私が扉を開けるとそこはお花畑でした。
どういうことかというとルーシファスさんが大きな花束を持ってお見舞いに来てくださっていたのです。
花束の陰から顔を覗かせたルーシファスさんはにっこり微笑むと、私に恭しく花束を贈呈してくださいました。
このように花束を贈られると自分がお姫様にでもなったかのように錯覚してしまいます。否が応にも私は胸が高鳴り、とてもときめいてしまいました。
「どうやら体調はもう良さそうですね。顔色も良いですし、表情もとても穏やかです」
私が薄っすら頬を赤らめ、お花にうっとりしているのを
「昨日、ルーシファスさんが速やかにお医者様の診察を手配してくださったおかげです。本当にありがとうございました」
「いえ。当然のことをしたまでです。それより───体調は元に戻っても、話し方は変わってしまったままなんですね。まあ、
私は「しまった」と思いました。ついつい自分の口調で喋ってしまいました。
もっとお母様の話し方を真似しなくては。
「まあ、いいですよ。貴方がネフェルじゃないことはもうバレていますから。今更、下手に取り繕う必要はありませんよ」
「───えっ!?」
私はドキリとしました。
「ただ、やはり貴方が何者なのかは少し気にしています。まさか我々に何か害をなす悪巧みなど考えていないでしょうね?」
そういってルーシファスさんは一歩、私に詰め寄りました。
たじろいだ私は一歩退き、部屋の壁際に追い込まれてしまいました。
綺麗なお顔立ちのルーシファスさんですが、凄まれるととても怖いです。
なまじお顔が綺麗なだけに、その事が不気味さを増幅させているようでもありました。
「特に───特に、もしネフェルに何か危害を加えようとしているなら僕は絶対に───絶対に許しませんよ?」
ルーシファスさんはさらに私に詰め寄りました。私は爪先立ちになり、ぴったりと壁に背を付け、極限まで身体を平たくして震えました。
「どうでしょう? 素直に白状してはどうですか? 貴方は誰で、目的は何なのか?」
もうこれ以上ないくらいルーシファスさんは私に詰め寄りました。
そしてその時───ルーシファスさんの糸目が───ルーシファスさんの糸目がスッと静かに見開かれたのです。