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第4話 “みこ”との再会

「なあ伝助。あの子は、なんで“みこ”だと判断されたんだ?」


「どうやら父親が、あの娘を教団に“みこ”だと売り渡したようですね。それで娘と報奨金を交換する際に、娘が逃げようとして暴れて、教団の追跡官たちが何人も焼け焦げた炭となったようです」



やはり、あの子は『炎』を操る力を持っているのだ。

『鑑定スキル』に書かれていたことは、正しかった。


本当に、あの子が人を燃やしてしまうような特殊能力を持っているのなら、それをこの目で確かめてみたい。



なぜなら、この世界には魔法や超能力といった概念はないからだ。

ゆえに、日本の漫画で流行っていた異世界転生モノのような、炎を生み出す魔法使いは存在しない。


だからこそ、気になる。


日本の戦国時代のような雰囲気ということ以外は、特別な能力を持つ人間がいないこの世界で、唯一無二の力を持った少女。


その力を、直接見てみたい。


そのためにも、“みこ”にもう一度、会いたい!



「伝助、いますぐあの子に会うぞ」


「若! “みこ”にこれ以上関わるのはおやめください!」


「ええい、うるさい。おい、誰かいないか!?」



俺のことを止めようとする伝助を振り払いながら、部屋の外へと飛び出る。

すると、先ほど“みこ”を預けた部下が、いそいそと俺の前に現れた。



「ご城主様、お呼びでしょうか?」


「お前はさっきの! ちょうどいい、あの子をどこにやった?」


「先ほどの“みこ”であれば、こちらでございます」



部下の案内に従って、廊下を進む。

後ろを振り向くと、伝助が諦めたように大きくため息をついていた。


どうやら、あの子に会うための障害はなくなったようだ。



──それに、なんとか正体もバレずに済んだな。



この体の持ち主である皆本守は、変わったことをするのが好きな人物らしい。

他人からは奇行に見られているようだが、そういった行動を取れば、こうやって周囲の目をごまかすことができそうだ。


今回も、処刑するはずだった“みこ”を、殺さずに担いで城に帰るという行動が、いつも通りの奇行に映っていたのだろう。


城主の中身が皆本守ではなく、日本のサラリーマンである原田はらださとるになっているとは、家老ですら見抜けなかったようだ。



「城主様、こちらの小屋になります」



“みこ”がいる場所は、意外にも城の外だった。

部下に案内され、城から数分歩いたところにある、古びた小屋へとたどり着く。


お尋ね者である“みこ”を隠すには、ある意味もってこいの場所かもしれない。



「案内ご苦労。それで、彼女はどうしてる?」


「ええ、すでに準備は万全でございます。城主様の到着をお待ちしておりました」



部下の言葉に、どこか含みがあるように感じた。

俺との面会の準備ができているということだろうか。


城に戻った際に、あの子を部下に預けたままだったから、どうしているのか気になっていた。

あれから俺のことをずっと待っていたので、あれば悪いことをした。


処刑場からいきなり連れ出されて、さぞかし心狭い思いをしていたはずだ。

待たせるのも悪いし、早めに挨拶をして、安心させてあげたほうがいいだろう。



俺が小屋の前に立つと、部下が扉をゆっくりと開く。

次の瞬間、俺は目を見開いた。



「こ、これは……!」



目の前の光景に、俺の思考が一瞬で停止する。

薄暗い部屋の中で、艶やかな姿が目に飛び込んできたからだ。


豪華な緋色の毛布の上で、少女が月光のような白い肌を淡く輝かせていた。


薄い下着姿となった“みこ”が、手足を縛られたまま派手な毛布の上に投げ出されている。

彼女の手足を拘束するというより、むしろ体を強調するかのような大胆な体勢にさせられていた。


そして背徳的なのは、なにも体勢だけではない。


柔らかそうな肢体したいの曲線、そして薄い下着越しにうっすらと浮かび上がる胸の双丘そうきゅうに目が奪われる。


それらのあでやかな姿に加え、全身に貼られた神札が神秘的な雰囲気を醸し出していた。



俺の存在に気が付いたのか、少女が静かに目を覚ます。


彼女は潤んだ瞳で俺を見上げると、紅色に染まった唇がつぼみのように開く。



「誰……?」



その可憐な声に、俺の理性が揺らいだ。

甘い香の薫りが部屋中に漂い、全身を刺激する。


先ほど命を助けたばかりの少女が優艶ゆうえんな姿をさらす光景に、俺はゴクリと息を呑んだ。


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