「割り振り?」
「うん」
怪訝な顔をしたディアナに俺は頷いた。
「もう石は十分だから、他のことをしてもらおうかと思って」
金床代わりの石は7つもあれば十分対応可能だ。いや、さっき割れたから1つ減って6つだが、その割れたのも少しだけなら使えるし、それも合わせればもしかすると余裕すらあるかもしれない。
石をいくらか移動させたくらいで、大きく環境が崩れてしまうことはないだろうし、木を伐ったりしていて今更感はあるが、それでも余計なことはなるべくしないほうがよかろう。
怒られやしないとは思うけど、リュイサさんが怒ると怖そうだし。時々忘れそうになるけど、なんせ〝大地の竜〟の一部だからな、あの人。
「そんなわけだ」
「なるほど」
俺が説明すると、サーミャが頷く。……微妙に分かってないぽいが、とりあえず今から他の作業だということだけでも分かればいいや。
俺は皆を見回して言う。
「とりあえず、魔物の見張りは今ラティファさんに任せきりだから、そっちに何人か回ってほしい。いざというときに対応してもらうことになるだろうヘレンは確定として、もう数人はどうしようかな」
「サーミャとルーシーに頼んで良いか? サーミャとルーシーの鼻と、応援を呼ぶときの足の速さが欲しい」
ヘレンが答えた。俺が見ると、サーミャは頷き、ルーシーは「ワン」と一声吠えた。
「よし、それじゃ早速頼んだ」
「おう」
ヘレン、サーミャ、ルーシーが互いに頷きあって、少し離れた魔物がいるはずのところへ風のように去って行った。
「リケは俺の作業を手伝って貰うとして」
俺が言うと、リケがキラキラと目を輝かせる。
「ボクは?」
マリベルが小首を傾げている。確かに彼女に手伝って貰うのは良い手段なのだろう。なにせ純粋な魔法の炎が出せる。加熱するにせよ、加工するにせよ、アドバンテージが得られるのは確かだ。
だが、今回は彼女の手助けなしに、この状況でどれくらいやれるのかを確認しておきたい。言い方は悪いがこうやって試す機会はそうそうないだろうし。
「マリベルはディアナ、アンネ、クルルと一緒にご飯の準備頼むな」
今日この魔物退治が片付いたあと、それじゃあ行けるところまでとはしないつもりである。最速でも今日はここで休んで、明日の朝から移動を再開となる。
料理するにも火が必要だ。マリベルにはそっちで頑張って貰おう。
「頼んだわよ」
「まかせて!」
微笑みながら言ったディアナの言葉に、ドンと胸を叩いてマリベルが請け合う。
「なんだか〝いつも〟みたいになってきたなぁ」
やってることはほとんど普段やっていることと変わりない。普段は飯の準備を俺がやってるくらいか。
「エイゾウ工房の支店ってところかしら」
「そうだなぁ。まぁ、急拵えだけど、いざと言うときにもこうやってできるといいんだが」
笑いながら言うアンネに、俺がそう返すと、彼女は感慨深そうな目をして言った。
「そうね。それだととっても素敵ね」