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056話 ネフェル(?)の学生時代(12)

「そうだったのね。カーコス君が……」


 説明を聞いてユキメは神妙な面持ちになった。


「あ、でも腕の怪我は兄ではなく、バルバトス様です」


「そうね。バルバトス様も後で私がお灸を据えておくけど、それよりカーコス君よ。妹のネフェルちゃんに手をあげるなんて許せないわ」


 ユキメは鼻息を荒くした。


「兄が私をったのは私がいけないんです。兄の言い付けをことごとく守らなかったので……」


「違うわよ、ネフェルちゃん。あなたは悪くないわ。カーコス君がいけないの。のよ。自分を責めないで」


 ユキメがことさらに「今のカーコス」と強調するのは、昔のカーコスをユキメは知っているからだった。


「一緒に遊んでいた頃はあんなに優しかったカーコス君が……。ごめんなさいね、ネフェルちゃん。カーコス君が知っての通り、……」


 そういってユキメはうつむいた。


「ユキメお姉さんこそ自分を責めないでください。あれは家同士が決めた事。私たち子供がどうこうできる問題ではありませんでした」


 ネフェルはユキメの肩に手をかけ、優しく撫でてユキメを励ました。


「カーコスが今のようになったのがユキメのせいだというのは初耳だ。いったい何があったのじゃ?」


 スレキアイにそう訊かれてネフェルは「それは……」と口ごもった。

 そんなネフェルに代わり、ユキメがきっぱりと質問の返事をした。


「私ことユキメ・クズハ・シュテンこそ、カーコス・セト・ホーンの初恋の女性だからです」

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