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いつでも大事なもの

 なんだかんだで、どの武器を持っていくかを決めるころには昼飯の準備を始めなければいけない時間になっていた。

 この感覚、何かに似ているなと思ったら、前の世界で休みの日にどの積みプラを崩そうか考えていたら昼飯になって、続きは午後か……ってなるのに似ている気がする。

 そんな前の世界でのことを思い出しつつ、前の世界のものとは全く似ていないメニューの昼飯の準備を開始した。


「さてさて。それじゃあ向こうを手伝うか」


 武器はどれを持っていくか決めたが、積み込みは後だ。


「食い物とか水を積んでから、空きがどれくらいあるかも考えたほうがいい。多分全部載るけど、念のためな」


 とヘレンに言われて、それはそうだと納得したからである。武器も重要であることは変わりないが、そもそも身体が動かなければ意味がない。

 であれば、食料と水を優先するのは当たり前、ということだな。


 そんなわけで、「何を持っていくか」の検討に俺とヘレンも加わることになった。


「もういくらかは決まってるんだろ?」


 俺が聞くと、サーミャが頷いた。


「食い物を3日ぶんと、水を1日ぶんは最低限積んでおこうってなった」

「水が少なくても済むってことは、前にお前が言ってたけど、結構水場はあるんだな」

「うん」


 サーミャが再び頷く。


「湖で他の動物を見たこと、ほとんどないだろ?」

「そう言えばそうだな」


 ほぼ毎日水を汲みに湖に行っているが、そこから見える範囲に他の動物を見た記憶がない。もしかすると見たことはあるかも知れないが、記憶に残らない程度なので回数はかなり少ないはずだ。


「それだけ水場があるってことだよ」

「なるほど」


 今度は俺が頷いた。リディが手を挙げて、サーミャが指をさす。


「涸れてることは?」

「涸れてることはまずないなぁ……」


 サーミャはおとがいに指を当てた。


「どこから水が来てるのかは知らないけど、大体どこも大きく水が減った跡は無かった……と思う」

「まぁ、これだけの森の木々を支えてますからね」


 うんうんと、納得したようにリディが首を縦に振って続けた。


「それに最悪、湖まで出れば確実に水はありますね」

「それはそうね」


 リディの言葉に、納得の声をあげるディアナ。


「次の日に使う分を毎日確保する感じかな?」

「そうなるな」


 リケが聞いて、再びサーミャが答えた。


「それじゃあ樽がこれくらいか……」

「そうだな」


 樽の数を話すサーミャとヘレン。そこにアンネが尋ねる。


「瓶じゃないの?」

「割れるとマズいからな。樽も壊れないわけじゃないけど」

「ああ」


 アンネの質問にはヘレンが答えた。うちの荷車がサスペンション付きの特別製だといっても、それなりに揺れるし、瓶で割れてしまうと水が失われた上に、それ以上確保できない場合も出てくるわけで、その事態だけは避けたい、というわけだ。


 こうして、水の確保についても決まった。あとは大事な……。


「食い物は何を持っていくかだな」


 ヘレンの言葉に、俺たちは全員でうんうんと大きく頷くのだった。

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