「カーコスは学園内で一目置かれておる。そなたらが言うように勉学、運動、武術、魔術のいずれも成績優秀で、一つ一つは一番ではないが、総合力ではダントツの学園トップじゃ。
じゃが、孤高というか人を寄せ付けぬというか、いつも一人でおってな。
それは成績を維持するために一人で研鑽を積んでいるためかと思ったが、話を聞いて合点がいった。なるほどな。カーコスは我々を恨んでいたわけか」
そのような兄の態度に対してネフェルは「申し訳ございません」とスレキアイに謝罪した。
「ネフェルちゃんが謝る事じゃないわ。私が悪いのよ」とユキメがネフェルを庇ったが、スレキアイは「それも少し違うぞ。謝るべきはカーコスじゃ。婚姻の申し出を断られたことは辛いじゃろうが、だからと言って自分を見失ってはいかん」とユキメの肩を持った。
「いずれにせよ、話を聞けてよかった。カーコスのことは気にかけておったが、そのことを知った今、より一層、カーコスに対してしてやれることがあるかもしれん」
スレキアイのその言葉は妹のネフェルを安心させる為の言葉のようでもあった。
ネフェルはその意図を感じ取り、素直にスレキアイに感謝した。
「ユキメよ、ネフェルと知り合いなら話が早い。すまぬがネフェルの治療はお前に任せた」
「え? あ、はい。それは構いません。もとよりそのつもりでしたし」
「うむ。頼んだぞ。ではわしは多忙ゆえ、もう行く。ネフェルよ、そなたと会えてよかった。また会おう。そして、もし何か困ったことがあれば気兼ねなくわしに相談にくるがよい」
そう言ってスレキアイは二人を残して保健室を後にした。