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第118話 ネオンモールへの帰還

 零夜たちは無事に幕張ネオンモールへ転移し、元の場所に戻ったことを確認した。あとはギルドやテレビ局への報告を済ませれば、任務は完了となる。


「無事にお宝も回収したし、後はそれをどうするかだな」

「マスターが残してくれたお宝、大切に取っておかないとね」


 零夜とトワの言葉に、皆が頷いて同意する。

 エヴァが背負うお宝の袋には、価値ある品々が詰まっている。一度屋敷に戻り、皆で山分けする必要があるため、帰宅後も忙しくなりそうだ。


「まずはギルドに報告するか。任務も終わったし」


 零夜はメリアに報告するため、バングルを起動してウインドウを呼び出す。画面にメリアの姿が映し出され、皆の視線がウインドウに集まる。


『お疲れ様です! 無事に任務を達成されたようですね』

「はい。財宝の回収に成功し、リッジも撃破しました」

『そうですか。実はこちらでも、Cブロック基地が消滅したとの情報が入っています』

「えっ? ……消滅?」


 メリアの報告に、零夜たちは驚きの表情を浮かべる。Cブロック基地の突然の消滅は、誰も予想していなかった。

 メリアによると、零夜たちがリッジを倒したのと同時刻に発生したらしい。リッジの撃破が、基地の自動消滅を引き起こした可能性が高い。つまり、隊長が死ねば基地も崩壊・消滅するという法則なのだろう。


「まさか戦いの後にこんなことが……」

「でも、隊長のリッジを倒したんだ。一石二鳥ってやつだな!」


 エヴァが驚きを隠せない中、マツリが笑顔でそう言った。彼女の言う通り、隊長を倒せば基地も消滅する。基地に赴かずとも、隊長を仕留めれば目的は達成されるのだ。


『その通りです。よって今回の任務は成功。報奨金として三千万ハルヴをお渡しします!』

「三千万か。日本円でも同額だな」


 メリアが任務完了を告げると同時に、報奨金が転送される。零夜たちの足元に、百万の札束が三十個現れた。見た目だけでもかなり高額と感じてしまう。


「すごい! 百万の束が三十個も!」

「戦いに参加して良かった!」

「大金持ちになった気分!」


 ヒカリたちは札束を見て興奮し、目をキラキラさせる。この様な大金を目の前で見るのは初めてであり、参加した事をとても嬉しく感じている。

 この光景に日和たちは苦笑いし、零夜は呆然とするばかりだ。


「まあ、この金は俺たち十三人で山分けだな」

「後はお宝も分けないとね」


 零夜とエヴァの提案に皆が同意し、札束は倫子の胸ポケットへ。彼女のマジカルポケットなら、どんな物でも安全に収納できる。防盗対策としても最適だ。


『さらに……今回ご協力いただいた椿さんには、こちらを!』


 メリアが指を鳴らすと、椿の左手首に銀色のバングルが装着される。緑色の珠が特徴的なそのバングルに、皆の視線が集まる。


『これはモンスターバングルです。試しにフランケンを召喚してみてください』

「では、早速。フランケン、召喚!」


 椿が左腕を掲げると、バングルからスピリットが現れ、フランケンの姿に変化する。召喚は見事に成功したようだ。


「成功した!」

『おめでとうございます! これであなたもモンスター召喚士です。フランケンとの絆を大切にしてください!』

「はい!」

(良かったね、つばきん)


 椿は喜びの笑顔を見せ、日和も心の中で祝福しながら微笑む。アイドル仲間の成長は喜ばずにはいられないが、その分自身も頑張らないといけないと感じているだろう。


「俺、今日からパートナー。よろしく」

「あら、喋れるようになったのね。よろしくね、フランケン!」

「うん」


 フランケンは椿に一礼し、拳を軽く合わせる。二人はこれからパートナーとして絆を深めていき、新たな物語を切り開こうとしている。これからの活躍が楽しみで、誰もが期待しているのだ。


『ただ、刈谷さんの件は残念でした……悲しみは分かりますが、彼の分まで精一杯生きて、両方の世界を守ってください。それが皆さんの役目です』

「分かりました。では、良いお年を」

『はい! それでは』


 通信が終了し、ウインドウは煙とともに消える。フランケンもスピリットに戻り、椿のバングルへ収まった。


「さて、皆のところに戻ろう!」

「そうだね。心配してる人もいるし、早く合流しないと!」


 倫子の合図にヒカリたちが頷き、テレビ局の待つ場所へ向かう。これまでの出来事を包み隠さず報告するためだ。


 ※


 幕張ネオンモールの入口前では、逃走ロワイアルの撮影が終了し、撤収作業が始まっていた。賞金を獲得したのは、五輪ボクシング代表の村橋茂むらはししげるだ。


「あいつらが消えてから数時間……大丈夫かな……」


 芸人の玉木猿之助たまきさるのすけは、ヒカリたちの安否を心配していた。彼女たちが幕張ネオンモールで突然消えてから、行方が分からない。逃走ロワイアルでは失格扱いだが、皆が彼女たちを心配していた。

 その時、撮影班の一人がある方向を指さす。


「あっ! 帰ってきた!」

「何!?」


 全員が視線を向けると、零夜たちが走ってくる姿が見えた。ヒカリたちも一緒で、無事が確認される。


「おお! お前ら、無事だったか!」

「はい! 迷惑かけてすみませんでした!」

「気にするな。無事ならそれでいい」


 玉木は駆け寄り、ホッとした表情を見せる。ヒカリたちは一礼して謝罪し、他の逃走者たちも次々に集まって彼女たちの無事を喜ぶ。その様子だと深く心配していて、無事である事に喜んでいるのが何よりの証拠だ。


「やれやれ、一件落着だな……」

「うん。今回の逃走ロワイアル、オールスター揃いだったね……」


 零夜は苦笑いし、倫子たちも頷く。参加者にはオリンピック選手も複数おり、豪華な顔ぶれに驚くばかりだ。


「それにしても、八犬士まで来てたとはな。任務だったんだろ?」

「ええ。彼女たちを巻き込んでしまい、申し訳ありません!」


 零夜たちはテレビ局にも迷惑をかけたことを詫び、彼らに対して深々と頭を下げる。玉木は首を振ると、零夜に近づき、肩をポンと叩いた。


「大丈夫だ。お前たちは役目を果たし、ヒカリたちを守ってくれた。感謝してるよ。本当にお疲れ様」

「……ありがとうございます!」


 玉木の笑顔に、零夜は涙を浮かべながら笑顔で応える。その様子に倫子たちも安堵しながら、笑みを浮かべていた。迷惑をかけたにも関わらず、玉木に褒められた。それだけでも心から嬉しかったのは無理もなかった。

 すると、番組ディレクターがエヴァのお宝の袋に気づき、零夜たちに尋ねる。


「で、そのお宝はどうなってる? 詳しく聞きたいんだが」

「はい……って、待てよ? これってまさか!?」


 零夜が頷いた瞬間、気づいた表情に変わる。直後、マルテレビの記者たちが殺到し、質問攻めが始まった。こうなることは避けられず、質問に全て答えなければならない。


「やっぱりこうなるか……」

「まあ、仕方ないわね。ここは答えるしかないみたいだし」

「トホホ……」


 零夜は肩を落とし、倫子たちは苦笑いする。記者たちから解放されたのは15分後、時刻は午後11時15分だった。

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