「うちの製品について、その製法までカミロには特に説明してなかったが……」
カミロのところに納品しているものは、良いやつと普通のやつである、とだけカミロには説明していて、魔力が関わっていることについて、詳しくは説明していなかった。
互いに「知らなくてもいいことは教えない、聞かない」という暗黙の了解みたいなものもあったし、それが信頼の度合いでもあったのは確かだ。
「今回のこともあるし、詳細まではさておき、どういう状況なのかの説明はしておいたほうが良いだろうな」
俺が言うと、リケが頷いた。
「そうですね。何も言ってこない、ということは恐らく大きく問題にはなっていないとは思いますが、それはそれとして、ですからね」
「うん」
今度は俺が頷く。最近も納品に行ったが、問題になっていればカミロが俺に対応を依頼してくるはずである。
クレームは来ていても、カミロのところでもみ消している、という可能性もなくはないが、俺とカミロの間でそれはないだろう……多分。
それがない、ということは製品としての問題は無いか、あっても極わずかで抑えられているのだろうと推測は出来るが、この「魔力が抜けていく」という状態を教えなくていいかと言えば、そうではない。
製品を卸している立場上「魔力が抜けて性能が落ちる」ことの説明は必要だし、そうなれば製法について言及しないわけにはいかない。
「アレと一緒にその辺の説明も書いておくか」
今後どういう対応になるかは脇において、まずは説明が必要だろう。説明するには直接赴くのが筋かも知れないが、取り急ぎの説明はこれで許してもらう。
みんなからも特に反対意見は出なかったので、先に手紙を書いてしまうことにした。
エイゾウ工房の製品は魔力を篭めて製作されていること、その篭めた魔力は徐々に抜けていくこと、それによって性能の劣化があり得ることをまず書き、それを知ったのは最近であることと、知らなかったとは言え、瑕疵があるかも知れないものを納品していたことの謝罪も書いた。
その後で、普通のやつにはさほど魔力を篭めていないので、おそらくは影響が少ないこと、特注品は素材の都合で同じく影響が少なそうであることを添える。
そして、ちゃんとした謝罪はこちらで対策を考えてから直接出向いてすることも書き、最後に虫のいい話だが、可能ならリディの村にいた人に連絡を取って、宝剣が無事か確認して欲しい旨も追記する。
「よし、ひとまずはこれで連絡をする。もしカミロが怒ってきたら、そこは平謝りするしかないな」
俺がそう言って僅かに苦笑すると、皆の間にも小さく笑い声が響く。
「さて、それじゃあ、ハヤテに手紙を預けたら、対策を考えよう。今までのものは今までのものとして、これからの俺たちが作るもののために」
皆から返ってきたのは、決意の眼差しと、深い深い頷きだった。