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第19話 世紀末覇者タマキ

 レベルが上がったことで体力的にも余裕が出てきていた俺たちは、最初の頃では考えられないほどの森の奥へと入っても、夕方には街へ帰ってこられるようになっていた。


 それでも、Dランクとかの冒険者だと、更にそのずっと奥まで進んでいけるらしいけど。


 しかし、余所よそ余所よそ、福は内。


 今日も新たな敵を求めて、我々探検隊は魔窟まくつと化した深き森の深層へと足を踏み入れたのであった!!


「タイセイさんて、たまに見えない誰かと会話してますよね……」


 ちなみに、今の俺のステータスはというと――


「ステータスオープン」



名前 園田 大勢 

職業 その他

レベル 6

HP  185/185

MP  125/125

力  県予選ベスト4  我慢   朝練参加

頭  非常に弱い    器用さ  硬筆2級

動き ダンス部見習い       

おうし座のあなた   第▼φ×◎位

人生最悪の一日。

◆β〇%が$@※εɤには#⊕●を××××××。

ラッキーアイテム   生命保険証(特約付)

EXP   58/160


【固有スキル】

覚えることが出来ません

【スキル】

覚えることが出来ません。

【称号】

「マルマールの使徒」

(???)


【装備】

「初心者のナイフ」

「お手頃価格の皮の胸当て」

「それなりの皮の靴」

【装備ステータス】

「その他」

【装備スキル】

「対物理防御(小)」(常時)

「命中率上昇(小)」(常時)

「俊敏性上昇(小)」(常時)

「柔軟性上昇(小)」(常時)

「対魔法耐性(小)」(常時)



 と、こんな感じ。


 装備もようやく戦えそうなものになったし、スキルもいくつか増えた。

 委員長とかにあった「魔法防御」ではなく、「魔法耐性」っていう違いが分からないけど、とりあえずは魔法を使ってくる魔物に出会っても少しは安心出来そうだ。


 今日という日を無事に生きて越えることが出来ればだけどな。


「顔色良くないですけど……大丈夫ですか?」



 ちなみにタマちゃんも同じように成長している。


 昨日確認した時はこんな感じ。



名前  タマキ

職業  弓使いアーチャー

レベル  7

HP  150/150

MP  85/ 85

STR  15      DEF   12

INT   23      DEX   24

AGI   28      LUK   9

EXP   125/  170


【固有スキル】

「風の導き」

(戦闘時AGI 3%アップ)

【スキル】

「気配察知(小)」(任意)

【称号】

無し


【装備】

柘の弓矢

厚皮の肩当て

流行りのブーツ


 タマちゃんも順調に強くなっている。


 でも、どうも経験値の増え方が、俺と違うような気がする。


 パーティー組んでても均等じゃないのか?


 それと、あの後にフォレストバットを倒したけど、ステータスはドロップしなかった。


 誰かに渡しても無くなっても、同じ魔物からは一度しか貰えないみたいだ。


 まあ、まだ確率の可能性が消えたわけでは無いけどね。



「さあ、さっさと薬草集めて奥に進もうか!」


「おかえりなさい」


 はい、お待たせしてすいません。



 そうして薬草を集め終わった俺たちはいつものように森の奥へと進んでいく。


 今日は5つ見つけられたので進歩はしてるな。


 途中、見慣れたスライムは無視、ゴブリンはタマちゃんが殴って倒し、木にぶら下がって眠っているフォレストバットはタマちゃんが遠距離から射抜き、群れからはぐれてたまたま出会ったウルフはタマちゃんが蹴り飛ばしながら進んでいく。


「少しずつでも経験値貯まっていくのって楽しいですね!」


 うん、俺何もしてないけどね。


 タマちゃん、本当に楽しくてやってる?


 何かストレス溜まってるなら話聞こか?



 これまで倒してきた魔物は、スライム、ゴブリン、フォレストバット、ウルフ、鬼ムカデ、マイマイスライム。


 ウルフからは「俊敏性上昇」、鬼ムカデからは「柔軟性上昇」、かたつむりみたいなマイマイスライムからは「対魔法耐性」のスキルを貰った。


 どれも魔物の見た目や特性を考えると、それっぽいのを持っている。


 というか、持っているからそうなってるのか?


 卵が先か鶏が先か……うーむ。


「タイセイさん…この先に魔物の気配がします…」


 タマちゃんが小さな声で顔を寄せて耳打ちしてきた。


 ありがとう。――いろいろな意味で。


「どのあたり?」


 俺もタマちゃんに耳打ちしようとしたのだが、すでにタマちゃんの姿はそこには無かった…。


「10メートルくらい先の木の陰に3体です。これは初めて感じる気配ですよ」


「よし、二日ぶりの初魔物だ!」


 初魔物……自分で言っておいてなんだが……なんてゴロが悪いんだ……。


「慎重にいくよ……」


 俺は新しい相棒となったナイフを握りしめる。


 ちなみに前任者のナイフは、宿屋の部屋で果物相手に現役を続行している。


 タマちゃんも近接用に買ったナイフを取り出して構える。


 違う、君は弓矢を構えるんだ。


「来ます!!」


 タマちゃんがそう言った瞬間、木の陰から3つの影が飛び出してきた。


「ヒャッハー!!ここは通さねえぜー!!」


 世紀末よろしく、皮のレザースーツに身を包んだモヒカン頭の男が3人。


 その手には俺たちと同じようなナイフを持って、その刃を舌で舐めている。


 ……おい、魔物じゃねーよ。


「タイセイさん!モヒカンですよ!」


「そだねー」


 俺も寝起きはあんな感じだ。


「あれ?テンション低いですね?初めて会う魔物ですよね?」


「……いや、あれは人でしょ?変な恰好はしてるけど」


 そこまでこの世界は荒廃してない。


「何言ってるんですか!あれは魔物の――「モヒカン」ですよ!!」


 じゃあ、世紀末は魔物だらけだな。


「あれ……魔物なの?」


「そうですよ?他に何に見えます?」


「ファッションセンスをドブに落としてきた人間……かな?」


「それだったら、タイセイさんも魔物になっちゃいますよ?」


 おい。

 少しおしゃれな靴を履いてるからって、失敬だな君は。


「切り刻んでやるぜえー!!」


「ミンチにしてやるぜえー!!」


「こねて空気抜いて裏表満遍なく焼いてやるぜえー!!」


 ハンバーグかな?


 モヒカンたちはガニマタでどすどすと俺たちに向かってきた。


「うおっと」


 俺の方に2匹?のモヒカンがナイフを振り回して襲ってきた。


 ええと……どう見ても人間…いや、見方によっては人間では無いか?いや、超個性的な感性の持ち主という可能性も……。


 そんな微妙な生き物にナイフを向けることを躊躇している俺。


 ちょっと、こいつを斬ったりするのは抵抗がある。


 そうして、モヒカンを攻撃出来ないで躱し続けていると――


「ぎゃあーーー!!」


 悲鳴の方を向くと、全身が赤く返り血に染まったタマちゃんと、その足元に倒れているモヒカンの姿が見えた。


「いやあーーー!!」


 人殺しーーー!!


「大丈夫ですか!?やられたんですか!?」


 俺の悲鳴に駆け寄ってくる血まみれのタマちゃん。


 その手には鮮血に濡れたナイフを持って。


「殺されるー!!」


「今行きます!!」


「来ないでーーー!!」


「イヤッハー!!助けて―!!」


 いや、お前らもかい。



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