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第172話 遊園地への突入

『ルールの続きだけど、アカネたちはどのアトラクションにいるかは教えてあげないわ。倒したければ、自分で探すしかないからね』


 モニターに映るベティの声が、冷たく鋭く響き渡る。零夜たちは一言も聞き漏らすまいと、鋭い眼差しでその言葉に耳を傾けていた。敵の居場所が明かされない以上、勝利の鍵はトワの鷹の目と千里眼、エヴァの鋭敏な嗅覚と音感、そしてアイリンの索敵能力にかかっている。  

 ちなみに、サヤカも優れた索敵能力を持つため、チームの頼もしい戦力となるだろう。


『索敵能力などを使っても大丈夫です。しかし、あなたたちが上手く見つけても、勝つのは私たちだという事を忘れないでくださいね。では、せいぜいご健闘を』


 メディが唇の端を吊り上げ、邪悪な笑みを浮かべる。その挑発的な言葉が響いた瞬間、モニターのウインドウが突然切断され、画面が暗転。消滅した空間に残されたのは零夜たちだけとなった。静寂が一瞬、場を支配していて、誰もが黙り込んでいるのだ。


「くそっ! 奴らはどれだけ人をからかえば気が済むんだ!」


 マツリが怒りを爆発させ、拳を壁に叩きつける。ドンッ! という衝撃音が響き、ベティとメディに馬鹿にされた屈辱が彼女の闘志を燃え滾らせていた。零夜たちもまた、怒りを胸に滾らせ、敵を叩きのめす決意を固めている。


「無駄口はここまでだ! 先に急ぐぞ!」


 ヤツフサの力強い号令に、全員が一斉に頷く。遊園地の奥へ突き進もうとしたその瞬間、目の前に悪鬼の戦闘員たちが現れた。鋭い殺気を放ち、武器を構える敵たち。どうやらここで零夜たちを仕留めるつもりらしい。


「どうやら俺たちを倒そうとしているみたいだが……相手が悪かったとしか思えないのも無理はないな」  

「こっちは選ばれなくてイライラしているからな。派手にぶっ飛ばしてやるよ!」


 零夜が冷たく鋭い眼光で敵を見据え、状況を冷静に分析する。一方、マツリは腕を鳴らし、抑えきれない闘志を爆発させる。アカネとの戦いがお預けになったストレスが、彼女の戦意を極限まで高めていた。


「邪魔だテメェら!」  

「ぐはっ!」  

「うげっ!」  

「あがっ!」


 マツリは三種の神器をすでに装着済み。草薙剣を手に、疾風の如く戦闘員に突進する。剣閃が空を切り裂き、敵を次々と薙ぎ倒す。彼女にとって戦闘員など障害にすらならず、瞬く間に金貨と化して地面に散らばった。剣の軌跡が光を放ち、戦場に彼女の怒りが轟く。


「余程ストレスが溜まったのですね……では、私も助太刀を!」


 メイルが苦笑いを浮かべながら、胸ポケットから小さな風船を取り出す。口で空気を吹き込むと、風船はみるみる膨らみ、巨大な雪男の姿へと変形。戦場に異様な存在感を放つその姿に、敵も味方も一瞬息を呑む。


「風船がゴリラになった!?」  

「どうなっているんだ!?」

「こんな技は見た事ないぞ!」

「一体どういう事だ!?」


 国鱒社長、栗原、川本、サヤカが目を丸くして驚愕する中、零夜は苦笑しながら説明を始めた。


「実は彼女、元サーカス所属なのです。鳩も出しますし、ジャグリングもできて、大道魔術も繰り出しますので」  

「なるほど。これは相談なんだけど……メイルちゃんに風船を膨らまして、黒田さんの近くで割ってくれないか?」  

「いや、そんな事したらボコられるのがオチですよ!」


 川本の突飛な提案に、零夜が即座にツッコミを入れる。倫子たちはその軽快なやりとりに苦笑いした。

 黒田は恐ろしい戦士だが、風船とお化けが苦手という意外な弱点を持つ。そんなイタズラを仕掛ければ、倍返しの報復が待っているのは確実だ。


「私も参ります! はっ!」


 カルアがヨーヨーを手に戦闘員に飛びかかる。ヨーヨーをループ・ザ・ループのように高速回転させ、敵を次々と撃破。華麗な動きで戦場を支配し、連続攻撃が戦闘員を薙ぎ倒す。その姿はまるで戦場の舞姫のようだ。  

 ※注:ヨーヨーはこのような使い方をしないでください。普通に楽しむことをお勧めします。


「私たちも後に続きましょう!」  

「ボーっとしている暇はないからね!」


 トワとベルの号令に、全員が武器を構えて戦闘員に突撃。トワが手を叩くと、グリス率いるカーバンクル軍団が現れる。彼女は彼らを使った総攻撃を仕掛けるつもりだ。


「あの戦闘員たちをやっつけて!」  

「はいな!」


 トワの指示でグリスたちが動き出す。カーバンクルの素早い動きに戦闘員たちは翻弄され、鋭い攻撃を受けて次々と消滅。地面には金貨が散乱し、エイリーンが素早く回収していく。その動きはまるで戦場の清掃員のようだ。


「俺たちも行くぞ!」  

「「「おう!」」」


 国鱒社長たちが参戦し、プロレスラーの豪快な攻撃で戦闘員をコテンパンに打ちのめす。巨漢たちの猛攻に、敵は為す術もなく次々と倒れていく。残る敵は最後の一人。零夜が立ち上がる。


「これで終わらせてやる! 最後の一撃!」


 零夜の手刀が雷鳴のように炸裂し、戦闘員は倒れて消滅。敵は全滅し、零夜たちは勝利を収めた。戦場の熱気が冷めやらぬ中、仲間たちは互いに視線を交わす。


「何とか倒したけど、今回の戦いはそう簡単にはいかないみたいね」  

「ええ。ベティやメディだけでなく、他の敵もいますからね。何れにしても油断なりません……」


 倫子と日和の言葉に、零夜たちは真剣な表情で頷く。戦闘員はただの序章に過ぎない。Aブロック基地の戦士たちは手強く、命を落とす危険すらある。ここから先は一瞬の油断も許されない。


「確かにそうですね。刺客が六人いるとなると、ここは手分けして探す必要があると思います」  

「人数も多いし、ここは四人グループに分かれて行動しましょう。丁度四グループできるし」


 エイリーンとトワの提案に全員が同意し、四チームに分かれて行動を開始する。その組み合わせは以下の通りだ。


Aチーム:零夜、国鱒、川本、栗原  

Bチーム:倫子、日和、メイル、ヤツフサ  

Cチーム:アイリン、サヤカ、エヴァ、マツリ  

Dチーム:ベル、トワ、エイリーン、カルア


「この組み合わせなら大丈夫そうね。けど……」


 ベルはチーム分けに納得しつつ、倫子たちに視線を移す。倫子とエヴァはジト目で零夜を睨む。彼がアカネを仲間にしようと企んでいるのは明らかで、絶対に阻止するつもりだった。彼女たちの視線には、静かな闘志が宿っている。


「気持ちは分かるかも知れないが、ともかくチーム分けも決まった。すぐに行動開始だ!」

「「「おう!」」」


 国鱒社長の号令とともに、零夜たちは遊園地へと突入。四チームに分かれ、それぞれの敵を探しに動き出した。Aブロック基地での戦いは、ここから本格的に幕を開けようとしていく。遊園地の闇に潜む敵を前に、彼らの戦いはまだ始まったばかりだ。

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