アラシの脚から筒を外す。重くはないので品物を入れたわけではなさそうだ。
筒の先を外すと、中に丸まった紙が収められている。
それを取り出してから、筒の先を戻し、アラシの脚に括り付けてやる。
「キュッ」
アラシは短く一声鳴いて、すぐに飛んで行った。
「どれどれ」
カミロが情報をまとめて届けてくれる「新聞」であればいいのだが、いつもとアラシを寄越す時間が違うから、おそらくはそれではあるまい。
恐る恐る巻かれていた紙を広げていく。見たことがある字だが、内容はいつもとは大きく様相が変わっていた。
中断していた昼食を再開しつつ、俺は皆に手紙の内容を説明する。
平たく言えば、次の納品のとき、そのまま3~4日街に滞在しないか、とのことである。
なぜそうさせたいのかは、その時に説明してくれるらしい。
勿体をつけているのではなく、ややこしい事情のため、文書で説明するのは難しいし、万が一の時に漏れるのも困る内容だからだと、付記してあった。
で、街で過ごすとなると少し問題になってくるのは、生活に魔力が影響してくる家族たちだ。
クルルは食べる量が増えるだけだし、リディやルーシー、ハヤテもしばらくはどうということもないだろう。
問題は身体がほぼ魔力であるマリベルだ。街の魔力は少ない。しばらくは飯を食えないのと大差ない状況になってしまう。
クルルのように魔力を摂取できないぶん、食事で代替することができればいいのだが、炎の精霊であるマリベルは栄養摂取としての食事はほぼできないし、厳しそうならマリベルと誰かを帰さないとな。
「3~4日は魔力のない環境になるけど、大丈夫そうか? カミロの話の内容次第じゃ、他の誰かと一緒に帰ってこられるように頼むが」
「あんまり長いとだめだけど、3~4日くらいなら平気だよ」
「ん、そうか。たぶん3日で終わる話なんだとは思うがな……」
まだ話も聞いていない状態なので、どうにも判断がつかないが、カミロが3~4日と言っているのだし、それ以上かかることはなかろう。
スケジュールのバッファを見込んでなら、おおよそ3日で終わる内容だとカミロは踏んでいることになる。
そして、海千山千の商人の彼だ、滅多なことで外したりはすまい。
「よし、それじゃあ基本受ける。ただし内容次第、ってことで」
俺たちの負担が大き過ぎるとか、何か問題があれば別だが、そうでなければカミロの頼みだ、聞いてあげたほうがいいだろうな。
俺たちは昼飯をつつきながら、カミロの話がなんであるかの予想に花を咲かせるのだった。