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044話 ウィンリル・ロキ・アスタロッド(07)

「やだー。もっとネフェルと一緒にいるー。ずっとフーフーワシャワシャして欲しいー」


 私にベッタリ抱きついて離れないウィンリルさんをなんとか引き剥がし、私はウィンリルさんの背中を押してお仕事に向かわせました。

 ようやく部屋からウィンリルさんを押し出し、背中で扉を閉めた私は、精魂尽き果て、ズルズルとその場に座り込んでしまいました。


「ウィンリルさん、恐るべし……。もう二度とウィンリルさんにこのようなおねだりをされないように重々注意します」


 私が誓いを宣言すると、お母様は(そうじゃな。そうするがよい)と同情を込めて同意してくれました。


 ようやくお母様と二人っきりになった私は、昨晩の事───魔王様を部屋に入れて添い寝したことを白状することにしました。


「お母様、素直に白状します。昨晩の魔王様の件ですが、私は魔王様をお部屋に招き入れ、添い寝をしました」


 私は正直にお母様に白状しました。


(…………)


「お母様から魔王様をお部屋に入れるなと言われていたのにすみません。でも、どうしても……どうしても魔王様を放っておけなかったんです」


 お母様は少しの間、沈黙されていましたが(うむ……。よくぞ正直に申してくれた。また、魔王のことを気にかけ慈しんでくれたこと、礼をいう)と私に礼節を尽くしてくれました。


(おぬしが魔王を部屋に入れ、慈しんだことはすぐにわかったぞ)


「えっ? そうなんですか?」


(うむ。目が覚めてすぐに感じたのじゃ。この胸の前にある暖かな感触。それがなんであるか見誤る母親はおらぬ。まごうことなき我が最愛の息子の温もりじゃ)


 お母様は胸に手を当て、今も残るその余韻を大切そうに抱きしめました。


 私はそういったお母様の様子を拝見し、お母様は本当に魔王様を愛しておられるのだと感じました。


 母親の深い愛───。


 お母様のお身体に同居し、お母様の考え、思い、気持ちを共有できる私は、嘘偽りのないお母様のその愛に触れ、私までも感動で胸が熱くなりました。


 しかし、それと同時にひとつの疑問が湧きました。

 私はそのことをお母様に質問してみました。


「あの、お母様。お母様はそんなにも魔王様のことを愛しておられるのに、どうして魔王様を部屋に入れるななどと冷たくされたのですか?」


(…………)


「それともうひとつ。というのはどなたなんでしょう?」


(…………!)


「……お母様ととても関係の深い方なんですね。カーコスというお名前を聞く度にお母様の心が強張るのを強く感じます。込み入ったことを伺ってしまって恐縮ですが、お母様のお身体を預かる身としては知っておきたい───いえ、知らなければならないと感じています。どうか私に教えていただけませんか?」


 私は誠意をもってお母様にお願いをしてみました。この件についてお母様の口は本当に重いようでしたが、お母様はしばらく沈黙した後、ついにそのことを話す決意をしてくださいました。


(そうじゃな。おぬしのいう通りじゃ。カーコスのこと。勇者のこと。そしてわらわが倒れたこと……。さらにおぬしのように気遣いができる者を探してわらわの身体を預けなければならなくなったこと。それらのことをおぬしには話さねばならんな)


 そのお話はとても奥が深く、一言ではあわらせない様々な事情があると私は感じ取りました。


 長いお話になる───。


 そう察した私は静かに寝台に腰掛け、お母様がお話しされるのを待ちました。


(そう。このことを話すにはあの時のことから話さねばならぬ。まだわらわが田舎の辺境伯爵家の娘で、魔界学園に入学し、初めてマルフィスの父───つまり先代魔王のスレキアイ・ベアル・アスタロッドと出会った頃の話じゃ)


 そうしてお母様はご自身の学生時代のお話を語り始めました。




 ✿.*.。.:*:.。.ꕤ.。.:*:.。.*.✿ ✿.*.。.:*:.。.ꕤ.。.:*:.。.*.✿


【後書き】


 柳アトムです。ここまで私の小説を読んでいただき、本当にありがとうございます。

 ( ᵕᴗᵕ )ウレシイデス


 これにて第一章完結です!

 次話から第二章がスタートしま~す!

 ୧(˃◡˂)୨


 第二章はお母様の学生時代のお話です。

 学生時代のお母様はどんな学生だったのか?

 そしてカーコスとは誰か?

 またマルフィスの父である先代魔王スレキアイ・ベアル・アスタロッドとは?


 乞うご期待いただけますと幸いです。

 ( ᵕᴗᵕ )


 この後も皆様に「面白い!」と思っていただけるよう頑張ります。

 ( *˙ω˙*)و


 引き続き宜しくお願い致します~!

 ୧(˃◡˂)୨


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