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食べもの

「日持ちするものはどれくらいあるんだっけ」

「ええと、さっき確認してきたのは……」


 俺が尋ねると、ディアナが虚空を見上げて指を振る。頭の中に棚の様子が思い浮かんでいるのだろう。


「鹿と猪の干し肉と塩漬け肉、あとは乾燥させた野菜と香草類だったわね」

「なるほど」


 普通に普段口にしているようなものだ。まぁ、そんなに変わったものが必要なわけじゃないからなぁ。

 木葉鳥は大抵獲った日に食べてしまうから、保存する肉としては残ることがほぼない。

 なので、獲れる量の多い鹿や猪の肉が保存に回されることになる。


「3日ぶんの食料ってことは、基本的には食料は常に現地調達だよな」

「うん」


 今度はサーミャが頷いた。


「だから、水も食料もいざという時用だな」


 今回の主目的は探索だが、なぜ探索するかといえば、退路を確認しておくためだ。なるべくそうならないようにはするが、万全な状態でここを出られるとは限らない。

 いや、そうなる状況を考えれば、むしろ万全でないことのほうが多いだろう。現地調達を中心として考えて、非常用もないものと考えておいた方が良さそうだ。


「現地調達が中心ということは、乾燥野菜を中心に積むことになるのかな。肉よりかさばらないし」


 俺が言うと、リディがコクコクと頷いた。彼女は肉も普通に食べるが、野菜の方が好みだからな。


「調達は肉が中心になるだろうしな」


 俺がそう続けると、今度はサーミャとヘレンがニッコリ笑った。彼女達は肉の方が好き派だ。

 勿論、食事で出たものは全て綺麗に平らげるので、あくまでどちらがより好きかというレベルの話だが。

 どちらも同じくらい派のディアナとリケ、アンネは少し困ったような顔でため息をついた。


「鹿と猪はどこにでもいるってことでいいのか?」

「いる。アタシが東のほうに来たのは大物を追ってだけど、それは元々北の方にいたやつだからな」

「じゃあ、見つからなくて困るってことはなさそうだな」

「2日あれば絶対に見つけるよ」


 俺がチラッとヘレンを見ると、小さく頷いた。腹は減るだろうが、水が確保できていれば2日くらいなら娘たちも含めてなんとか行動可能だろう。

 水場は豊富にある(位置は今回の探索で確認・記録していくが)し、着の身着のままで逃げることになっても大丈夫そうだな。


 干した野菜にビタミン類がどれほど残るものかはよく知らない――残念ながらインストールにもその辺りの知識は含まれていなかった――のだが、肉で補えなさそうなものが野菜には豊富に含まれている、と信じよう。


「よし、それじゃあ、干した野菜を沢山積んで、干し肉を少し。あとは現地調達にしていこうか」


 俺たちは皆で小さく頷くと、荷物を積み込むために倉庫へ向かうのだった。

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