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第171話 強敵の予感

 Aブロック基地が一変し、遊園地の姿に変わり果てた光景に、零夜たち一行は誰もが呆然と立ち尽くした。なぜ基地が遊園地に変貌する必要があったのか、その理由が気にかかる一方、この異常事態に戦意を失ってしまうのも無理のないことだった。


「なんで遊園地になったの?」  

「私に言われても……」  


 エヴァの困惑した質問に、トワは唖然とした表情でそう答えるしかなかった。誰もが同じ疑問を抱き、戦う気力を保つのが難しくなるのも時間の問題だった。


「一体何が目的なのか気になるけど、危険な罠である事に間違いないわ。ともかく用心して進まないと」  


 アイリンは真剣な表情で推測すると、その瞬間、彼女たちの目の前に巨大なモニターが現れた。画面にはベティとメディが映し出され、邪悪な笑みを浮かべている。


『よく来たわね、八犬士たち』  

「ベティ、メディ……!」  


 ベティとメディの姿を見たアイリンは、真剣な眼差しで二人を睨みつけた。それを見たサヤカは彼女の肩に手を置き、真剣な表情で前を見据える。


「サヤカ……」  

「ここで噴火したら敵の思い通りだ。ここは怒りを鎮めて、話を聞くのみだ」  

「え、ええ……別にアンタにお礼など言う必要無いから」  


 サヤカの冷静なアドバイスに、アイリンは頷きつつも、顔をそむけてツンデレな態度を見せる。その証拠に彼女の顔は真っ赤で、素直になれない性格が丸見えだった。


「素直じゃないみたいだな」  

「本当ですね。このままツンデレだという事を自覚すれば良いんじゃないかな?」  


 国鱒たちがジト目でその光景を眺めると、川本がアイリンをからかい始めた。すると、彼女の顔はますます赤くなり、まるで茹でダコのようになってしまう。


「何見てんのよ!」  

「あっ、顔真っ赤」  

「うるさいうるさいうるさーい!」  


 アイリンは顔を真っ赤にしながら怒鳴り、川本のからかいに過剰に反応。その声はさらに彼女を辱める結果となり、思わず大きな叫び声を上げてしまった。


『話進めていいかしら?』  

「あっ、ごめん……」  


 ベティの苛立った声がモニターから響くと、アイリンはバツの悪そうな表情で謝罪した。今はこんなやり取りをしている場合ではない。敵の話を聞く必要があった。


『では、話を続けるわ。私たちのいる「ランドコロシアム」という中央の建物に入るには、各アトラクションにいる敵を倒す必要があるわ。その数は六人よ』  

「つまり六人を倒さなければ、ベティとメディとの戦いには進めないのか……」  


 ベティの説明を聞いたヤツフサは、真剣な表情で状況を整理した。ボス戦の前にその部下を倒すのは定石だが、Aブロック基地の猛者たちはそう簡単に倒せる相手ではない。中には想像を絶する強敵も潜んでいる可能性があり、慎重な行動が求められた。


『しかも、その内の一人はかなりの強敵。下手したら全滅する恐れもありますので』  


 メディが邪悪な笑みを浮かべながら付け加えると、倫子たちは背筋が凍る思いだった。冷や汗が頬を伝い、心臓がバクバクと高鳴る。こんな強敵がこの基地に潜んでいるとは予想外で、恐怖が心を蝕み始めていた。  

 しかし、零夜、マツリ、国鱒、栗原、サヤカ、メイルの六人は動じることなく、真剣な眼差しで前を見据えていた。覚悟を決めた表情には、どんな敵にも立ち向かう決意が宿っている。


「俺たちは誰が相手でも構わない。その部下は誰なのか見せて欲しいからな」  


 零夜は毅然とした態度でベティとメディに宣言した。彼はマツリと同じく、未知の敵との戦いを好む性格だ。ただし、マツリと異なるのはその冷静さ。敵をよく観察し、戦略的に立ち回る制止力を持っているのだ。


『それなら画像だけでもお見せしましょう。こちらです!』  


 メディが指を鳴らすと、モニターに強敵の姿が映し出された。それは赤い狐の獣人で、暴走族ズボンと晒布を身にまとった姿だった。


『彼女はアカネ。狐獣人の元暴走族ヘッドです。かつては「爆走妖狐」のリーダーとして活動しましたが、私たちの手で壊滅させました。それ以降私たちの奴隷としていますが、契約はしていませんので』  


 メディの説明を聞いた零夜は納得の表情で頷いた。内心では、早くも戦いたいという衝動に駆られている。特に相手がモンスター娘とあれば、仲間にするチャンスを逃すわけにはいかない。その様子を見た倫子とエヴァは危機感を覚え、真剣な表情でどうするべきか考えていた。戦いに向かうのは良いが、零夜の「仲間にする」癖がまた出てしまう恐れがあるからだ。


「なるほどな。なら、この件については俺が行く。強敵である以上はガチで戦うし、彼女については興味あるからな!」  


 零夜が腕を鳴らしながら一歩前に出ようとしたその瞬間、マツリが素早く彼の隣に並んだ。彼女はバトルジャンキーそのもの。この状況で黙っていられるはずがない。


「待ちな、零夜。ここはアタイが行くぜ。元暴走族と聞いた以上、タイマン張らせて貰わないとな!」  


 マツリは両拳をぶつけながら、強気な笑みを浮かべて戦闘態勢に入る。相手が元暴走族と聞けば、彼女の血は騒がずにはいられない。どんな困難が待ち受けていようと、戦わずにはいられない衝動が心を支配していた。


「相変わらずあの二人は勝負好きですね……強い敵と戦う気持ちは分かりますが……」  

「うん……それよりも……」  


 エイリーンはこの状況に唖然としていて、日和も小さく頷いて同意する。だが、日和が横を見ると、倫子とエヴァが頬を膨らませ、嫉妬の表情を浮かべていた。恐らく恋の嫉妬なのだろうが、そこまで感情を露わにする必要があるのかと疑問に思う。


「あの二人、相変わらずとしか言えないわね……」  

「ええ……これから先が不安です……」  

「あらあら。今後がどうなるかね」  


 トワたちはこの光景にただ唖然とするしかなく、ベルとメイルは苦笑いを浮かべながら見守る。零夜の恋愛模様が今後どうなるのか、誰もが不安と期待を胸に抱かずにはいられなかった。


『ちょっと! 早くメンバーを決めなさい! 待ちくたびれるのは嫌なのよ!」』

「「「おわっ!」」」


 ベティの叫び声がモニター越しに響き渡り、全員が驚いて顔を上げる。今はふざけている場合ではない。話は最後までスムーズに進めなければならないのだ。


「じゃあ、アカネに関しては俺が向かう。言い出しっぺは俺だからな」

『分かりました。では、話の続きに入るとしましょう』


 アカネとの対戦相手は零夜に決まったが、マツリは頬を膨らませて横を向いていた。せっかくのチャンスだと思っていたのに、選ばれなかったことに納得できないのも無理はない。

 メディは確認を終えると、基地のルールの続きについて話し始めた。零夜たちは真剣な表情で頷き、熱心に彼女の言葉に耳を傾けていた。

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