目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

第109話 リッジとの決戦

 零夜たちとリッジの戦いは、雷鳴のような衝撃と共に火蓋を切った。遺跡の中で静寂な空気が流れる中、両者は一歩も譲らず、互いの闘志を剥き出しにして対峙していた。

 リッジは奴隷を奪われた復讐の業火を胸に宿し、零夜たちは外道な敵を討つべく、魂を刃に込めていた。


「相手は手強いかも知れないけど、私たちならやれる。たとえ誰が相手であろうとも、正々堂々戦えば勝てるから!」

「トワの言う通りね。私たちの絆は無限大だということを、叩き込んでやらないと!」


 トワの声が戦場を切り裂き、その瞳は不屈の決意で燃えている。更にエヴァの言葉が仲間たちの心に火をつけ、戦意を一層高めた。

 零夜たちは一斉に武器を構え、戦闘態勢を整える。零夜は双刀「紅蓮丸」と「吹雪丸」を閃かせ、倫子は巨大な「方天画戟」を振り上げ、日和は重厚な「ワイバーンガバメント」を握り、アイリンは「ウインドナックル」で風を切り裂く。エヴァは「グリーンウインド」の魔力を解き放ち、マツリは炎の刀「紅蓮王」とシールドを掲げる。エイリーンは水属性の「ロングアックス」を振り回し、トワは弓矢を鋭く引き絞り、ベルは「ロングアックス」を力強く構えた。


「貴様等……この俺を相手にするという事は、死ぬ事もあり得るんだぞ?」


 リッジの声は低く、闇の瘴気を帯びて戦場に響き渡る。しかし零夜たちは平然としていて、目の前の敵を倒す事に集中していた。


「死ぬのはお前の方だ。行くぞ!」


 零夜の号令が轟き、仲間たちは嵐のようにリッジへと突進した。

 その刹那、リッジの両手に漆黒のエネルギーが渦巻き、禍々しい「闇の波動弾」が凝縮される。闇属性の力は戦場を死の領域に変えるほどの威力を秘め、空間そのものを歪ませていた。


「こいつを喰らえ! ダークボム!」


 リッジの咆哮と共に、闇の波動弾が爆発的な勢いで放たれる。地面を抉り、土煙が舞い上がる中、衝撃波が戦場を蹂躙した。


「おっと!」

「ほっ!」


 零夜たちは鍛え抜かれた敏捷性で波動弾の嵐を回避。戦いの経験と苛烈な特訓が、彼らに超人的な反応速度を授けていた。この程度の攻撃は、もはや朝飯前だった。


「ここは私に任せて!あいつを倒すのは私の役目よ!」


 トワが叫び、弓矢を構えた瞬間、武器は眩い光芒を放ち、風属性の弓矢「ウインドアロー」へと変貌した。

 ウインドアローは風の精霊の力を宿し、放たれた矢は竜巻を巻き起こすほどの破壊力を誇る。さらにトワが握る「森の珠」がその威力を倍増させ、矢はまるで天災の使者の如くリッジを襲った。


「ウインドショット!」


 矢が放たれると同時に、戦場に爆音が響き、竜巻がリッジを飲み込もうとする。空気が裂け、地面が削れるほどの猛威だった。


「させるか! ダークシールド!」


 リッジは咄嗟に闇の盾を召喚し、竜巻の猛威を正面から受け止めた。盾は矢の衝撃を吸収し、爆風を四散させる鉄壁の守りだった。


「それなら連続ウインドショット!」


 トワは動じず、次々と矢を放つ。風の刃が連続でリッジを襲うが、ダークシールドはすべての攻撃を弾き返してしまう。だが、その瞬間、闇の影がリッジの背後で動いた。


「隙を見せたな! 残雪ざんせつ!」


 零夜が忍者の如き速さでリッジの背後に回り込み、「吹雪丸」を氷属性の「氷剣」に変貌させる。刀身が青白く輝き、凍てつく斬撃がリッジの背中に炸裂した。氷の刃は空気を凍らせ、衝撃波が周囲を震撼させた。


「がはっ!」


 リッジの巨体がよろめき、背中に深い凍傷が刻まれる。零夜の不意打ちは完璧で、ダークシールドは一瞬で霧散した。


「連続ウインドショット!」


 トワがすかさず追撃を放ち、風の矢がリッジの身体を次々と貫く。矢は風の咆哮と共に彼を切り裂き、戦場に鋭い風切り音が響き渡った。


「ぐあああああ!!」


 矢の連撃に耐えきれず、リッジは片膝をつき、荒々しく息を吐く。その姿は、嵐に打ちのめされた巨獣のようだった。


「どうかしら? ネムラスの皆の痛みはこんなもんじゃないわよ!」

「こ、この小娘が……!」


 トワの挑発的な言葉が、リッジの怒りをさらに煽る。彼は顔を歪めて憤怒の咆哮を上げるが、その目はまだ戦意を失っていなかった。


「攻撃はまだ終わりません! 私もいます!」


 エイリーンが叫び、戦場に躍り出る。彼女の「ロングアックス」は炎属性の「フレイムアックス」へと変化し、刃に灼熱の炎が渦巻く。炎はまるで生き物のようにうねり、戦場を赤く染め上げる。刃の熱は空気を焼き、地面を焦がすほどの威力だった。


「フレイムスラッシュ!」


 エイリーンが振り下ろした一撃は、炎の奔流となってリッジを直撃。戦場に爆炎が広がり、衝撃波が地面を砕いた。


「ぐほらっ!」


 リッジは爆炎に耐えきれず、仰向けに倒れ込む。炎の斬撃は彼の身体に深い焦痕を残し、立ち上がる力を奪った。もう一撃加えれば、零夜たちの勝利は確実だった。


「なんだ。全然弱いじゃないか。強い割には大した事ないみたいだぜ」

「けど、油断は禁物だからしっかりしないと!」


 マツリが倒れたリッジを見下ろし、余裕の笑みを浮かべる。アイリンが鋭く忠告したその瞬間、リッジが傷だらけの身体を無理やり起こし、戦闘態勢を取った。闇の瘴気が彼の周囲を包み、まるで地獄の使者のように立ち上がる。


「おのれ……ここで俺がやられるかよ……」


 リッジの目は憎悪に燃え、身体から滲み出る闇の力が戦場を圧迫した。


「まだ立ち上がるわね。ここは総攻撃を仕掛けた方が得策よ!」

「デス・ブラッドは不発させない様にしないと!」

「あの技を喰らったらやられるからね!」


 零夜たちは一斉に武器を構え、緊張感を高める。リッジの底力は未知数であり、簡単には倒せないと悟っていた。


「俺はデス・ブラッドだけじゃないぜ。他の技も持っているからな!」


 リッジがニヤリと笑い、両手からピンク色の煙を放出する。それは甘美で危険な香りを漂わせ、吸い込んだ者を異常な状態に陥れる「マジックスモーク」だった。煙は戦場を覆い、まるで生き物のようにうねりながら零夜たちを飲み込もうとする。


「マジックスモーク!」


 ピンクの煙が戦場を覆い、視界を奪う。厄介な技であるのは勿論、喰らってしまったら状態異常になるのは確定だ。


「くっ!」

「しまっ……ゲホッ! ゴホッ!」

「ゴホッ! ゴホッ!」


 零夜は防毒面を装着し、煙の侵入を防ぐ。だが、倫子たちは煙を吸い込んでしまい、激しく咳き込む。煙は肺を刺すような刺激を放ち、身体を蝕む。


「喰らってなかったのは俺一人だけか……となると、一騎打ち確定だな」


 零夜はリッジと向き合い、忍者刀を構える。双刀が遺跡のランプの光を反射し、鋭い輝きを放つ。


「そうなるな……さて、続きを始めようか」


 リッジもまた、闇の力を再び高め、零夜を睨みつける。両者の間に殺気が渦巻き、戦場は一触即発の空気に包まれた。

 だがその時、突如として風圧が煙を吹き飛ばし、倫子たちが姿を現した。


「私達がいる事を忘れないで!」


 倫子の声が戦場に響き、零夜は安堵の笑みを浮かべる。だが、次の瞬間、彼は絶句した。

 倫子たちの服装が一変していたのだ。倫子はオーバーオールにホワイトパーカーと帽子、日和はセーラー服、アイリンは体操服にジャージズボン、エヴァはメイド服、トワはバニーガール、マツリは短めの和服、エイリーンはナース服、ベルは保育士の服。まるで魔法にかかったかのような姿に、戦場の空気が一瞬凍りついた。


「うわああああああ!! 何で服が変化しているんだァァァァァ!!」


 零夜の叫びが戦場にこだまし、物陰で様子を見ていたヒカリたちも唖然とするしかなかった。

 だが、リッジは哄笑を上げ、闇の力を再び溜め始める。


「ハハハ! 驚いてる暇はねえぞ! 次はお前らの命をいただく!」  


 戦いはまだ終わらない。新たな危機が、零夜たちに迫っていた――。

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?