「俺のことを監視していたのなら知っていると思うが、教団から奪い取って俺が保護している“みこ”──
「そうでなければ、この場で貴様を殺している。それに私は、このことも知っている──この城には、
俺のことを一週間も監視していたのだから、気づいていてもおかしくはないと思っていた。
「
「……やっぱり、それが目的だよな」
おそらくそうではないかと、さっきから思っていた。
なにせ『血塗れのみこ』は、“みこ”を探しているという噂だったからな。
「なにも悪い話ではない。『血塗れのみこ』こそが、すべての“みこ”にとって唯一の安息の地だ。そこでは差別も迫害もなく、“みこ”は力を隠すことなく生きることができる。そうした自然な環境こそが、本来の“みこ”にとって最も望ましいものだ!」
「…………お前の言いたいことはわかった。だがその提案、断らせてもらう」
俺の返答を聞いた
「なぜだ!? 『血塗れのみこ』に所属することこそが、“みこ”にとって最良の選択だというのに!」
「たしかに悪くない提案かもしれない。けれども『血塗れのみこ』よりも、この潮見城のほうが安全だ。『
ムスっとしたような態度で、紗夜が小さく胸を張る。
「我々『血塗れのみこ』の隠れ家だって、他よりも安全だ。なにせ我々の本拠地は海上の島にある。たとえ教団といえども、海の上までは影響力を持っていない」
「だが、
というかこいつ、なんで『血塗れのみこ』の本拠地が海上にあるって、俺にバラしたんだ?
見た目は利口そうな雰囲気だったけど、紗夜はちょっと抜けているところもあるのかもしれないな。
それに、良い情報を知れた。
その危ない海の上の島には、たくさんの“みこ”が存在している。
この世界の文明を発展させ、潮見城の力を向上させるためには、異能の力を持つ“みこ”の力は不可欠だ。
そんな“みこ”が集まっている『血塗れのみこ』と、この機会に接触しない手はない。
俺は紗夜に、思い切って提案をしてみる。
「なあ、もし良かったらなんだが、そんな海の上なんかじゃなく、『紅雨季』が始まる前に潮見城へ避難してみないか? 住む場所だけでなく、身の安全は保証しよう」
「私を、この城に招待するつもりかっ!?」
俺の予想外の提案に、紗夜は本気で驚いているようだった。
“みこ”を勧誘しにきたはずの彼女が、逆に俺に勧誘されているのだから、たしかにおかしい話かもしれない。
「悪い話じゃないと思うぞ。俺は君を歓迎するし、灯里たちも喜ぶだろう」
「……皆本守の話には驚いたが、私は“みこ”だ。潮見城の民や教団が、我々を恐れていることは知っている。わざわざ“みこ”を敵視している連中の住処に入りたくはない」
紗夜の言う通り、“みこ”に対する偏見はまだ潮見城に残っている。
“みこ”であることがバレるようなことがあれば、ここは敵地のど真ん中といってもいいだろう。
「それに皆本守、私はこれも知っているぞ。灯里という“みこ”は、そろそろ成人を迎えるのだろう?」
「たしかに灯里はそれくらいの年齢だったな。でも、それがどうした?」
「成人は、“みこ”にとって最初の試練であり、そしてとても大きな試練となる。“みこ”となる覚醒が早ければ早いほど、この試練を乗り越えることが困難になるのだ」
「“みこ”の風習か? そんな話、聞いたことないが……」
「風習ではない。“みこ”であれば誰しも必ず直面することになる、試練だ」
もしかしたら、俺は“みこ”についてまだ何も知らないのかもしれない。
そう、彼女の話から思ってしまった。
「“みこ”が人々に恐れられる理由……それは、成人付近に起こる“みこ”が大きな原因だ。“みこ”が成人を迎えると、ある特異な変化が起こる」
「変化だって?」
「普通の人間には理解できないようなことだ。結果として“みこ”は異端視され、教団によって荒魔の化身として扱われるようになってしまった」
それだけ言うと、紗夜は口を閉じてしまう。
具体的にどんな変化が訪れるのか、俺に教えるつもりはないようだ。
それでも、わかったことがある。
“みこ”である灯里は、成人を迎えるにあたって何かしらの変化が起きるらしい。
そしてそれは彼女にとってとても大きなことであり、その変化こそがこの世界における“みこ”への迫害に繋がっているのだ。
そんな大事な話を、紗夜が俺に伝えた理由。
それは灯里たちを潮見城から離さない俺に対する、警告なのかもしれない。
俺は静かに、紗夜へ鑑定スキルを発動する。
彼女の能力が見かけによらず高いことを、俺は理解してしまった。
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みこの資質:影
近接戦闘力 A (→ S)
遠隔戦闘力 B (→ B)
俊敏力 A (→ S)
最大魔力 B (→ A)
学習能力 D (→ B)
成長力 C (→ A)
親密度 E
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