨日は訳分からないままに装備しちゃったからな。


 本当に、何の話をしてるんだ俺は…。


「タイセイさん……」


 そして、毎回タマちゃんにこんな目で見られないといけないのか?


「もう少しだから、温かい目で見守っていてくれたら嬉しいな」


 そう、小さい子供が、アリの行列を眺めてるのを見た時みたいに。



 とりあえず、ゴブリンも問題なさそうだな。


「職業【ゴブリン】のステータスを装備」


『職業【ゴブリン】のステータスを装備しますか?YES/NO』


「YES」


『召喚者ソノダ・タイセイは職業【ゴブリン】のステータスをサブ職業スロットに装備しました。

 職業【ゴブリン】を装備したことで、各種ステータスが上昇しました。


 職業【ゴブリン】のスキル、「命中率上昇(極小)」を獲得しました。

 スキル「命中率上昇(極小)」をスキル装備スロットへ装備しました。

 称号「マルマールの使徒」の効果により、スキル「命中率上昇(極小)」は「命中率上昇(小)」へと進化しました。


 全てのデータ移行が終了しましたので、職業【ゴブリン】のステータスは廃棄されます』


 装備する度に廃棄されていってるから、サブスロットは常に空の状態になるのか。


 ……これ、いくらでも強くなれるんじゃね?


『ファースト自主的装備ボーナスとして経験値100が送られました。

 レベルが1上がりました。

 各種ステータスが上昇しました。

 スキル装備スロットが1増加しました。

 HPとMPが全回復しました』



 お前、強制してたって自覚はあったんだな。




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