「ねえ、タマちゃん。人のステータスって聞いても大丈夫なもんなの?」
「ステータスですか?他人に聞くのはマナー違反ですけど、同じパーティー内でしたら、お互いの力を知っておかないと作戦が立てられないので、ある程度は教えてるみたいです」
みたいです……ごめん、タマちゃんもパーティー組むの初めてだったんだよね……。
ぼっちで辛かったよね。
「何で、急にそんなに優しい目で見てくるんですか!?」
「一応、俺たちはパーティーを組んでるんだから、聞いても大丈夫?もちろん俺も教えるから」
ふざけてると思われるだろうけど。
「それは構わないですよ。でも、レベル4だから大したこと無いですけど……」
そういうとタマちゃんの前にステータスボードが現れた。
名前 タマキ
職業
レベル 4
HP 130/130
MP 70/ 70
STR 12 DEF 10
INT 20 DEX 21
AGI 25 LUK 8
EXP 12/ 150
【固有スキル】
「風の導き」
(戦闘時AGI 3%アップ)
【スキル】
無し
【称号】
無し
「ええと…まずHPが130です。それと――って、タイセイさん何をしてるんですか?私のステータスなんですから、タイセイさんには見えないでしょ?」
俺はタマちゃんの隣に移動して一緒に見ていたのだが、やはり他人のステータスは普通見えないらしい。
「ええと、俺はどうも人のステータスが見えるみたいなんだ」
隠し事は良くない。
てか、今のうちに知っておいてもらわないと、後々面倒になりそうだし。
「タイセイさん、とうとうそこまで……」
信じられないとは思うよ。
でも、そんな悲しそうな顔されても困るんだけどね。
「いや、本当なんだよ。タマちゃんのステータス読んでいくから確認してね」
そうして俺は順番に読み上げていった。
途中から明らかにタマちゃんの顔が驚きの表情になっていったが分かった。
「で、どう?信じてもらえる?」
「……そう、ですね。信じられないことですけど、信じるしかないです」
そのうちに慣れていってくれたら助かります。
「こんな話聞いたことないです……。タイセイさんて何者なんですか?」
「何者って言われても、ただの高校生だとしか」
「こうごうせい?」
いや、水と光と二酸化炭素で生きてねーから。
「ここから先の話は俺とタマちゃんだけの秘密にしてもらいたいんだけど――良いかな?」
「何だか聞くのが怖い気がしますけど……分かりました。約束します!」
そうして俺は、勇者召喚に巻き込まれて別の世界から来たこと、大したスキルも職業も得ることが出来なかったので、勇者が魔王を倒すまで冒険者をやろうと決めたこと、他人のスキルが何故か見えるけど、その理由は自分には分からないこと等をタマちゃんに話した。
ずっと異世界人であることを隠していた方が良いのかどうかを迷っていたが、こうして人に話すことで気持ちが少し落ち着いた気がする。
「異世界から来た……?」
話を聞き終わったタマちゃんは、何かを考えているように地面の一点を見つめている。
この世界に異世界人を呼ぶのは初めてだとかって、あの
「あの王様たちにそんな凄い事が出来ったっていうのがピンと来ないんですよね……」
そっちか。
しかし、その意見には同意する!!
王様、国民はあなたの事をこんな風に思ってますよー。
「でも、本当なんですよね?」
「全部本当のことだよ。俺の目を見て!これが嘘をついてる奴の目?」
「いえ、それが怪しいから聞いたんですけど……」
ぱっちりお目目に整形したろうかな?
「分かりました。こんな嘘をついてもタイセイさんが無職なのは変わらないですし、私のステータスが見えていたのも確かでしたから、私はタイセイさんを信じます!そして、この話は誰にも話さずに、風呂の中まで持っていきます!!」
「タマちゃん…信じてくれてありがとう」
でも、無職かどうかは関係なくね?
あと、それだと明日には誰かに話しちゃうよね?
「タイセイさんは勇者様では無いかも知れないですけど、何か特別な力を与えられてるんじゃないですかね?」
「一応、怪しいのがあることはあるんだけど…。タマちゃん、マルマールって神様は知ってる?」
「誰ですかそいつ?」
タマちゃんも、一応神様って言ってるのにあいつ呼ばわりは酷くない?
いや、酷くないな。
あいつで妥当だわ。
むしろ敬ってるレベル。
「一応…この世界の神様みたいなんだけど、その神様の使徒っていう称号があるんだよね」
「へえ…」
タマちゃん、もう少し興味もって。
結構重要な話してるよ。
「でも、その称号の説明が無いから、何の効果があるのか全然分からないんだよね」
(???)って書かれてるだけじゃねえ。
「んー。でもその可能性は高そうですね。他には変わったところは無い――ていうか、タイセイさんのステータスも教えてくださいよー」
あ、俺のも教えるって言ったんだった。
でも、あれをそのまま言っても、本当にふざけてると思われない?
いきなり顔面に拳が埋まるとか無いよね?
いや、タマちゃんを信じて、異世界人だってことを告白したんだから、今更誤魔化してどうするよ。
きっとこれも受け入れてくれるはず。
「……ステータス自体もちょっと変わってるんだけど……。数値が――」
『称号【
「数値があ……NO……」
「数値がノー?」
結局俺は、タマちゃんのステータスの数字をほんの少しずつ変えた適当な数字を伝えたのだった。
真実とは――時として力が無ければ、伝えることすら出来ないのだ。