ユキメとネフェルは決闘大会が行われる
どの学生も決闘大会がお目当てで、楽しみにしていたのだ。
やがて人だかりとなってなかなか目的に向かって進めなくなった。
ますます混雑がひどくなり、ネフェルとユキメは人の波に揉まれ、もみくちゃにされた。
「あっ。ユキメお姉さん。こっち。こっちの方は人がすいてます。こちらからまわりましょう」
ネフェルは人だかりの間に通りを見つけ、ユキメに提案した。
「あっ! まってっ! だめよ、ネフェルちゃんっ! そっちは
ユキメはネフェルを行かせまいと服を掴もうとしたが寸前で手が届かず、人の波にさらわれてしまった。
そして二人の間には波が流れ込むように学生が氾濫し、距離が離れてしまった。
「ユキメお姉さんっ! こっちですっ! こっちこっちっ!」
人混みの波の合間からネフェルが手を振ってユキメを呼んでいた。
「まって、ネフェルちゃん! そっちはダメ!
ユキメは必死に呼びかけたが、ネフェルはどんどん先へと流されていってしまうかのようだった。
なんとかユキメはネフェルに追いつき、寸前でネフェルの腕を掴んでそれ以上先に行くことを阻止できた。
「ど、どうしたんですか、ユキメお姉さん? 不思議とこちらには人がいないですよ。ここから
ネフェルはそう提案したがユキメはかぶりをふった。
「ダメよ、ネフェルちゃん。こっちはダメ。こっちに人がいないのは、みんな
「テイマー部? テイマー部って、魔獣を使役するテイマー属性の人が集まる部ですよね?」
「そうよ、そのテイマー部よ。あのね、ネフェルちゃん。テイマー部は危険なの。学園で一番凶悪と言っても過言じゃないわ。だから絶対に近づいちゃダメ」
ネフェルはユキメが血相を変えてそう諭すので、テイマー部はそんなに危険なのかと訝しんだ。
ネフェルはこれまでもテイマー属性の人を何度も見かけていた。
確かに優秀なテイマーは巨大な魔獣を従わせ、意のままに使役させていた。
ネフェルの領地にも
しかし、しっかりテイムされた魔獣は命令に従う為、どんな凶悪な魔獣でも近づいて襲われるという事はなかった。───自分からイタズラをしない限りは。
その為、ネフェルはどうしてユキメがこんなにもテイマー部を危険視するのか不可解に思った。
それにユキメの警戒の仕方は本当に大仰だったので、自分が知らないだけで、実はテイマー属性の人は魔獣だけではなく、人さえもテイム可能で、近づくと自分たちも支配下に置かれてしまうのだろうかと一抹の不安を覚える程だった。
そうしてネフェルが頭を悩ませているその時だった。
空を切り裂き、大地を震わせるような咆哮が鳴り響いた。
それは明らかに巨大な魔獣の咆哮だった。
それも一匹や二匹ではない。
一匹の魔獣の咆哮に端を発し、何十という魔獣の咆哮が輪唱するかのように合唱された。
この角を曲がった先にあるテイマー部にはそれだけの巨大な魔獣がいることが容易に想像できた。