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閑話3 新年トークショー

 零夜たちはマジテレビの広場に移動し、WDG48のトークショーが始まるのを待っていた。最前列に陣取った零夜たちは、日和たちの登場を心待ちにしている。


「いよいよ始まるみたいね。WDG48のトークショーが」

「ええ。日和ちゃんがアイドルユニットに所属していますし、私も彼女のアイドルとしての一面を見てみたいです」


 トワとエイリーンは目を輝かせ、胸を高鳴らせながらステージを見つめる。零夜たちも同じく期待に胸を膨らませ、会場に集まった全員がその瞬間を待ちわびていた。


「にしても、ファンがこれだけ多くいるなんて……」

「それだけ日和が人気だという事が良く分かったぜ。アイドルというのは凄いな……」


 エヴァとマツリが後ろを振り返ると、大勢のファンが熱狂的にトークショーを待っているのが見えた。アイドルやプロレスラーには熱心なファンがつきものだが、ルールを守らなければファン失格の烙印を押されてしまう。それだけは避けたいところだ。


「まあ、行儀よく守って行けばそれでいいけど……」


 アイリンが苦笑しながらファンたちに目をやったその瞬間、ステージに二人の男が現れた。トークショーが始まる合図に、会場全体の視線がステージに集中する。


「皆! 待たせたな! 今からマルテレビ新年記念の、トークショーの始まりだ! 司会はこの俺、岡本隆之助おかもとたかのすけや!」

「岡本さん、張り切り過ぎやって。同じく司会の矢坂博やさかひろしです。どうぞ宜しく」


 ベテランお笑いコンビ「ナインズ」の岡本と矢坂が登場すると、観客席から割れんばかりの拍手が沸き起こる。マルテレビの人気番組「ハチャメチャ野郎」を牽引する彼らは、名実ともに有名芸人だ。


「そして、今回のゲストは……WDG48の皆さんです! どうぞ!」


 矢坂の掛け声とともに、日和を筆頭にWDG48のメンバーがステージに登場。観客席からは大歓声が響き、日和は満面の笑みで手を振って応える。彼女たちの制服モチーフのアイドル衣装が、スポットライトに映えて一層輝いていた。


(凄い人気……これがアイドルか……)


 カルアは心の中で呟きながら、日和の姿をじっと見つめた。彼女の新たな一面を知れたことが、なんだか嬉しかった。


「お久しぶりです、WDG48の皆さん。今年の目標について教えてください」


 岡本が質問を投げると、リーダーの三浦博美みうらひろみがマイクを握る。WDG48をまとめるしっかり者で、チームWに所属する彼女は、5つのチームに分かれたグループのリーダーだ。一方、椿と日和はチームDに所属している。


「はい。最近ではWDG48に入るメンバーが増えていますし、世代交代も起ころうとしています。これからは若い皆にWDG48を背負う存在になってもらう為にも、精一杯頑張りたいと思います!」


 三浦の力強い言葉に、観客席から拍手と歓声が沸き上がる。WDG48の未来を応援せずにはいられない、そんな熱気が会場を包んでいた。


(流石はアイドルのリーダーだな。俺もブレイブエイトのリーダーとして見習わないとな)


 零夜は三浦の姿に感銘を受け、心の中でそう思った。ブレイブエイトのリーダーとしてより成長するため、身近な存在から学ぶことの大切さを改めて感じていた。


「さて、お次は昨日地下迷宮で活躍していた日和ちゃんと椿ちゃんに、その時の話をしてもらいましょう」


 矢坂が日和と椿を指名すると、観客席から再び拍手が沸く。二人は軽く一礼し、笑顔で応えた。


「はい。私はブレイブエイトの一員として、地下迷宮の任務に挑みました。道中悪鬼の妨害がありましたが、無事に任務をこなす事ができました!」


 日和の明るい報告に、ファンたちは盛大な拍手を送る。彼女の無事が何よりだが、悪鬼に立ち向かう姿に心を動かされた人も多かった。一部では最強戦乙女アイドルと称している人もいるが、本人としてはそんなに強くないと否定している。


「私は日和の姿を見て興味本位で参加しましたが、実際は激しい戦いを通じてその厳しさを学び通しました。今後はアイドルとしても継続しつつ、ブレイブエイトの役に立つよう精一杯頑張ります!」


 椿は真剣な眼差しで決意を語り、微笑みを添えた。観客は拍手だけでなく、彼女に声援まで送る。この場で宣言した以上、ファンを失望させないためにも全力で努力するしかない。


「私たちも同じだけどね」

「ええ。負けずに頑張らないと!」


 最前列のヒカリとりんちゃむは、笑顔を交わしながら決意を新たにする。彼女たちも椿と同じく地下迷宮での戦いに参加していたため、椿と同じく強くなることを目指していた。


「なるほど。凄い目標やな。それにブレイブエイトの皆もここに来ているし、ステージに上がってくれへんかな?」

「へ? 俺達が?」


 岡本が頷きながら最前列の零夜たちに目を向けると、会場が一気に沸き立つ。ブレイブエイトの登場は誰もが予想外で、観客は彼らに熱い視線と歓声を送り始めた。


「いきなりの展開となってしまったわね……」

「ええ……まさかまさかですね」

「参加しないと損かも知れないし、ここは皆で上がりましょう!」


 ベルとメイルは突然の展開に苦笑するが、倫子は勢いよく提案する。皆が笑顔で同意しつつ、そのままステージへと向かい始めた。


「じゃあ、俺もステージに上がらないとな」


 零夜も日和たちのいるステージへ歩を進め、ゆっくりと壇上に上がる。観客席からは歓声と拍手が鳴り響き、会場は一層の盛り上がりを見せた。


「凄い拍手……」

「私たち、こんなにも人気だったんだ……」

「私とカルアは加入したばかりですが」


 エヴァたちは予想以上の人気に驚き、心臓がドキドキと高鳴る。大勢の前で話すのは緊張するが、落ち着いて進めば大丈夫だ。


「では、東零夜君。昨日の戦いは見事だったが、一人の犠牲者を出してしまったのは残念だったようやな。今後の戦いは厳しくなるが、その覚悟は心の中にあるんか?」


 岡本の鋭い質問に、零夜は静かに頷き、マイクを手に取る。それに誰もが彼に視線を移していた。


「ええ。自身やチームにとっても残念な結果に終わってしまいました。しかし目標であるタマズサを倒す為にも、ここで止まる理由にはいきません!」


 一瞬俯いた零夜だが、すぐに顔を上げ、決意に満ちた表情で続ける。刈谷が最期に願った「生きてほしい」という思いを胸に、立ち止まるわけにはいかない。


「たとえそれが困難の道であっても、俺達は諦めずに突き進みます! 必ずタマズサを倒し、全員生きて帰る事を!」


 零夜の力強い宣言に、会場は大歓声に包まれる。その言葉に心を動かされ、誰もが彼らを応援せずにはいられなかった。


「皆の期待に応えないとね」

「ええ」


 零夜たちは観客の声援に笑顔で手を振り、固い決意を胸に応える。この約束を果たすため、全力を尽くす覚悟だった。

 トークショーはその後も大盛り上がりのまま進行し、無事に幕を閉じた。しかし、この後のイベントで予想外のハプニングが待ち受けていることを、零夜たちはまだ知らなかった。

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