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第115話 ダークサイクロプスの恐怖

 零夜たちとダークサイクロプスとの戦いが火蓋を切った瞬間、大地が震え、戦場の空気が一気に張り詰めた。両軍は互いの力を測るように睨み合い、激しい衝突の予感が漂う。

 ダークサイクロプス側は数の優位を誇るが、戦力では零夜たちの精鋭が一歩リード。加えて、ヒカリたちがモンスターの大群を相手に奮戦しているため、零夜たちの背後は盤石だ。


「ダークサイクロプスは俺たち九人で叩く! 準備はいいか?」

「ええ! ここから先は本気で行くしかないわ!」


 零夜の号令に、ベルが鋭い目つきで頷き、グッドサインを返す。零夜もまた、闘志を燃やす彼女たちと共に、雷鳴のような勢いでダークサイクロプスの元へ突進した。


「僕らはヒカリたちの援護に向かうよ!」

「頼んだぞ!」


 アイアンゴーレム、ライラ、ユウユウはヒカリたちの戦線へ急行。戦闘経験の浅い彼女たちを支えるため、全力でモンスターの大群に立ち向かう。


「たとえ何人がかりで来ようと、この俺には敵わん!」


 ダークサイクロプスが哄笑し、巨体を揺らしながら零夜へ向けて拳を振り上げる。その一撃は空気を裂き、轟音と共に地面を抉るほどの威力だ。

 しかし、零夜は風のようにしなやかに跳躍。手に握る吹雪丸が一瞬で村雨へと変化し、紅蓮丸と共に双剣を構える。眼光は鋭く、まるで獲物を狩る猛獣のようだ。


「その気なら……秘技……水光斬すいこうざん!」


 零夜の叫びと共に、村雨から放たれた水と光の斬撃が、滝のような勢いでダークサイクロプスに襲い掛かる。

 鋭い刃が巨人の腕を切り裂き、鮮烈な閃光が戦場を照らす。だが、ダークサイクロプスは傷ついた腕を気にも留めず、平然と掻きながら嘲笑う。


「その程度か。つまらんな」

「チッ! そう簡単にはいかないか!」


 零夜は唇を噛み、指を鳴らして次の策を練る。一撃で倒すのは不可能と悟り、攻め続けるしかないと腹を括る。


「今度は俺の番だ! ダークナックル!」


 ダークサイクロプスが拳に闇を纏わせ、黒いオーラを爆発させながら零夜を殴り飛ばそうとする。その拳はまるで隕石のように重く、地面を砕きながら迫る。

 だが、零夜の忍者としてのスピードは神速。風を切り裂く動きで攻撃を回避し、敵の拳が空を切る。


「なんて奴だ! 俺の拳を躱すとは……!」

「忍者のスキルとこれまでの鍛錬の賜物だ。お前みたいな脳筋に負けられない!」


 驚愕するダークサイクロプスに、零夜は挑発的な笑みを浮かべる。その言葉にダークサイクロプスの額に青筋が浮かび、怒りが爆発する。


「良い度胸だ! なら両手で挟み潰してやる!」


 巨人が両手を広げ、まるで山を崩すような勢いで零夜を叩き潰そうとする。その巨大な掌が迫る光景は、まるで世界が閉じるかのようだ。


「そうはさせるか! はっ!」


 だが、零夜は冷静に跳躍。両手が激しくぶつかり合う衝撃で、ダークサイクロプス自身が痛みに悶える。掌から全身に響く痺れに、巨人の動きが一瞬止まる。


「ぐおっ……策にハメやがったな……!」

「お前の拳の威力、利用させてもらった。だが、攻撃するのは俺だけじゃない!」


 零夜が鋭く叫ぶと同時に、背後から倫子が疾風のように現れる。彼女は双剣をトンファーに変形させ、空中で回転しながら突進する。


「もらったわ! スパイラルクラッシュ!」


 倫子のトンファーが光属性のエネルギーを放ち、竜巻のような勢いでダークサイクロプスの背中に炸裂。衝撃波が戦場を揺らし、巨人の巨体が初めてよろめく。


「ナイス攻撃! 私たちも続くわよ!」

「零夜と倫子にいいとこ取らせないからね!」

「攻めるなら今! 総攻撃開始!」

「「「了解‼」」」


 アイリンたちも一斉に動き出し、ダークサイクロプスに連続攻撃を浴びせる。剣、魔法、技が交錯し、戦場は光と闇の乱舞に包まれる。このままなら勝利は目前だ。


「こっちは順調よ! アイアンゴーレムの活躍でモンスターはもう終わり!」

「おお! それを聞いて安心しました!」


 ヒカリの報告に、零夜の闘志はさらに燃え上がる。ダークサイクロプスを倒せば勝利は確定だ。ヒカリたちの戦線では、アイアンゴーレム、ライラ、ユウユウが圧倒的な力でモンスターを蹴散らし、戦場を掌握していた。


「よし! このまま押し切る! ソードスラッシュ!」


 椿が聖剣を振り抜き、モンスターを次々と切り裂く。聖なる力で強化された刃は、敵を一瞬で粉砕する。


「最後はウチが締めるっしょ! 喰らえ!」


 りんちゃむが如意棒を振り回し、インプに強烈な一撃を叩き込む。モンスターたちは金貨と素材に変わり、戦場に散乱する。


「モンスターが金貨と素材に……初めて見る光景だわ……」

「そうね。これでモンスターは全滅。残るはダークサイクロプスだけよ」


 りんちゃむが素材を拾いながら感嘆し、ヒカリが戦場を見渡す。モンスターの影は消え、残るは最後の敵のみだ。

「残るはお前だけだ、ダークサイクロプス! お前の罪を償ってもらう!」

「調子に乗るな、ガキども‼」


 ダークサイクロプスが咆哮し、巨体を跳躍させる。着地の瞬間、拳を地面に叩きつけ、闇の波動が大津波のように広がる。零夜たちはその予兆を感じ取り、即座に対応する。


「跳躍だと⁉ 奴は大技を仕掛けてくるぞ!」

「全員ジャンプで回避だ!」

「ヒカリたちはアタイらに掴まりな! 跳べないならそうするしかないぜ!」

「ええ! 頼りにさせてもらうわ!」


 零夜たちが一斉に跳び、ヒカリたちはマツリたちに掴まって空中へ。だが、ダークサイクロプスの攻撃は想像を絶する規模だった。


「ダークアラウンドウェーブ!」


 闇の波動が戦場を飲み込み、大波となって襲い掛かる。その高さは回避不能。零夜たちは波動に呑まれ、悲鳴と共に壁に叩きつけられる。


「「「うわ(きゃ)ああああああ‼」」」

「お前ら!」


 壁を抉りながら落下する零夜たち。トワを含む多くの仲間が戦闘不能に陥り、気絶する。アイアンゴーレムたちもスピリットに還り、パートナーのバングルへ戻る。動けるのは零夜、倫子、エヴァ、ヒカリ、りんちゃむ、ハユンの六人だけだ。


「モンスターが送還され、トワたちまでやられるなんて……このままじゃまずいかも……」

「あんな奴、どう倒せば良いのよ……」

「まだ死にたくない……」


 倫子が息を整え、ダークサイクロプスを睨む。巨人の圧倒的な力を思い知り、恐怖が心を侵食していた。

 ヒカリとりんちゃむも涙目で震え、絶望が忍び寄る。


「奴を甘く見た俺たちにも責任がある……だが、ここで終わるわけにはいかない!」


 零夜は傷だらけの身体を無理やり起こし、よろめきながら立つ。だが、先のダメージで動きは鈍り、体力は限界に近い。このままでは全滅は時間の問題だ。


(このままじゃ倒れるのも時間の問題……奇跡でも起こらない限りは無理だろう……)


 バリア内のヤツフサが、ボロボロの零夜を案ずる。戦いは終盤だが、今の一撃で形勢は逆転。零夜たちは最大のピンチに追い込まれたのだった。

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