「かったー!」
「おお、すごいすごい」
「キュイッ」
「クルルルルル」
薪拾い競争はマリベルの勝利に終わった。こまめに拾っては運んだのが功を奏したようで、木の枝がうずたかく積まれている。
ついで目の良さと素早さでハヤテ、運ぶ量の多さでクルルが多かった。
俺はというと最下位である。最下位ではあるが僅差だし、娘たちに花を持たせたと思えば全く悔しくはない。いや、本当に。
そんなわけで、今日一日分にしては多めに薪というか枝を集めることが出来たので、いくらかは荷車に積んでおいた。
これで明日は拾う薪の量も少なくて済む。肉も今日確保してくれる分で少しは持つから、その分移動することに時間を費やし、先へ進むことが出来るはずだ。
今回の旅程で一度は「1日にどれだけ進めるか」の確認をすることも必要だろうから、明日にそれをするのもありだろうな。
「よし、それじゃあ、これをリケに持って行ってくれるか」
「わかった!いこ!」
「クルルル」「キューゥ」
ウキウキと枝を運んでいくマリベルとクルル、そしてハヤテ。俺はそれを見ながら、余るであろう分を荷車に運んだ。
サーミャをはじめとする狩りに出ていた皆が戻ってきたのは、日が落ちてさほど経たないころだった。
仕留めてから血や内臓を抜いてといった作業が必要なことを考えるとかなり早い。
「おう、おかえり。早かったな」
「ただいま。ルーシーのお手柄だよ」
サーミャはそう言って、ルーシーのほうを見やった。
「ワン!」
ルーシーはエッヘンと胸をはって一声吠える。実際に逃げているときには吠えるのはマズいだろうか?
いや、ルーシーはそもそもこの森の狼だ、この〝黒の森〟に住む者であっても区別はつかないだろうから、気にする必要はないか。
「ここを出てそんなに経たないうちに見つけたし、その後追うのも上手だったわ」
どこかウットリとした感じでディアナが言った。
「私たちはほとんど何もしなくて済みましたねぇ」
ぽやんと音が聞こえてきそうなほどのんびりとリディが言う。
「私は解体もほとんどしなかったし、ここに運んでくるくらいね」
アンネがそう言うと、ヘレンが続けた。
「これだけの大物だからなぁ。大したもんだよ」
ヘレンの言葉で、ルーシーのエッヘン具合が増していく。ヘレンとアンネがそれぞれ脚を持っている鹿らしき獲物を見ると、確かになかなかの大きさだ。
「それじゃあ、明日は進むのを優先してみるか。予定はまた飯の時にでも話そう」
「わかった。じゃあ、これは分けてくるよ」
サーミャの言葉に狩りに出ていた皆は頷くと、肉を分ける作業に取りかかる。
「今日食う分が出来たら、すぐ焼いちゃうから持ってきてくれ」
「あいよ」
俺が声をかけると、サーミャが手をヒラヒラさせながら答えた。
さて、煮込んでるだけとはいえ、そろそろスープの仕上げもしていくか。俺は腕をまくると、こっちは比較的静かに火を見守っているリケとマリベルの所へ向かった。