目次
ブックマーク
応援する
6
コメント
シェア
通報

第14話 労働時間は守りましょう

「タイセイさんが異世界人だということも、人のステータスが見えるということもぎりっぎり!信じます」


 のこった!のこった!


「でも、魔物のステータスが……なんて言ったら良いんでしょう?倒したら落として、それを拾って、なんちゃらとかいうとこに保存して、その上でそれを装備したら強くなったり、スキルが増えたりする?」


「はい、そんな感じです」


「私、何を言ってます?」


 気持ちは分かるよ。

 でも、大体合ってるから気持ち悪いよね。



 ナビのお陰で何とか命の危機を回避した俺は、タマちゃんとギルドへ依頼達成の報告をし、今は宿屋の俺の部屋に集まっていた。


 そして、改めて、ステータスがドロップすることを説明したのだが……。


「タイセイさん。前にも言いましたけど――ステータスっていうのは、個人の能力を数値化したり、持ってるスキルを文字化したものです。なので――財布みたいに落としたり、拾ったり、ましてや装備やら何やらするものではないです」


 はい、それは重々承知しております。


「それが本当なら、タイセイさんは魔物を倒していったら、他の人よりも早く強くなっていきますし、スキルもいくらでも増やせるってことになります」


「一応、今あるスキルは――「対物理防御(小)」(常時)と、「命中率(小)」(常時)の二つだね。物理防御はスライムから、命中率はゴブリンのステータスに付いてたやつ」


「スキルが2つも!?レベル3で!?」


 タマちゃんはレベル4だけどスキルは0だから、通常スキルだと習得条件とかがあるっぽいな。


「でも、どっちも最初に倒した奴からしか拾えなかったんだよね。だから、無制限で強くなるってわけじゃないかも?」


 ドロップ条件はまだ不明。

 でも、初回のみって気はしてる。


「そうだとしても!!新しい魔物を倒すたびにスキルを手に入れられるとしたら、それはとんでもないことなんですよ!!前代未聞ぜんだいみもん空前絶後くうぜんぜつご色即是空しきそくぜくうなんですよ!?」


 何でそんな四字熟語知ってるのかとかはツッコまないからね。

 それと、最後のは雰囲気で言ってるね?


「そこでタマちゃんにお願いがあるんだけど……」


「お願い?何でしょうか?」


「それを検証したいんだけど、一緒に手伝ってくれないかな?」


「検証?どうするんですか?」


「明日も薬草収集の依頼を受けて森に行く。で、そのついでに少し森の奥に行って、スライムとゴブリン以外の魔物を倒してみたいんだ。でも、一人だと危険だから、タマちゃんが着いてきてくれたら頼もしいなって思って」


 果物ナイフと鍋敷きのレベル3では不安が大きすぎる。

 多分変なフラグが立って、あり得ないくらいの大物と遭遇して死にそうな気がする。


 そいつを奇跡的に倒して一気に強くなるんじゃないか?

 今の俺には奇跡を起こせるだけの材料が足りなさすぎるだろ。

 リンゴの魔物とかなら皮剝いて…いやいや。


「森の奥…ですか。私たちだけで大丈夫でしょうか?」


「奥って言っても、ほんの少しだけ。ちょっと違う魔物が出てきたらそれで良いから!!」


 ――ゴン!!


 そして俺は床に額を打ち付けて土下座する。

 人に何かを頼むときの最終奥義だ。


「お願いします!!手伝ってください!!」


「ちょ、タイセイさん!止めてください!!分かりましたから!それに、最初から断るつもりなんて無いですから!!」


「本当に!?」


 だって、結構不安がってたみたいだから…。


「森の奥に行くなら、私たちだけでじゃなくて、他の誰かに応援を頼まないといけないかも?って考えてたんですよ。今なら私たちもレベルが上がったし、二人組で行動してるから、誰か一人くらいなら助けてくれるかな?って」


 確かに、レベル1じゃなくなっただけでも印象変わる気がする。

 俺の装備に気付かれなければ、だけど。


「でも、そういうことなら二人でも大丈夫かな?って思います。なので、明日はそれで良いですよ。タイセイさん、私たちはもう仲間じゃないですか」


 そう言って微笑んだタマちゃんが天使に見えた。


「私もタイセイさんが言っていることが全部本当だって信じたいんですよ。ですから、そんなことしないで早く頭上げてください」


「本当にありがとう!!」


 タマちゃん!君は何て良い子なんだ!!

 この笑顔が見れるなら、俺は何度だって土下座してみせる!!


「まだ何もしてないのに、そんなに感謝されると恥ずかしいです…。それより、タイセイさん。額は大丈夫ですか?結構強くぶつけてたみたいですけど……」


 しかも、俺の心配までしてくれるなんて!!

 マジ天使!!


「大丈夫!!物理防御があるから全然痛くないよ!!こんなことで良かったらいくらでも土下座するよ!!」


「へえ……そうなんですね……」


 あれ?タマちゃん?

 天使の微笑みは?


「それって……どれくらいまで、例えば――私の矢が当たっても大丈夫かどうか試してみたいと思いませんか?」


 思いません!


「私は思うんですよ」


 おいナビ!何で今回は何も言わなかったんだ!?


『本日の営業は17時で終了いたしました。ご用件がある方は、ピーという発信音の後にメッセージをお入れください』


 残業しろやコラー!!


「タイセイさん…動かないでくださいよ…手元が狂ったら危ないですから…」


 狂わなくても危ないわ!!


「やめて!タマちゃん!落ち着いてー!!」



 ピー。


「誰か助けてー!!」



この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?