「クルルル」
「ワンワン!」
「キューゥ」
「がんばってなー!」
クルル、ルーシー、ハヤテ、マリベル。うちの娘たちの声援と、手を振るサーミャとリケ、リディに見送られて、俺とディアナ、ヘレンにアンネの4人組は出立した。
出立したと言っても本当にすぐそこだが。
その間に簡単に最終確認を済ませる。先頭を歩くヘレンが俺たちを振り返りながら言った。
「ウネウネがどう動くか分からないけど、先陣はアタイが出る。逃したのをエイゾウ、更に逃がしたらディアナだ」
「私はその後ろからついていって、これを思い切りぶつければ良いのね」
斧を担いだアンネが言うと、ヘレンは頷いた。
「アンネはとにかく思い切り振って、刃をぶち当てることだけ考えりゃいい。あとはエイゾウの腕次第だけど」
そう言ってヘレンは俺のほうを見た。俺は肩をすくめる。
「品質は保証するよ」
急拵えの鍛冶場で、急拵えの斧ではあるが、手を抜いたつもりはない。完全に特注品クラスのものではないとしても、それに迫るものではあるはずだ。
つまり、刃の部分を当てれば木は伐れる。問題は……。
「ただ、尋常じゃなく硬くなっていた場合は、2回3回と切りつける必要があるだろうな」
俺が言うと、アンネもヘレンも頷いた。木として常識的な硬さであるなら1発目で伐れることを保証するが、なにせ魔物である。常識的な範囲を超えて硬い可能性もあるのだ。
「ま、そのときはそのときだ。アンネがそうできるようにアタイたちでなんとかする」
「そうね」
今度はディアナが頷いた。彼女に任せられたのは予備の予備ではあるが、逆に言えば俺とヘレンで追いつかないぶんが全てディアナに回っていくわけで、十分に実力が認められていなければ、ヘレンがメンツに加えないだろうことは彼女も分かっているだろう。
しかし、自分の働きが結果に直結するとなれば緊張するのも仕方ないところで、ディアナの拳は握りしめられ、いつも白い肌が僅かばかり白さを増している。
「俺たちなら〝いつも〟どおりになんとかいけるさ。今までだってそうだっただろ?」
なんの根拠もないが、俺はそう言った。わずか1年ではあるが積み重ねたものは確実にある。
「そうね、頑張る」
そう言って、むん! とファイティングポーズをとるディアナ。その様子に、俺たち全員から笑い声が漏れた。
「これは……」
辿り着いた俺たちは、少しばかり目を疑った。そこへパタパタとラティファさんが駆け寄ってくる。
「皆さ~~ん! あの! あの!」
何かを言いつのろうとするラティファさん。上手く言えないようだが、何を言いたいのかは分かる。
なにせ、実際に目の前で起きているのだから。
「たしか、ウネウネって2本じゃなかったか?」
俺が聞くと、ヘレンがゆっくりと頷いた。
「ああ、アタイがいたときは2本だった」
樹の魔物がウネウネと動かしているツタのようなもの。2本だったそれが、今は6本ばかりになって俺たちの目の前でうごめいているのだった。