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第170話 変わり果てたAブロック基地

 果し状を受け取ってから二日後、零夜たちはテンガロン村跡地へと向かっていた。今回のメンバーはブレイブエイト、サヤカ、国鱒、栗原、川本の十五人と一匹。人数も十分、これなら問題はないはずだ。


「テンガロン村は悪鬼によって滅ぼされた村なの。後楽園の悲劇が起こる前に起きた事件だけど、その時は全員手も足も出なかったわ……」


 トワは鋭い眼差しで、テンガロン村の惨状を淡々と語る。その言葉に、仲間たちは驚きと怒りを抑えきれなかった。悪鬼の非道な行いに、胸の奥で燃えるような憤りが広がっていく。


「今までは奴らの好き勝手だったけど、私たちがいる限り、絶対に終わらせてやるわ!」

「アイリンの言う通りだ。この戦いに身を投じた以上、俺はもう覚悟を決めている!」


 アイリンの決意に、サヤカが同意しながら力強く頷く。その瞬間、エヴァが突然足を止め、鋭い視線を前方に投げた。彼女の鋭敏な嗅覚と聴覚が、迫りくる敵の気配を捉えたのだ。瞬時に戦闘態勢へと切り替わる。


「敵よ! 前方にモンスターの群れが来るわ!」

「モンスター襲来か! 全員、戦闘態勢を整えろ!」


 エヴァの警告に、ヤツフサが即座に指示を飛ばす。零夜たちはそれぞれの武器を握りしめ、戦闘の準備を整えた。空気が一瞬で張り詰め、緊張感が仲間たちを包み込む。

 前方から、轟音と共にモンスターの大群が姿を現した。その数はおよそ千。フレイムボール、フレイムヒューマン、トレント、オーガ、コカトリス、ドラゴンヒューマン、スライム、ウルフ……多種多様な怪物たちが、唸り声を上げながら襲い掛かってくる。


「モンスターはフレイムボール、フレイムヒューマン、トレント、オーガ、ニワトリモンスターのコカトリス、ドラゴンヒューマン、スライム、ウルフよ」

「変態スライムはいないみたいだな。よし、全員突撃開始!」


 零夜の号令と共に、仲間たちは一斉に駆け出した。地響きを立てながら、モンスターの群れへと突進する。国鱒たちは零夜たちの実力を測るため、ヤツフサと共に一歩下がり、戦場を見守った。


「まずはウチに任せて! マジカルウェーブ!」


 倫子が叫び、両手にピンクのオーラを纏わせる。次の瞬間、彼女の手から放たれた強烈な波状光線が、轟音と共にモンスターの群れを切り裂く。フレイムボール、ウルフ、コカトリス、トレントが光線に飲み込まれ、悲鳴を上げながらスピリットへと変わり、倫子のバングルに吸い込まれていく。


「藍原さんの能力、モンスターを仲間にできるなんて、驚異的だな」

「彼女が仲間にしているのはスライムとかだけど、アンデッド系は避けてるみたいだ」

「アンデッド系を捕まえて黒田さんを驚かせたら面白いのにな……」

「それはやり過ぎだ!」


 倫子の華麗な戦いぶりに、国鱒は感嘆の声を漏らす。ヤツフサは倫子のモンスターについて補足しつつ、彼女が虫や怖いものが苦手で、アンデッド系や虫系を嫌う理由を説明する。ただし、スパイダーたちは説得の末に仲間入りした例外だ。川本が残念そうに呟くと、栗原が即座にツッコミを入れる。アンデッド系でイタズラなんてしたら、黒田の倍返しが待っているのは目に見えている。


「次! ウルフとフレイムボールを召喚して……融合!」


 倫子がバングルを掲げ、スピリットを解放。フレイムボールとウルフが現れ、融合の光が戦場を照らす。次の瞬間、炎をまとった巨大な狼――フレイムガルムが咆哮を上げて出現! その姿はまるで燃え盛る獣神のようだ。


「フレイムガルム! 炎の狼で、ウルフのパワーアップ版よ!」

「よし、フレイムガルム、攻撃開始!」


 トワの説明に倫子が頷き、フレイムガルムに指示を出す。巨大な炎の狼は地を蹴り、雷のような速さでモンスターの群れに突っ込んだ。強烈なタックルが炸裂し、オーガやトレントが次々と吹き飛ばされ、戦場に炎の軌跡が残る。


「私も負けてられない! フレイムスラッシュ!」


 エイリーンが炎のロングアックス「フレイムアックス」を振り上げ、灼熱の斬撃を放つ。炎の刃がモンスターを切り裂き、トレントの群れを一掃。彼女は回転斬撃で周囲の敵をなぎ倒し、ドジっ子な一面を忘れさせる無敵の戦士と化していた。


「私も行くわ! ヨーヨースラッシュ!」

「マジックボール!」

「ブラストキャノン!」

「「ダブルキャットクロー!」」

「毒刃!」

「アックスブレイク!」


 カルアのヨーヨーが敵を絡め取り、メイルのジャグリングボールが爆発を巻き起こす。日和のワイバーンガバメントから放たれる銃弾がモンスターを貫き、アイリンとサヤカの猫爪攻撃が敵を切り刻む。マツリの毒刃が紫の軌跡を描き、ベルの斧が雷鳴のような一撃で敵を粉砕。戦場は一瞬にして阿鼻叫喚の地獄と化した。

 モンスターの数はみるみる減っていくが、別方向から新たな増援が現れ、戦いは終わらない。


「ここは私に任せて! 連続アローショット!」


 トワがエルフアローを構え、矢継ぎ早に弓矢を放つ。矢は風を切り、増援のモンスターを次々と貫く。だが、敵の数は依然として多く、油断は許されない。


「なら私が! アイスウォール!」


 エヴァが叫び、両手を地面に叩きつけると、巨大な氷の壁が立ち上がる。増援の進軍を阻み、戦場を分断。そこへ零夜が疾風のように駆け出し、新たな武器「獄卒・血骨鬼ごくそつ・ちこつおに」を握りしめた。その刀身は禍々しい赤黒い輝きを放ち、まるで血と骨そのものが宿っているかのようだ。


「ダメ押しだ! ブラッド・マスカレイド!」


 零夜が刀を振り下ろすと、血の斬撃が戦場を切り裂く。モンスターたちは一瞬で金貨と素材に変わり、地面に散らばった。増援は完全に沈黙し、残るは目の前の敵のみ。


「よし、俺も行くぞ! 出でよ、ドリームバトル号!」


 国鱒が指を鳴らすと、高性能バイク「ドリームバトル号」が轟音と共に召喚される。彼は即座にバイクに跨り、モンスターの群れへと突進。

 実は国鱒率いるDBWのメンバーも、今年の一月から異世界の戦いに参戦していた。零夜たちに負担をかけまいと、自ら戦場に立つことを決意し、今やBランクの実力を持つ猛者だ。


「国鱒社長!」

「喰らえ! ドリームアタック!」


 バイクが唸りを上げ、オーガの群れをなぎ倒す。轟音と共にモンスターが吹き飛び、戦場に衝撃波が広がる。そこへ栗原と川本も駆けつけ、猛攻を仕掛けた。


「こいつを喰らえ!」


 栗原の張り手が雷鳴のように炸裂。トレントが吹き飛び、フレイムヒューマンに激突して共に消滅。戦場に木々の破片が舞い散る。


「連続手刀!」


 川本の手刀が閃き、ドラゴンヒューマンの首筋を次々と切り裂く。敵は悲鳴を上げ、ドラゴンの角と金貨に変わり地面に崩れ落ちた。これで敵は全滅。零夜たちは見事に勝利を収めた。


「助かりました、ありがとうございます!」

「大したことじゃない。モンスターは片付けた以上、Aブロック基地へ急ぐぞ! こんなところで足止めしてる暇はない!」

「はい! モンスターも召喚しておきます!」


 零夜の一礼に国鱒が頷き、仲間たちに急ぐよう促す。倫子が真剣な表情でバングルを掲げ、ウイングユニコーン、ウイングバイコーン、ペガサス、ドラゴン、ワイバーンを次々と召喚。零夜たちはその背に飛び乗り、Aブロック基地へと進軍を再開した。立ち止まる暇はない。目の前の敵を倒すことに、全神経を集中させる。


 ※


「着いたぞ、Aブロック基地だ!」


 零夜たちはAブロック基地前に到着し、ペガサスやドラゴンから降り立つ。だが、前方を見上げた瞬間、誰もが息を呑んだ。


「う、嘘でしょ?」

「な、なんで……遊園地なの!?」


 そう、Aブロック基地は何故か巨大な遊園地と化していた。色とりどりのライトがきらめき、観覧車がゆっくりと回るその光景に、誰もが呆然とするしかなかった……。

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