「そうだったのね。カーコス君が……」
説明を聞いてユキメは神妙な面持ちになった。
「あ、でも腕の怪我は兄ではなく、バルバトス様です」
「そうね。バルバトス様も後で私がお灸を据えておくけど、それよりカーコス君よ。妹のネフェルちゃんに手をあげるなんて許せないわ」
ユキメは鼻息を荒くした。
「兄が私を
「違うわよ、ネフェルちゃん。あなたは悪くないわ。カーコス君がいけないの。
ユキメがことさらに「今のカーコス」と強調するのは、昔のカーコスをユキメは知っているからだった。
「一緒に遊んでいた頃はあんなに優しかったカーコス君が……。ごめんなさいね、ネフェルちゃん。カーコス君が
そういってユキメはうつむいた。
「ユキメお姉さんこそ自分を責めないでください。あれは家同士が決めた事。私たち子供がどうこうできる問題ではありませんでした」
ネフェルはユキメの肩に手をかけ、優しく撫でてユキメを励ました。
「カーコスが今のようになったのがユキメのせいだというのは初耳だ。いったい何があったのじゃ?」
スレキアイにそう訊かれてネフェルは「それは……」と口ごもった。
そんなネフェルに代わり、ユキメがきっぱりと質問の返事をした。
「私ことユキメ・クズハ・シュテンこそ、カーコス・セト・ホーンの初恋の女性だからです」