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第23話 ダービー春のパン祭り

 やべ!!行くぞチープ!!


『さあ、ようやくゲートを出ましたチープインパクト。

 先頭とはすでに大きく差が開いてしまっている。

 ここから巻き返すことが出来るのか。


 先頭は1番、スタコラサッサー。

 予想通りハナを切って進みます。

 そして、差のない2番手には10番、コシタンタン。

 少し離れた3番手には2番、チャンストウライ――』


「うわぁぁぁぁー!!速えぇぇぇー!!」


 キリン速い!!高い!!怖い!!


 落ちないようになってるらしいけど、そんなんジェットコースターも同じじゃん!!


 怖いもんは怖い!!


『そして、後方2番手に2番人気の8番オイマテコラー。

 その後ろ、大きく離れた最後方から1番人気の9番チープインパクトの順となっております。


 おっと、チープインパクト掛かり気味か?

 出遅れを取り戻さんとばかりに猛スピードで前を追っております。

 これは最後までもつのかー?


 そして先頭はスタンドの大歓声を受けて1コーナー前、最初の障害へと向かいます』


 ――は?障害って言った?


『最初の障害は竹柵ちくさく障害です。

 さあ、各ンバ脱落することなくクリア出来るのかー!!』


 出来るのかー!!じゃねーよ!!


 何?キリンに乗って障害物競争やらなきゃいけないの?


 え?競馬ってそういうもんなの?



『さあ、各ンバ順調に最初の障害をクリアーしていきます。

 そして、先頭のスタコラサッサーは1コーナーに入っていきます。


 オイマテコラーがクリアして、残すはチープインパクトのみ』


 竹を合わせて作っている柵がコースを塞ぐように置かれている。


 あれを跳ぶのか!?


 いや、チープなら障害の訓練を普段からしてるはずだから問題な――今は俺が装備(?)してるから俺が操縦するんだったー!!


 やばい!どんどん近づいてくる!!


 躓いたら絶対に転倒する!!


 落ちなくても、転がったチープの下敷きになったら絶対に死ぬ!!


 落ち着け!タイミングを合わせろ!他のンバがクリアしたんだから出来るはずだ!


『さあ、チープインパクトが最後に竹柵障害に向かって――』


 いけえー!!


 ひょい。


『上手くまたいだー!!

 さあ、これで全ンバ最初の高さ1メートルの竹柵障害をクリアしました』


 低い!!低すぎる!!


 こいつらの脚の長さは2メートル以上あるんだぞ!?


 そりゃ、躓いたら危ないかもしれないけども、多分その時は柵の方が壊れるんじゃね?


 この勢いでキリンが蹴りつけたらさ?



『先頭はスタコラサッサーのままで2コーナーから向こう正面のストレートへと入っていきます。

 最後方のチープインパクトまでは12,3ンバしん程のやや縦長の展開となっております。


 そして待ち受ける第2の障害は――遥か天空より舞い降りた黄金の木の実。

 人々はそれを求め、渇望しながらも決して届かぬ高みにる神の与えし禁断の果実。

 しかし――ある時、人々は気付いた。

 手が届かないなら、ンバに取らせれば良いじゃないかと。


 第2障害は――パン食い競争―!!』


 運動会か!!


 黄金の木の実とか、禁断の果実とか言ってるけど、ただのパンだろう!!


 あー、あれかー。


 ロープの張った2本の棒が見えるわー。


『各ンバスピードを落としながら、禁断のパンへと向かっていきます』


 じゃあ、それ食べちゃ駄目だよね?禁断て言っちゃってるし。


 ツッコミ入れてたら、何かスピードにも慣れてきたな。


 考えたら、自分の意思で動かしてるんだから、慣れるとかってのも早そうだし。


『各ンバ懸命に首を伸ばしてパンを取ろうとしますが、神の与えし禁断の果実をなかなか取ることが出来ません。

 これぞまさに神の悪戯!!』


 いや、全然上手い事言えてないからね。


 ただのパンだから。


『ここで、大きく出遅れていたチープインパクトが追い付いてきたー!!

 これが大本命の実力なのかー!!

 スタンドからは驚きの歓声が上がっています!!』


 みんな止まってパン食おうとしてるから、結局追いついちゃってるじゃん。


 実力とかじゃないから、観客の皆さんもそんなに興奮しないで。



『まずクリアしたのはスタコラサッサー。

 世代屈指の逃げ脚はここでも健在です』


 パン取るのが上手いのもそれに含まれるならな。


 確かにぶらぶら、ぴょんぴょん動いて取りにくそうだけども――


「ここだー!!」


『おおーっと!ここで外から上がってきたチープインパクトが一気にパンをゲットしたー!!』


 フフフ、キリンに慣れてきた今の俺には、自分の手で掴むも同然だからなー!!


『初騎乗のソノダ騎手、見事な騎乗を見せております!!』


「オラァー!!どんな障害でも持ってこいやー!!」


『一気に順位を上げたチープインパクト!

 先頭との差は5ンバ身、現在6番手の位置まで順位を上げてきました


 そして、次に待ち受ける障害は――借り物競争です!!

 紙に書かれたお題を、騎手の方がンバから下りて探してきてもらいます』


 競ンバ関係なくね?


 せっかく操作に慣れてきたのに、ンバから下りての借り物競争?


『スタコラサッサーのロレックス騎手が最初に紙を持って走っていきます』


「ロレックスおったー!!」


 他のンバに乗ってたー!!


 あいつ何やってんだ……。


『さあ、各騎手が次々とスタンド方面へ向かって走っていきます』


 くそっ!


 あんなのに気を取られてる場合じゃない!!


 俺は急いでチープから飛び降り、飛び…降り……えいっ!!


 て、机の上にある紙を掴んだ。


「さあ!お題は何だ!?」


《駅近《えきちか》マンション徒歩5分 駐車場あり》


「借りれるか!!」


 いや、借りれたとしても持ってこれるかー!!


『おっと、ソノダ騎手がお題の書かれた紙を叩きつけているぞー!

 どうやら難しいお題だった様子。

 しかし、まだまだ他のお題が残っている。

 早く用意できるものを引き当てることが出来るのかー』


「え?他のを取っても良いの?」


「いっぱい用意しているので大丈夫ですよ」


 近くにいた係員さんがそう教えてくれた。


「昨日、徹夜で作りましたから、まだまだたくさんありますよ」


 このふざけたの作ったんはお前かい!!




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